拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。

羽村 美海

文字の大きさ
45 / 111

#44 王子様の嫉妬!? ⑶

しおりを挟む

 けれどそれなら、あんな紛らわしい言い方しなければよかったじゃないか! 
   
  馬鹿にされたままでは気が収まりそうもなかった私は、羞恥も忘れて反撃を試みた。

「だったら、あんな紛らわしい言い方しないでくださいッ! 色恋に不慣れなんですから、勘違いするのも当然ですッ!」

 すると桜小路さんは、あっさりとのたまった。

「お前には俺のことを好きにさせると言っただろう? だから、俺がお前の従兄に嫉妬したと思わせて、お前の反応を確かめただけだ」
「そんなの酷いッ!」
「別に酷くないだろう? 恋愛には駆け引きも必要だ。これから一月の間、そういうことも含めて、たっぷりと教え込んでやる。お前は余計なことを考えず、俺のことを好きになることだけに集中していればいい」

 桜小路さんのあんまりな物言いに悔しくて悔しくて。

「だから、あなたのことなんて好きにならないって言ってるじゃないですかッ!」

 憎たらしいイケメンフェイスを睨み上げながら言い返してみるも。

「でも、俺にキスされるのは嫌じゃなかったんだろう? それに、俺が嫉妬したと思い込んで、まんざらでもなさそうだったじゃないか。少なからず、嫌悪感はないはずだ。お前こそ、俺のことを好きになり始めてるんじゃないのか?」

 悔しいくらいに整った王子様然としたイケメンフェイスに、勝ち誇ったような笑顔を湛えて、図星をつきつつ、自意識過剰発言をお見舞いされてしまい。

 余計悔しい思いをさせられることとなった。

――だからって、別に、桜小路さんのことを好きになりかけている訳じゃない。

 恋愛ごとに不慣れでキスなんかしたことなかったから、そういうことに慣れていて、キスだって上手に違いない桜小路さんのキスに、ただただ酔いしれてしまってただけなのだ。

「あなたのことなんか好きになりかけてもないし、これからだって絶対に好きになりませんッ!」

  後から後から悔しさがこみ上げてきて、とうとう爆発してしまっていたのだけれど。

 組み敷いた私の鼻先すれすれの眼前まで迫ってきた桜小路さんに、首筋をツーッと指先でなぞりながら、

「そんなにムキになって否定しても、身体は嘘を付けないものだ。そのことも、これからたっぷりと教えてやる」

やけに色っぽい声音で宣言されてしまい。

 触れられている首筋から、あたかも弱い電流でも流されているかのようにゾクゾクと身体が粟だっていく。

 と同時に、私の無防備な唇は、桜小路さんの柔らかな唇によって優しく啄まれてしまっていて。

――桜小路さんの言いなりになんてなるもんか!

 そう思うのに、どういう訳か身体は制御不能で、桜小路さんのことを拒むことができない。

 優しく啄むだけだったソフトなキスはやがて深いものになっていて、息をつくような余裕も思考も全てが奪い去られてしまっていた。

 そうして気づいた時には、いつものように桜小路さんの広い胸に抱き寄せられていたのだった。

 桜小路さんにお見舞いされたキスが、あんまり深くて濃厚なモノだったお陰で、まだぼんやりとしてて心ここにあらず。

 あたかも身体は雲の上にでも浮かんでいるような、ふわふわとしていて、夢見心地だ。

 この前から一体どういうことだろう?

 桜小路さんにキスされるのが嫌などころか、もっともっとキスしてて欲しいって思ってしまう。

 それに、どうして桜小路さんの腕の中はこんなにも居心地がいいんだろう?

 どうしてこんなにも安心できるんだろう?

――ずっとずっとこうしてて欲しいなぁ。

 なんて、どうしてそんなことを思ってしまってるんだろう?

 ぼんやりとした意識の中で、解けない謎が次々に浮かび上がってくる。

 そんな私のことを大事そうに抱き寄せてくれている桜小路さんは、私の頭を優しく何度も撫でてくれている。

 それがまた心地よすぎるものだから、一向に動けないでいる。

――さっき言われたように、桜小路さんのことを好きになりかけてるってこと? あーもー、よく分かんない!

 解けない謎に挑もうにも、今まで誰かを好きになったことさえ経験のない私には難解すぎて。

 呆気なく投げ出した私は、ブンブンと頭を揺すってしまうのだった。

 それをまたまた小バカにしたように、

「フンッ、どうした? 俺とのキスがあんまり心地よかったものだから、やめてほしくなかったのか?」

軽く笑った桜小路さんに図星をつけれて。

「////……ち、違いますッ!」

 あたかもリトマス紙のように顔を真っ赤に染めて、なんとも説得力に欠けることしか言えない私は、顔を隠すようにして桜小路さんの胸にピッタリと張り付くことしかできないのだった。

 そんな分かりやすすぎる私の反応に、桜小路さんは、

「フンッ、図星か。まぁ、仕方がないか。お前には、まだ俺のことを好きになりかけている自覚がないようだからなぁ」

やけに嬉しそうな声音で独り言ちるようにそう言ってきた後で、私のことを自分の胸から引き剥がすと。

 そうはさせまいとワイシャツを掴んで胸にしがみついている私の顔をグイと片手で上向かせてしまった桜小路さん。

 真っ赤になって縮こまろうと足掻く私の眼前にイケメンフェイスで尚も迫ってくるなり。

 何か嫌なことでも思い出しているのか、さっきのライオンを彷彿とさせる不機嫌極まりないという表情を忌々しげに歪めつつ、

「それはさておき、今後一切、俺の前で俺以外の男の名前を出すのは許さない。俺以外の男の名前を聞くのは不愉快極まりない。偽装だとは言え、お前は俺と結婚するんだ。結婚したら、キス以上のことは勿論、子供だって産んでもらわなきゃならないんだから、当然だ」

同様に怒気を孕んでいるような低い声音で耳を疑うようなことを言ってのけた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

処理中です...