初夜に訪れたのは夫ではなくお義母様でした

わらびもち

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衝撃の一言

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「知りたい?」

 王女は声を潜め、にやりと笑った。まるで、ようやく自分の方を見てくれたと言わんばかりに瞳を輝かせる。

「わたくしね、考えたのよ。どうすれば邪魔なあの女を排除して、エリオット様と結ばれるかを……」

 うっとりと語り出した王女は恋する乙女のように可愛らしい顔をしているのに、なぜだかそれがひどくゆがんで見えた。その可憐な唇から零れる言葉を聞くのが恐ろしい。
 微かに震えるイザベラの肩に背後からセシリアがそっと触れ、安心させるように寄り添った。手のひらから伝わる静かな温もりが震えをそっと鎮めていく。

「一番いいのは、離婚するように仕向けること。でも、直接話しても、手紙を送っても、あの女はまったく聞こうとしないの! わたくしが親切にも身の程を弁えるように教えて差し上げているのに、まるで理解しようとしないのよ。信じられないわ!」

 それを聞いたセシリアは内心で首を傾げた。はて、身の程を弁えろとは何に対してだろうかと。
 まあ、おそらくはエリオットの妻に相応しくないとかそういう意味だろうけど、あんな男に相応しくてたまるかと声を大にして言いたい。
 それに、あの程度の手紙では心のどの部分も動かされない。もしかすると夫を愛していれば不安に駆られて夫婦の間に亀裂が入るのかもしれないが、そうではないので不安など湧きようもない。害虫並に嫌っている相手と愛し合ってますと言われたところで、虫相手に奇特な方ですこと……としか思えない。

「おかしいわよ……。だって、それで上手くいってたのに。きっとあの女の心は鋼鉄か何かで出来ているのよ。そうでなければ動揺すらしないなんておかしいもの!」

 今まで、というのはどういうことだろうとイザベラは不思議に思うが、それを口には出さなかった。
 それを言って話の腰を折りたくはなかったから。
 反対に公爵から王女の離婚歴を聞いていたセシリアはその意味が分かっていた。
 おそらく、王女の元夫の中には伴侶がいる男性もいて、別れさせるために伴侶宛てにセシリアにしたことと同じことしてきたのだろう。姑息な人だ、とセシリアは王女のことをますます軽蔑した。

「だからね、もういっそのことしちゃえばいいって思ったの。あの女がこの世からいなくなれば、わたくしは晴れてエリオット様と結ばれるもの。ね、いい案でしょう?」

「は? え……? な、なにをおっしゃっているのですか……?」

 恐ろしい発言にイザベラは目を見開き、わなわなと震えた。そんな理由で人の命を狙おうとするなど信じられないと。そして命を狙われたにもかかわらず、セシリアはイザベラとは逆に、スン…と落ち着き払っていた。
 思い通りに動かない、邪魔だからという理由で命まで奪って排除しようとする。それは王女のように短絡的な性格の者が考えそうなことだから。

 それにしても、エリオットがそこまでして手に入れたいほどの男だとは思えない。
 王女にしてもキャサリンにしても、何故そこまであの男に執着するのだろうか。顔と身分を除けば無責任で思いやりがなく、自己中心的な人格破綻者であることを知らないのだろうか。

「だからね、わたくしの手の者に命じたの」

「は…………?」

 その瞬間、イザベラは口元を強張らせて絶句した。
 火を放つ? 一体なにを言っているの……。

「な、何を仰って……それは、殿下のご冗談で――」

「冗談だと思いたい?」王女の声にはどこか小鳥を嬲る猫のような楽しげな響きがあった。
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