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久しぶりの再会
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「まあ、そんなことがありました」
「なんですって? そんなことが……! しばらく会わない間に色々あったのね……」
夜、食堂で久方ぶりに義母イザベラと再会し、離れていた間の出来事を語ると彼女は目を見開き驚嘆の表情を浮かべた。
そんな顔を見るのも久しぶりで、セシリアは思わず顔を綻ばせる。
「ふふ、でもお義母様のお顔を見たら嫌な気持ちも吹き飛んじゃいました」
「……ッ!! 急にそんなことを言うんじゃないわよ……」
耳まで真っ赤になった可愛らしいイザベラを見て、セシリアはついニヤニヤしてしまった。
「ちょっと! ニヤニヤしないで!」
「あら、ごめんあそばせ。お義母様が可愛らしくて、つい……」
「また貴女はそんなことを言って……!」
二人が笑い合っている最中、テーブルに運ばれてきたのは鴨胸肉のロースト。皮は薄くパリッと焼かれ、ナイフを入れると中からほんのり赤みを帯びた肉汁がゆっくりと滲み出した。添えられているのは、赤ワインと果実のソース。深い果実味とほのかな酸味が、鴨の濃厚な旨味を引き立てている。
「ん、この鴨肉……とても美味しいわ。外はこんがり、中は驚くほどなめらか……絶妙な火入れね」
「気に入っていただけてよかった。お義母様の好物とお聞きしましたので、メイン料理として出すように料理長にお願いしましたの」
「まあ、わたくしの為にわざわざ……」
再び頬を赤らめ、小さく「ありがとう」と呟くイザベラの愛らしさは息をのむほどだった。
その表情に魅せられたかのようにセシリアはつい自然と思っていたことを口に出してしまう。
「お義母様、貴女はまだお若い。それにとてもお綺麗です。……再婚、考えたりはされないんですか?」
その言葉にイザベラははっとした表情で顔を上げた。その目には驚きが浮かんでいる。
それでも、セシリアは止まることなく話を続けた。
「お義母様が先代様を深く愛していらっしゃったことは知っております。ですが貴女はまだお若い。子だって十分望めるでしょう」
「……そんなこと、貴女が気にすることではないわ」
「ええ、余計なお節介であることは重々承知しております。ですが……お義母様が心配なのです。私がこの邸と出て、エリオット様まで出ることになれば、ここに残る貴女が新しい当主の元で嫌な思いをしないかと……」
「え? ちょっと、まって、今、”新しい当主”って……。それにエリオットが邸を出るとはどういうこと……?」
セシリアはイザベラに公爵がエリオットを当主の地位を剥奪する可能性があることを話した。
始めは驚いていたイザベラだが、そうなる経緯を話すと納得したように頷くのだった。
「ああ、そうよね……。考えてみれば当たり前だわ。結婚式初日から夫の責務も忘れて貴女を放置し、災害時には当主の責務まで放棄したような無責任な男だもの。むしろすぐにでも当主の立場から下ろされてもおかしくないわ。現に、今この邸は当主が不在でも問題なく回っているのだもの。それはつまりこの家にエリオットが不必要だということだわ」
イザベラが思いのほか辛辣なことを言うのを聞き、セシリアは少なからず驚かされた。
優しい彼女にここまで思わせるほどエリオットの行動は酷いものだったのだな、と改めて思う。
「ええ、そうなった場合、新たな当主は親類の誰かとなるでしょう。私はお義母様が肩身の狭い思いをするなんて嫌なのです……」
「セシリア……」
「いきなり再婚という無粋な話をして申し訳ありません。ただ、貴女ほどの美しさを持つ方が、未亡人のままで一人きりでいるなんて……あまりにも惜しい。貴女がこのまま独り身でいるなんて、まるで花が咲いても誰にも見られない庭のよう。勿体のうございますわ」
「まあ……お上手ね。貴女がわたくしを心配してくれているのはとても嬉しくてよ。でもね……わたくし、夫と過ごした日々が今生で一番の宝物なの」
「それを否定するつもりは毛頭ございません。ただ……」
「分かっているわ。ええ、貴女がわたくしの生活を心配してくれているのはちゃんと分かっていてよ」
セシリアがなぜ、こうまでして再婚を勧めるのか。イザベラにはその理由がもう分かっていた。
この邸を出て行くとしても、次に住むための家と当面の生活費が必要だ。実家を頼れないイザベラのような貴族の女性が生きていくためには結婚が最も手っ取り早い。セシリアが自分のこれからを思って再婚を勧めてくれていると、イザベラはその気持ちをちゃんと理解していた。
「再婚はしないわ。生活に必要な資金は旦那様が遺してくださったお金があるから大丈夫よ」
ここを出て行っても、街でアパルトマンを借りるなり、小さな家を買うなりする金は十分にある。
必要なら仕事を探して慎ましく生きていこうとイザベラは考えていた。
「そうですか……。ではせめて、私からの贈り物は受け取ってくださいますか?」
「え? 贈り物……?」
「はい。実は私……公爵様に此度の慰謝料として、とある物を頂戴しましたの」
「あら? 貴女たしか慰謝料は受け取らないと言ってなかった? それに”とある物”って……」
驚くイザベラに対してセシリアは不敵な笑みを浮かべた。
「なんですって? そんなことが……! しばらく会わない間に色々あったのね……」
夜、食堂で久方ぶりに義母イザベラと再会し、離れていた間の出来事を語ると彼女は目を見開き驚嘆の表情を浮かべた。
そんな顔を見るのも久しぶりで、セシリアは思わず顔を綻ばせる。
「ふふ、でもお義母様のお顔を見たら嫌な気持ちも吹き飛んじゃいました」
「……ッ!! 急にそんなことを言うんじゃないわよ……」
耳まで真っ赤になった可愛らしいイザベラを見て、セシリアはついニヤニヤしてしまった。
「ちょっと! ニヤニヤしないで!」
「あら、ごめんあそばせ。お義母様が可愛らしくて、つい……」
「また貴女はそんなことを言って……!」
二人が笑い合っている最中、テーブルに運ばれてきたのは鴨胸肉のロースト。皮は薄くパリッと焼かれ、ナイフを入れると中からほんのり赤みを帯びた肉汁がゆっくりと滲み出した。添えられているのは、赤ワインと果実のソース。深い果実味とほのかな酸味が、鴨の濃厚な旨味を引き立てている。
「ん、この鴨肉……とても美味しいわ。外はこんがり、中は驚くほどなめらか……絶妙な火入れね」
「気に入っていただけてよかった。お義母様の好物とお聞きしましたので、メイン料理として出すように料理長にお願いしましたの」
「まあ、わたくしの為にわざわざ……」
再び頬を赤らめ、小さく「ありがとう」と呟くイザベラの愛らしさは息をのむほどだった。
その表情に魅せられたかのようにセシリアはつい自然と思っていたことを口に出してしまう。
「お義母様、貴女はまだお若い。それにとてもお綺麗です。……再婚、考えたりはされないんですか?」
その言葉にイザベラははっとした表情で顔を上げた。その目には驚きが浮かんでいる。
それでも、セシリアは止まることなく話を続けた。
「お義母様が先代様を深く愛していらっしゃったことは知っております。ですが貴女はまだお若い。子だって十分望めるでしょう」
「……そんなこと、貴女が気にすることではないわ」
「ええ、余計なお節介であることは重々承知しております。ですが……お義母様が心配なのです。私がこの邸と出て、エリオット様まで出ることになれば、ここに残る貴女が新しい当主の元で嫌な思いをしないかと……」
「え? ちょっと、まって、今、”新しい当主”って……。それにエリオットが邸を出るとはどういうこと……?」
セシリアはイザベラに公爵がエリオットを当主の地位を剥奪する可能性があることを話した。
始めは驚いていたイザベラだが、そうなる経緯を話すと納得したように頷くのだった。
「ああ、そうよね……。考えてみれば当たり前だわ。結婚式初日から夫の責務も忘れて貴女を放置し、災害時には当主の責務まで放棄したような無責任な男だもの。むしろすぐにでも当主の立場から下ろされてもおかしくないわ。現に、今この邸は当主が不在でも問題なく回っているのだもの。それはつまりこの家にエリオットが不必要だということだわ」
イザベラが思いのほか辛辣なことを言うのを聞き、セシリアは少なからず驚かされた。
優しい彼女にここまで思わせるほどエリオットの行動は酷いものだったのだな、と改めて思う。
「ええ、そうなった場合、新たな当主は親類の誰かとなるでしょう。私はお義母様が肩身の狭い思いをするなんて嫌なのです……」
「セシリア……」
「いきなり再婚という無粋な話をして申し訳ありません。ただ、貴女ほどの美しさを持つ方が、未亡人のままで一人きりでいるなんて……あまりにも惜しい。貴女がこのまま独り身でいるなんて、まるで花が咲いても誰にも見られない庭のよう。勿体のうございますわ」
「まあ……お上手ね。貴女がわたくしを心配してくれているのはとても嬉しくてよ。でもね……わたくし、夫と過ごした日々が今生で一番の宝物なの」
「それを否定するつもりは毛頭ございません。ただ……」
「分かっているわ。ええ、貴女がわたくしの生活を心配してくれているのはちゃんと分かっていてよ」
セシリアがなぜ、こうまでして再婚を勧めるのか。イザベラにはその理由がもう分かっていた。
この邸を出て行くとしても、次に住むための家と当面の生活費が必要だ。実家を頼れないイザベラのような貴族の女性が生きていくためには結婚が最も手っ取り早い。セシリアが自分のこれからを思って再婚を勧めてくれていると、イザベラはその気持ちをちゃんと理解していた。
「再婚はしないわ。生活に必要な資金は旦那様が遺してくださったお金があるから大丈夫よ」
ここを出て行っても、街でアパルトマンを借りるなり、小さな家を買うなりする金は十分にある。
必要なら仕事を探して慎ましく生きていこうとイザベラは考えていた。
「そうですか……。ではせめて、私からの贈り物は受け取ってくださいますか?」
「え? 贈り物……?」
「はい。実は私……公爵様に此度の慰謝料として、とある物を頂戴しましたの」
「あら? 貴女たしか慰謝料は受け取らないと言ってなかった? それに”とある物”って……」
驚くイザベラに対してセシリアは不敵な笑みを浮かべた。
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