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お伽噺(キアラ視点)
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「奥様、先程のローレン嬢のお話……。 “青薔薇の魔女”の話に似てますね……?」
邸へ戻る馬車の中、専属メイドのノーラが私にそう問いかけた。
ノーラはローレン嬢の邸で私の傍に控えていたおり、当然会話も耳にしている。
その話が私と彼女がよく知るお伽噺に類似していると思ったのだろう。
「貴女もそう思った? やっぱりそうよね。ローレン嬢のあの話……幼い頃に乳母から聞いたお伽噺にそっくりだったわ」
ノーラと私は乳姉妹だ。
彼女の母である乳母は幼い頃あるお伽噺を聞かせてくれたのを覚えている。それが“青薔薇の魔女”の話だ。
「あの話って確か……若い女と浮気した男が魔女から報復を受け、今も罰を受けて彷徨っている。という内容だったわよね?」
「奥様、それは端折り過ぎです。まあ、おおまかに言えばそんな話ですけども」
あまりにもザックリとしか覚えていない私のためにノーラが再度お伽噺の内容を教えてくれた。
彼女の語り口調は乳母によく似ており、幼い頃にそれを聞いた記憶が呼び覚まされる。
『昔々、あるところにとても美しい魔女がおりました。魔女は青い髪、青い瞳を持ち、薔薇のように華やかな美貌をしていたので、皆から青薔薇の魔女と呼ばれておりました――』
「ああ、段々思い出してきたわ。この魔女って、魔女という割にはすごく優しい女性なのよね? 村人の病を治療したり、日照りから村を救ったりと」
「そうそう、病の夫にも献身的に尽くす良い妻なんですよね。でもこの夫が物凄くクズで、子供心ながらに憤慨した記憶がありますよ」
二人でこのお伽噺を聞いてはこのクズ夫の場面で怒っていたものだ。懐かしい。
私がそれを思い出し、笑みを零すとノーラはそのまま話を続けた。
『魔女は夫の病を治すため、日夜薬の研究に明け暮れ、そしてついに治療薬を完成させたのです。でもその頃には魔女もすっかり年をとり、かつての美貌は衰えてしまいました。そして病が完治した夫は魔女を捨て、村の若い娘と駆け落ちしてしまいました―――』
「清々しいほどのクズぶりよね。長年患ってた病を治してくれたうえ、ずっと自分を看病してくれたのよ? 普通だったら感謝して、今度は自分が死ぬまで妻を大切にしよう、と思うものじゃない? それを年取って美貌が衰えたからって捨てる、普通?」
「普通じゃしませんよ、そんなクズ極まれりな行動なんて。……でもなんか、この夫と旦那様ってちょっと似てません? 妻が綺麗じゃなくなったから捨てる、というあたりが……」
「あー……確かにそうね。旦那様はローレン嬢を捨てたんじゃなくて、自分が捨てられたんだけども……。でも尽くした妻への恩を仇で返すあたりはそっくりね」
デイビットから自分は一度人生をやり直しているという話を聞いたとき、最初に感じたのは不快感、そして次に感じたのは軽蔑だった。
水仕事一つしたことがない貴族令嬢が、それをやらざるを得ない状況に追い込まれるということがどれだけ辛いか。幼い頃から着飾る事が当然だった彼女達がそれを出来ないことがどれだけ恥ずかしいか、彼は全く理解していなかった。
それでも文句も言わずに尽くしてくれた妻を、綺麗じゃなくなったからといって蔑むなど、どれだけ性根が腐っているのか。そこは感謝して妻の存在を有難がるものだろう。
「それでこの後、魔女が浮気相手と夫に報復するのよね。彼等の若さを奪い、魔女は若返りかつての美貌を取り戻すの」
「そうそう、そのくだりは幼心にざまあみろと思いましたよ。それで恐れをなした夫が必死で許しを請うも魔女は決して許さず、二人に永遠の罰を与えるんですよね」
「そうそう、浮気相手を自分に模した像に変え、夫には不死の呪いをかけるの。それで一生魔女の為に“若さ”を捧げ続けるのよね」
『村娘と夫から若さを奪い、かつての美貌を取り戻した魔女は喜び、もう二度とこの美しさを衰えさせたくないと願いました。なので、夫に命じるのです。妾の為に人間から“若さ”を奪ってきなさい、と―――』
魔女の夫が彼女を捨てる際、何と言ったかは分からない。
だが妻から受けた恩を忘れて他の女と駆け落ちするするような男のこと、きっとろくでもない台詞を吐いたのだろう。
それこそデイビットがローレン嬢に投げかけた言葉と同じように。
邸へ戻る馬車の中、専属メイドのノーラが私にそう問いかけた。
ノーラはローレン嬢の邸で私の傍に控えていたおり、当然会話も耳にしている。
その話が私と彼女がよく知るお伽噺に類似していると思ったのだろう。
「貴女もそう思った? やっぱりそうよね。ローレン嬢のあの話……幼い頃に乳母から聞いたお伽噺にそっくりだったわ」
ノーラと私は乳姉妹だ。
彼女の母である乳母は幼い頃あるお伽噺を聞かせてくれたのを覚えている。それが“青薔薇の魔女”の話だ。
「あの話って確か……若い女と浮気した男が魔女から報復を受け、今も罰を受けて彷徨っている。という内容だったわよね?」
「奥様、それは端折り過ぎです。まあ、おおまかに言えばそんな話ですけども」
あまりにもザックリとしか覚えていない私のためにノーラが再度お伽噺の内容を教えてくれた。
彼女の語り口調は乳母によく似ており、幼い頃にそれを聞いた記憶が呼び覚まされる。
『昔々、あるところにとても美しい魔女がおりました。魔女は青い髪、青い瞳を持ち、薔薇のように華やかな美貌をしていたので、皆から青薔薇の魔女と呼ばれておりました――』
「ああ、段々思い出してきたわ。この魔女って、魔女という割にはすごく優しい女性なのよね? 村人の病を治療したり、日照りから村を救ったりと」
「そうそう、病の夫にも献身的に尽くす良い妻なんですよね。でもこの夫が物凄くクズで、子供心ながらに憤慨した記憶がありますよ」
二人でこのお伽噺を聞いてはこのクズ夫の場面で怒っていたものだ。懐かしい。
私がそれを思い出し、笑みを零すとノーラはそのまま話を続けた。
『魔女は夫の病を治すため、日夜薬の研究に明け暮れ、そしてついに治療薬を完成させたのです。でもその頃には魔女もすっかり年をとり、かつての美貌は衰えてしまいました。そして病が完治した夫は魔女を捨て、村の若い娘と駆け落ちしてしまいました―――』
「清々しいほどのクズぶりよね。長年患ってた病を治してくれたうえ、ずっと自分を看病してくれたのよ? 普通だったら感謝して、今度は自分が死ぬまで妻を大切にしよう、と思うものじゃない? それを年取って美貌が衰えたからって捨てる、普通?」
「普通じゃしませんよ、そんなクズ極まれりな行動なんて。……でもなんか、この夫と旦那様ってちょっと似てません? 妻が綺麗じゃなくなったから捨てる、というあたりが……」
「あー……確かにそうね。旦那様はローレン嬢を捨てたんじゃなくて、自分が捨てられたんだけども……。でも尽くした妻への恩を仇で返すあたりはそっくりね」
デイビットから自分は一度人生をやり直しているという話を聞いたとき、最初に感じたのは不快感、そして次に感じたのは軽蔑だった。
水仕事一つしたことがない貴族令嬢が、それをやらざるを得ない状況に追い込まれるということがどれだけ辛いか。幼い頃から着飾る事が当然だった彼女達がそれを出来ないことがどれだけ恥ずかしいか、彼は全く理解していなかった。
それでも文句も言わずに尽くしてくれた妻を、綺麗じゃなくなったからといって蔑むなど、どれだけ性根が腐っているのか。そこは感謝して妻の存在を有難がるものだろう。
「それでこの後、魔女が浮気相手と夫に報復するのよね。彼等の若さを奪い、魔女は若返りかつての美貌を取り戻すの」
「そうそう、そのくだりは幼心にざまあみろと思いましたよ。それで恐れをなした夫が必死で許しを請うも魔女は決して許さず、二人に永遠の罰を与えるんですよね」
「そうそう、浮気相手を自分に模した像に変え、夫には不死の呪いをかけるの。それで一生魔女の為に“若さ”を捧げ続けるのよね」
『村娘と夫から若さを奪い、かつての美貌を取り戻した魔女は喜び、もう二度とこの美しさを衰えさせたくないと願いました。なので、夫に命じるのです。妾の為に人間から“若さ”を奪ってきなさい、と―――』
魔女の夫が彼女を捨てる際、何と言ったかは分からない。
だが妻から受けた恩を忘れて他の女と駆け落ちするするような男のこと、きっとろくでもない台詞を吐いたのだろう。
それこそデイビットがローレン嬢に投げかけた言葉と同じように。
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