初夜に訪れたのは夫ではなくお義母様でした

わらびもち

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流石はお義母様

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「――貴女らしくないわねぇ……セシリア」

「お義母様?」

 まるで初めて会った時のように、必死で悪女ぶろうとしているイザベラの態度に驚きセシリアは顔を上げて目を見開いた。

「結婚式の夜、夫や使用人たちから到底信じられないような扱いを受けても、怯むことなく己の力のみで立ち向かった時の貴女はどこにいったのかしら……。わたくしが知るセシリア・ガーネット侯爵夫人はこんなふうにただ落ち込んでいるだけの人じゃなかったと思うわ」

 セシリアの瞳がわずかに震える。イザベラは目を逸らしてそのまま話を続けた。

「そうやって離婚が可能か不可能かを、ただ座して待つだけなの? らしくない。全然貴女らしくないわ、セシリア。貴女がどうしてもエリオットを夫婦と続けることが生理的に無理だというなら、貴女自身がどうにかするため動くべきじゃない?」

「でも……お義母様、私が使用人達に”余計な真似はしなくていい”と言ったことが知れたら、それは私の瑕疵になってしまいます……」

 セシリアがエリオットと離婚させるために、故意に彼を元婚約者と接触させるよう仕向けたことが露見すれば、非常にまずい。公爵あたりがそれをセシリアの落ち度と見なし、それは契約の履行を妨げる行為だと主張する可能性がある。
 
 そうなれば、なし崩しに条件自体が無かったことにされてしまう可能性が高い。
 その場合、セシリアはエリオットとの離婚が不可能な立場に追い込まれる。

「だったら、別に使用人をどうこうしなくてもいいのではなくて?」

「え? どういうことです……?」

 イザベラがそっと耳打ちすると、セシリアの瞳にみるみるうちに光がよみがえった。

「なるほど……それは思いつきませんでした。さすがお義母様です!」

 晴れやかな顔でそう言ったセシリアを見てイザベラは胸をなで下ろした。
 やっぱり彼女はこういう生き生きとした顔をしている方がいい。落ち込んでいる姿を見ると、なんだか心が痛む。

 そして、イザベラの助言通りに物事を進めたセシリア。翌日には、早くもその成果がもたらされた。

「失礼いたします、奥様! 今、少々よろしいでしょうか……」

 青ざめた顔のメイドが別邸に飛び込んでくると、セシリアはわざと驚いたふりをして「どうしたの?」と尋ねた。

「あ、あの……今、奥様宛てにお客様が……」

「お客様? 今日は来客の予定はなかったはずだけど……どなたかしら?」

「それが、その……オニキス子爵夫人が……」

「オニキス子爵夫人……?」

 その名に覚えはあったが、またしてもセシリアは知らない振りをして首を傾げた。

 そうこうしているうちに、別邸の扉が突然激しく打ち鳴らされた。
 甲高い女の叫び声が邸の中にまで響き渡る。

「ここにいるんでしょう? ガーネット侯爵夫人! 出てきなさいよ!」

 大声に驚いたメイドが小さく悲鳴を上げる中、セシリアはわずかに口角を吊り上げ、嗤っていた。
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