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執事の怒号
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「あなたという方は……自分が何をしたのか、わかっていらっしゃるんですか!!」
静かな朝の邸内に執事の怒号が響き渡る。使用人たちは息をひそめ、その場を固唾を呑んで見守っていた。
「何って……べつに、夫婦なのだから同衾ぐらい……」
「開き直るおつもりですか!? ……呆れました、ご自分の非くらい認めたらどうです?」
心の底から情けないと言いたげに眉をひそめた執事に、エリオットはむっとした顔を返した。
「セシリアにだって非はあるだろう! 夫の顔に銃口を向けたんだぞ? あんな恐ろしい真似を平気でするような女だとは思わなかった……!」
「……奥様が恐ろしい御方だということは、旦那様以外は皆知っておりますよ? よかったではないですか、その程度で済んで……」
エリオットの額にできた火傷を見て、執事は「まったく……」とでも言いたげにため息をついた。
「だいたいですね、いくら夫婦といえども奥様の私室にお入りになる際には一声おかけいただくのが礼儀かと。無断で、しかも勝手に鍵を開けて侵入するなど無礼極まりない行いです。奥様が怒って旦那様に銃口を向けるのも致し方ありません」
「致し方ないわけがあるか! 普通は夫が寝室を訪れたら喜ぶものだろう!?」
「旦那様は普通の夫ではありませんから。初夜に他の女へ会いに行くような夫は普通ではなく異常です。異常な夫が寝室を訪れて嬉しいはずがありますか! 怖いだけですよ!」
「おい、それは明らかに違うだろう!?」
「いいえ! 違いません! 奥様にとって昨夜の旦那様は突如現れた暴漢に過ぎません。暴漢から身を守るために婦女子が拳銃を突きつけるのは正当防衛です」
「暴漢は言い過ぎじゃないか……!?」
「言い過ぎなものですか! ご自分が卑劣な暴漢であることを自覚し、しっかり反省なさってください。これでは奥様の信用を得られませんよ? 既に信用どころか警戒対象になっているのですから、ここから挽回はかなり難しいかと」
やることなすことすべてがセシリアに災いをもたらすエリオットは、夫というより完全に“歩く災厄”である。
そんな相手に迫られたら怖気が走り、身を守るために銃くらい突きつけて当然だ。
執事だってもし自分が女性ならエリオットみたいな男に触れられるのは御免被る。
「でも……夫婦であることは間違いないし……」
「”夫婦”という言葉を免罪符に何でもしていいわけじゃありません。夫婦といえども礼儀は大切です。ましてや貴族であればなおさらでしょう。互いに家門を背負っているのですから、相手を侮る行為は相手の家門を侮るも同然です」
「それは……分かっているが……。でも……」
「いいえ、分かっておりません。相手を無理やり手籠めにしようという行為は見下している相手にしか成立しません。尊重する相手にそのような真似はしないでしょう?」
この期に及んでなお言い訳を並べるエリオットを執事は容赦なく一蹴した。
「尊重って……僕は当主だぞ! 尊重する方ではなく、される方だろう!」
「……奥様相手にそう思いたければご自由にどうぞ。痛い目を見るのは旦那様なので……」
物理的に、と小声で呟く執事の形相が凄まじい。それを見たエリオットが「ヒイッ!?」と悲鳴をあげるくらいに。
「そもそもどうしてあのような真似を? ……まさかとは思いますが、『奥様の純潔を奪えば、条件を破っても離婚にはならない』などという浅はかな考えからの行動ではありませんよね?」
「………………」
何も言わないエリオットに、執事は「はああ~っ……」と盛大なため息をついた。
静かな朝の邸内に執事の怒号が響き渡る。使用人たちは息をひそめ、その場を固唾を呑んで見守っていた。
「何って……べつに、夫婦なのだから同衾ぐらい……」
「開き直るおつもりですか!? ……呆れました、ご自分の非くらい認めたらどうです?」
心の底から情けないと言いたげに眉をひそめた執事に、エリオットはむっとした顔を返した。
「セシリアにだって非はあるだろう! 夫の顔に銃口を向けたんだぞ? あんな恐ろしい真似を平気でするような女だとは思わなかった……!」
「……奥様が恐ろしい御方だということは、旦那様以外は皆知っておりますよ? よかったではないですか、その程度で済んで……」
エリオットの額にできた火傷を見て、執事は「まったく……」とでも言いたげにため息をついた。
「だいたいですね、いくら夫婦といえども奥様の私室にお入りになる際には一声おかけいただくのが礼儀かと。無断で、しかも勝手に鍵を開けて侵入するなど無礼極まりない行いです。奥様が怒って旦那様に銃口を向けるのも致し方ありません」
「致し方ないわけがあるか! 普通は夫が寝室を訪れたら喜ぶものだろう!?」
「旦那様は普通の夫ではありませんから。初夜に他の女へ会いに行くような夫は普通ではなく異常です。異常な夫が寝室を訪れて嬉しいはずがありますか! 怖いだけですよ!」
「おい、それは明らかに違うだろう!?」
「いいえ! 違いません! 奥様にとって昨夜の旦那様は突如現れた暴漢に過ぎません。暴漢から身を守るために婦女子が拳銃を突きつけるのは正当防衛です」
「暴漢は言い過ぎじゃないか……!?」
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そんな相手に迫られたら怖気が走り、身を守るために銃くらい突きつけて当然だ。
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「それは……分かっているが……。でも……」
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「……奥様相手にそう思いたければご自由にどうぞ。痛い目を見るのは旦那様なので……」
物理的に、と小声で呟く執事の形相が凄まじい。それを見たエリオットが「ヒイッ!?」と悲鳴をあげるくらいに。
「そもそもどうしてあのような真似を? ……まさかとは思いますが、『奥様の純潔を奪えば、条件を破っても離婚にはならない』などという浅はかな考えからの行動ではありませんよね?」
「………………」
何も言わないエリオットに、執事は「はああ~っ……」と盛大なため息をついた。
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