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二日目②
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午前の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
あれから結局、小休憩になる度にミカイルが僕の元へ来るものだから、ハインツと話すことは一度も出来なかった。
ハインツも僕達の邪魔はできないのだろう。
僕は聞きたい気持ちがもどかしくてミカイルには来ないで欲しいと言ったが、嫌だの一点張りで僕の言うことは聞き入れてくれない。心配してくれているのは分かるが、彼が来ると余計に注目も浴びるので、出来ることならそっとしておいてほしかった。
お昼こそは、と思いご飯に誘おうと声をかける。
しかし彼にも当然他の友達はいるので、その人と一緒で良ければと言われてしまった。そうなると話もしづらいだろうから、泣く泣く僕は断るしかない。
そうしている間にもミカイルはやってきて、最終的には二人で食堂へ向かうこととなった。
食堂へ向かう途中、またもや僕は周囲の視線が突き刺さるのを感じる。
朝の登校の時に向けられたものと同じだ。気にしないようにはしていたが、あまりにも見られているようだからそうも言っていられない。
ミカイルは気にならないのかと思いそっと顔を盗み見るも、依然として気付いてないのか、ただ僕に微笑んでいるだけだった。
「うわ、人が多いな……」
久しぶりの食堂は、多くの生徒でごった返していた。いくら広い食堂と言えど、これでは席を確保するのも大変そうだ。
ミカイルからはぐれないよう体をくっつけて歩いていると、何故か目の前の道がどんどんと開けていく。
何が起こっているんだと思い周囲の生徒を見れば、彼らは皆一様にミカイルを見つめていた。どうやら、彼のために自然と端へ寄っているらしい。
僕はここにきて初めて、今まで感じていた視線の意味を理解した。
彼らの目は全て、ミカイルに向かっていたのだ。
少し気味が悪いほどの光景だが、納得はできる。
まるで天使と見紛うばかりの美貌に、すらっと長い手足、さらにはキラキラと光輝く彼のブロンドの髪は、見る者を釘付けにするには十分だった。
僕は幼い頃から見ているためにもう慣れてしまっていたが、彼は本来このような羨望の眼差しを受けるのに値する人物で、僕の手では到底届かない存在なのであった。
もしかすると、クラスで向けられたあの悪意のこもった視線は、僕が彼にふさわしくないと判断されたからではないか。そう、ふと思った。
現に、ミカイルが僕を幼馴染みだと紹介した瞬間に皆の目つきが変わったのを思い出す。
高貴なミカイルに冴えない僕が幼馴染みと言うだけで、彼に微笑まれ隣に立てるのだから、それに目くじらを立てて睨んでしまうのも頷ける話だ。
しかし、もし本当にそれが理由なのであれば、果たして悪いのは僕なんだろうか。僕がジークのような見目の良い人物であったなら、彼らは歓迎してくれたのか。
やっぱり、一度ハインツに話を聞いてみなければならない。そうすれば、これからの僕の立ち振舞いについて考えることができる────
ミカイルは空いている席を指差して教えてくれた。
もしかしたら彼のために空けられた席なのかもしれないが、僕もそこで食べることにして注文をした。
ミカイルが眉を下げて苦笑する。
「ここ、人が多いでしょ?だから僕はあんまり来たくなかったんだ」
「たしかにそうだな。でも、僕も流石に昼食まで作るのは無理だぞ」
「うん、そうだよね……」
以前にもお昼までは作れないと断ったのだが、まだ諦めきれていなかったらしい。
ミカイルはがっかりした様子で呟くと、切り替えるように瞬きをして話題を変えた。
「そういえば、ハインツと仲良くなったんだね」
「ああ。席が近いのもあって、いろいろと気にかけてくれるんだ。学級委員長だからというのもあるかもしれないな」
「へえ……」
「何だよその目は。友達は作ってもいいっていう話だっただろ」
「…そうだけど、あんまり仲良くしすぎないでね。僕が一番じゃないと困るから」
微笑んでいるはずなのに、瞳が笑っていないせいで責められているような気がする。寒くもないのにぞくりと背筋に冷たいものが走る。
温かいスープを頼んでおいて良かった。
別にこのために注文したわけではなかったが、結果的には僕の体を暖めてくれることになりそうで、数秒前の自分に感謝した。
そんな話をしていると、注文した料理が運ばれてくる。僕達は一度喋るのを止め、食事に集中することにした。
やっぱり食堂のご飯は舌を打つほど美味しく、僕もうっかり上達した気になっていたがそんなものはまだまだだった。
ミカイルがお昼だけでも許してくれて良かった。
そうでなければ、僕は勘違いしたまま自分の料理に胡座をかいてしまうところであった。
教室へ戻ると昼休憩が終わるギリギリの時間になっていた。ミカイルがまたね、と言って自分の席へ戻る。
僕も席につくと、ジークが前の扉から教室へ入ってくるのが見えた。
そういえば、今日はジークが一度も近づいてくることはなかった。昨日はあんなに怒っていたから小言の一つや二つは覚悟していたのに。
でもまあ、関わってこないならその方がいい。彼はプライドが高そうだから、強情な僕とはきっと相性が悪いことだろう。
あれから結局、小休憩になる度にミカイルが僕の元へ来るものだから、ハインツと話すことは一度も出来なかった。
ハインツも僕達の邪魔はできないのだろう。
僕は聞きたい気持ちがもどかしくてミカイルには来ないで欲しいと言ったが、嫌だの一点張りで僕の言うことは聞き入れてくれない。心配してくれているのは分かるが、彼が来ると余計に注目も浴びるので、出来ることならそっとしておいてほしかった。
お昼こそは、と思いご飯に誘おうと声をかける。
しかし彼にも当然他の友達はいるので、その人と一緒で良ければと言われてしまった。そうなると話もしづらいだろうから、泣く泣く僕は断るしかない。
そうしている間にもミカイルはやってきて、最終的には二人で食堂へ向かうこととなった。
食堂へ向かう途中、またもや僕は周囲の視線が突き刺さるのを感じる。
朝の登校の時に向けられたものと同じだ。気にしないようにはしていたが、あまりにも見られているようだからそうも言っていられない。
ミカイルは気にならないのかと思いそっと顔を盗み見るも、依然として気付いてないのか、ただ僕に微笑んでいるだけだった。
「うわ、人が多いな……」
久しぶりの食堂は、多くの生徒でごった返していた。いくら広い食堂と言えど、これでは席を確保するのも大変そうだ。
ミカイルからはぐれないよう体をくっつけて歩いていると、何故か目の前の道がどんどんと開けていく。
何が起こっているんだと思い周囲の生徒を見れば、彼らは皆一様にミカイルを見つめていた。どうやら、彼のために自然と端へ寄っているらしい。
僕はここにきて初めて、今まで感じていた視線の意味を理解した。
彼らの目は全て、ミカイルに向かっていたのだ。
少し気味が悪いほどの光景だが、納得はできる。
まるで天使と見紛うばかりの美貌に、すらっと長い手足、さらにはキラキラと光輝く彼のブロンドの髪は、見る者を釘付けにするには十分だった。
僕は幼い頃から見ているためにもう慣れてしまっていたが、彼は本来このような羨望の眼差しを受けるのに値する人物で、僕の手では到底届かない存在なのであった。
もしかすると、クラスで向けられたあの悪意のこもった視線は、僕が彼にふさわしくないと判断されたからではないか。そう、ふと思った。
現に、ミカイルが僕を幼馴染みだと紹介した瞬間に皆の目つきが変わったのを思い出す。
高貴なミカイルに冴えない僕が幼馴染みと言うだけで、彼に微笑まれ隣に立てるのだから、それに目くじらを立てて睨んでしまうのも頷ける話だ。
しかし、もし本当にそれが理由なのであれば、果たして悪いのは僕なんだろうか。僕がジークのような見目の良い人物であったなら、彼らは歓迎してくれたのか。
やっぱり、一度ハインツに話を聞いてみなければならない。そうすれば、これからの僕の立ち振舞いについて考えることができる────
ミカイルは空いている席を指差して教えてくれた。
もしかしたら彼のために空けられた席なのかもしれないが、僕もそこで食べることにして注文をした。
ミカイルが眉を下げて苦笑する。
「ここ、人が多いでしょ?だから僕はあんまり来たくなかったんだ」
「たしかにそうだな。でも、僕も流石に昼食まで作るのは無理だぞ」
「うん、そうだよね……」
以前にもお昼までは作れないと断ったのだが、まだ諦めきれていなかったらしい。
ミカイルはがっかりした様子で呟くと、切り替えるように瞬きをして話題を変えた。
「そういえば、ハインツと仲良くなったんだね」
「ああ。席が近いのもあって、いろいろと気にかけてくれるんだ。学級委員長だからというのもあるかもしれないな」
「へえ……」
「何だよその目は。友達は作ってもいいっていう話だっただろ」
「…そうだけど、あんまり仲良くしすぎないでね。僕が一番じゃないと困るから」
微笑んでいるはずなのに、瞳が笑っていないせいで責められているような気がする。寒くもないのにぞくりと背筋に冷たいものが走る。
温かいスープを頼んでおいて良かった。
別にこのために注文したわけではなかったが、結果的には僕の体を暖めてくれることになりそうで、数秒前の自分に感謝した。
そんな話をしていると、注文した料理が運ばれてくる。僕達は一度喋るのを止め、食事に集中することにした。
やっぱり食堂のご飯は舌を打つほど美味しく、僕もうっかり上達した気になっていたがそんなものはまだまだだった。
ミカイルがお昼だけでも許してくれて良かった。
そうでなければ、僕は勘違いしたまま自分の料理に胡座をかいてしまうところであった。
教室へ戻ると昼休憩が終わるギリギリの時間になっていた。ミカイルがまたね、と言って自分の席へ戻る。
僕も席につくと、ジークが前の扉から教室へ入ってくるのが見えた。
そういえば、今日はジークが一度も近づいてくることはなかった。昨日はあんなに怒っていたから小言の一つや二つは覚悟していたのに。
でもまあ、関わってこないならその方がいい。彼はプライドが高そうだから、強情な僕とはきっと相性が悪いことだろう。
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