素直になっていいの?

詩織

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葉山君との出合い

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葉山君との出会は、私が30歳の時。

まだ奈緒子と同じ会社だった。高卒で就職し、親戚の家を出て1人暮らしをしてた。

会社は吉井物産といい、私が高卒で入社したときは、大手というほどではなかったが、14年いる間にメキメキと大きくなり、大手の仲間入りに等しくなってしまった。

私はそこで、営業事務を担当していて、結婚退職なりして辞める女子社員がいる中、完璧な乗り遅れ兼お局になってしまった。

恋愛はしばらくしてない。お見合いも親戚から話はきてるが、いまいち乗り気にもならない。

奈緒子は同棲してる恋人はいるけど、お互い結婚願望が薄く今の環境で満足してるらしい。奈緒子がいなければ、話す同僚も少なく1人になっていた。

ある日、打ち合わせの資料が間に合わず、いつもより2時間くらい早く出勤した。

なんで私だけ?と言いたいが、そこを言葉にせずパソコンに向かって必死に入力。

必死にやったお陰で、間に合いそうとホッとし、珈琲でも買いにいくかと自動販売機に向かった。その時。

「あれ?」

階段を見ると、上が明るい。

この上は、屋上になっていてドアが閉まってないのか、上から明るい光が入ってきてた。

ドアの締め忘れ?と思い、階段を登って屋上に行った。ドアが少し空いていて、もしかして誰か居るのかな?と思い、なんとなくだけどゆっくり開けてチラチラと屋上を見たとき

一人の男性が泣いていた。

ただ立って涙を流して、ぼーとしてる感じだった。そして私がドアの所にいることに気づき、こっちをじーと見る。

たったそれだけのことなのに、心を奪われてしまった。

それが葉山君だった。

その後、自分では記憶がないのだが、彼に付き合って欲しいと言ってしまったようだ。

ほんと無意識にだと思う。


葉山君は、いいよ!と言って連絡先(と言ってもLINEだが)を交換して

「じゃ、またね!」

それでその場は別れた。

そのあとから知ったことは名前は葉山拓真。年齢はまさかの6歳も年下の24歳。企画部所属でイケメン!そしてモデル並みの受付嬢と付き合ってるらしい。

て、わたしに「いいよ!」って言ったのにあれはなんだ?気まぐれ?とりあえず泣いてる所見られたから口止めの何かとか?

連絡先は交換したけど、使うことも来ることもないだろと思ってた。一目惚れと言えども歳も若いし恋人もいるしな。

だが、そんな考えとは裏腹に

《一人暮らしなら今から遊びに行っていい?》

定時を30分すぎて、帰ろうとしたときにLINEがきた。

私は断るとこが出来ず、なぜか受け入れてしまった。

最寄り駅で待ちあわせ、自宅に入ったと同時に、抱きしめられそのまま抱かれてしまった。

心ここにあらず、そんな感じだった。しばらく私を抱きしめ、何も話さず日付が変わる少し前に帰って行った。

それから、週に1回くらいの割合でそんな関係が始まった。

特に出掛けるわけでもなく、お互い何が好きかも知らない。名前も呼ばれない。

「愛人か何かなのか?わたし」

彼の帰ったあとに、ポロリと言ってしまった。




そんな関係が2ヶ月くらい続いた頃

「お腹空いた」

ボソッと葉山君が言い出した。

そういえば、家にきて抱かれるだけでそれ以外は抱きしめあって、それで帰って行く。

ご飯なんか一緒に食べたこともなかった。

「簡単なのでよければ作ろうか?嫌いなのとかある?」

という、問いかけに

「トマト」

ぶっと、笑ってしまった。

「笑う所?質問に答えただけなのに」

「そうだね。ごめん。じゃほんと簡単だけど、チャーハンでもいい?」

「うん」

冷蔵庫を開けて、いくつかの材料を出して、短時間で作った

「美味しくなかったらごめんね」

と言って、テーブルの上にチャーハンを置く

「頂きます」

と言って、一口

「うまい」

美味しそうに食べてくれて、それが幸せに感じた。


それからというもの、家にきてはご飯を食べるようになり、少しずつではあるけど話すようになった。と言っても仕事の話とかでなく、最近の映画の話とか気になったテレビの話など、自分の話はほとんどしない。

そして、愛情がどんどん出てくると、恋人いるのに本当にいいのだろうか?私には本気にならないよな?など、そんな悩みが増えていった。



「あのー」

振り向くと、そこには受付嬢の田上さん。葉山君の恋人と噂されてる人だ。

葉山君と関係になって半年。私は31歳になっていた。

「お話したいことがあるんですけど」

会社を出てすぐに止められ、ここじゃなんだからと言って、近くの喫茶店に行った。

「戸川さんはなんの目的で拓真と?」

そりゃ、そうなるわな。私もズルズルとしちゃっのが悪い。しっかり言わんかったしな

「失礼ですけど、年齢も上ですし、玉の輿とかそういう目的なんですか?」

え?なに?玉の輿?

「えっと、玉の輿というのは?」

「とぼけないでくださいよ!社長の息子って知ってて近づいたんですよね?」

え?誰が?…葉山君が?

「私の父は田上制作所の社長で、いずれは結婚てことで私はこの会社に入りました」

それって裏口?いやいやそんなことより…

「本当に葉山君が社長の息子さんなんですか?だって、名字も違うし」

「葉山っていうのはお義母さまの旧姓です。て、本当に知らなかったんですか?」

田上さんがビックリして私を見ている。

あまりにも、衝撃すぎて言葉が出なかった。

「とりあえず、もう関係を切ってください!いい歳して浮気相手になってるとか恥ずかしいでしょ?」

そういって、田上さんは店を出ていった。


どっから整理したらいいんだろ?てか、そもそもこんな関係了承した私が悪い。

でも、たわいもない会話が私にとっては癒やしでそれを切ることができるのだろうか?

いや、やらないとダメだ!解ってはいるが…


なんか最近無性に疲れが出て食欲がなかった。今の衝撃事実で、余計に食欲なくなりそう。

なんて現実逃避な考えをしていたが…

なんとなく、喫茶店のカレンダーを見て、あれ?今日は?今日って何日だっけ?と…

!?

あれ?来てない!来てない!!!

嘘でしょ?来てない…



その週末に妊娠してることが解り、奈緒子に初めて葉山君の関係もすべてうちあけた。

「どーするのよ?」

睨み付けるように見て言う奈緒子、

頭がまとまらない。どーしよう?

「葉山に言うんでしょ?勿論」

葉山君に…、言ったらどうなる?

言えない。葉山君には言えないよ。





私が出した結論は…

「葉山君、もうここにこないでほしいの」

何も言わず私を見る葉山君。

「婚約者がいるのにこんな関係続けてごめんね」

何も言わない。

「わかった。別に貴方だけでないから」

そう言って葉山君で出ていってしまった。

あとから噂で聞いた話だが、葉山君は複数の人と付き合ってると聞き、自分が特別ではなかったんだなーと、ほんとバカだったなと思うしかなかった。

その後長年勤めてた会社を退職し、ネットでみたゆっくり住みたい街ベスト10にのってたこの街を見つけ、そこで1人で出産し、親戚も誰も頼ることなく現在に至ってる
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