巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1F-氾濫と供給

1F-13 氾濫と懸案

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 二人は精神力を使い果たし、休憩小屋へ戻っていった。残された土を使い、皿とマグカップを作る。釉薬で簡単な絵付けも施し、本焼きまで済ませる。わずか一時間の工程。後で二人に渡せば、良い記念品になるだろう。

 煙突の煙は細くなり、炉内を覗くと骨だけが残っていた。冷却に一日もすれば温度も下がるはずだ。作業員から声をかけられる。
「今日はもう終わりでいいぞ。あとは嬢たちに掘らせる」
「まだ日も高いですが……」
「焼却は済んだ。後始末はこちらの仕事だ」

 ならば、と防壁に登り魔の森を見学する。監視の兵士たちが数人。声をかけてきたのは、拉致の折に世話になった兵士だった。
「少年、傷は大丈夫か?」
「その節はお世話になりました」
「俺はレオンだ。今日は森の監視だ」

 隣の兵士はロックと名乗った。二人は自分の素性を知っていた。
「ポーションと磁器の騒動もお前とパラケル師だな」
「保存期間を伸ばした程度ですよ」
「いや、三つのギルドの結束を強めたと市井では噂されている」

 話題を変え、氾濫の行方を尋ねる。
「もうすぐ終わるだろう。オークキングが大物だった。ギルド長の戦いを見たが、さすがランクSだ」
「エリス様は城郭都市の守護神ですね」

 それからは兵士たちと雑談を交えつつ森を監視した。視力を強化し、はぐれの魔物を追う。討ち漏らしがあれば土魔法で狙撃し、討伐の助けとなる。兵士たちは感心と関心を入り混ぜた眼差しでこちらを見ていた。


 ♢♢

 同じ夜、館には領主一族と重鎮たちが集まっていた。議題は「該当者」の存在について。
「確かに、あの日を境に大人びた雰囲気を纏った」
「私の【鑑定】に間違いはない。魔力量も操作技術も異常だ。紐付けは必要」
「部下の報告では、魔力操作はすでにランクA相当。煙突を即座に作り、討伐も支援した」
「ギルド職員と比べても明確だ。むしろ教える側に回れるほどだ」
 彼らは口々に報告を重ねる。

「村で接触した人間は極端に少ない。漏れはない」
「討伐ではラピスバレットを行使していたと兵士が報告している」
「本人は商人か魔術師になりたいと言っていたな」

 さらに話題は荷馬車の改良へ。
「球軸受と制振器を組み合わせた装置を作っていた。摩擦がまったくない」
「乗ってみたが、振動もほとんどなかった」
「運搬の障壁は消えた。だが放置すれば王都に噂が届く。早急な対策が必要だ」

 最終的に、二人の鑑定結果が一致した。
「該当者で間違いない」
「危険な思考や行動は見られない。開発もポーションと磁器に留まっている。まずは少数で本人と接触しよう」

 ウィザーリングの扱いも議題に上がる。
「明日は都市から離しておこう。王都に取られてはならん」
「王都に渡せば痛手だ。必ずこちら側に付けねば」

 結論は出た。翌日、エリスとクリスティーヌが本人と相対し、領主は後から出る。王都に奪われぬよう、慎重に事を進めることで一致した。
 魔物の氾濫は収束に向かう。だがもう一つの懸案――「界上の賜物」を巡る思惑は、静かに動き始めていた。

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