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婚約の経緯①
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「貴方は、どうしてわたくしが貴方と婚約したと思っていますの?」
「は……? それは、君が僕に一目惚れしたからだろう?」
何の迷いもなく堂々とそう告げるエーリックにディアナは思わず笑い声をあげてしまった。
滑稽でたまらない、とでも言いたそうな顔で。
「ふふっ……そこからですか! 呆れた……ずっとそんな思い違いをなさっていたなんて!」
「なっ……!? 何がおかしい! だって婚約はセレネ伯爵家から申し出たことじゃないか!?」
「ええ、まあ、そうですけど……。おかしいとは思いませんでしたの? 貴方も、貴方の御父君も……」
「え……? おかしいって……何がだ?」
「何の旨味もないアルバン子爵家に、国内有数の資産家である我が家が婚約の申込をしたことですよ。仮にわたくしが貴方に一目惚れをしたとして、何の旨味もない家に嫁がせるような真似を、当主である父が許すと思います?」
「え? それは許すはずだろう?」
何の迷いもなくそう答えるエーリックにディアナは眩暈がした。
お花畑のような環境で育ってきた男は言うことが違う。
「いや、許しませんよ。何の為に高いお金をかけて娘に令嬢教育を施すと思っているんですか? 家の利益となるところへ嫁がせるためですよ。いくら好いた相手でも、家に何の利益ももたらさない結婚なんて許すはずがありません」
「え……? なら、どういうことだ?」
何の旨味もない、一目惚れですらないと言うなら何の理由があって自分と婚約をしたのか。
「理由は二つあります。まず一つは、わたくしに既婚歴をつけるためですよ。初婚では愛する方に嫁げませんので」
「……はあ? なんだそれは!? どういう意味だ!」
「なんだって……先ほどの会話で分かりませんか? 貴方にとってドリスさんが唯一愛する方だったように、わたくしにとっては大公殿下が唯一の方だったのですよ。わたくしは、わたくしが真に愛する方と……どうしても添い遂げたかったのです」
ディアナの口からはっきりと別の男への愛を告げられ、エーリックは愕然とした。
頭のどこかではまだ彼女が自分に愛情があると信じていたが、今の言葉でその妄想は打ち砕かれる。彼女は初めから、自分以外の男を愛していたのだと。
「それでどうして貴方だったかと言うと、貴方が一番理想的だったからですよ」
「理想的……?」
その言葉は決して好みの異性だとか、そういう意味ではない。
まるで“駒として最適だ”と言われているようで、エーリックは背筋に薄ら寒いものを感じた。
「は……? それは、君が僕に一目惚れしたからだろう?」
何の迷いもなく堂々とそう告げるエーリックにディアナは思わず笑い声をあげてしまった。
滑稽でたまらない、とでも言いたそうな顔で。
「ふふっ……そこからですか! 呆れた……ずっとそんな思い違いをなさっていたなんて!」
「なっ……!? 何がおかしい! だって婚約はセレネ伯爵家から申し出たことじゃないか!?」
「ええ、まあ、そうですけど……。おかしいとは思いませんでしたの? 貴方も、貴方の御父君も……」
「え……? おかしいって……何がだ?」
「何の旨味もないアルバン子爵家に、国内有数の資産家である我が家が婚約の申込をしたことですよ。仮にわたくしが貴方に一目惚れをしたとして、何の旨味もない家に嫁がせるような真似を、当主である父が許すと思います?」
「え? それは許すはずだろう?」
何の迷いもなくそう答えるエーリックにディアナは眩暈がした。
お花畑のような環境で育ってきた男は言うことが違う。
「いや、許しませんよ。何の為に高いお金をかけて娘に令嬢教育を施すと思っているんですか? 家の利益となるところへ嫁がせるためですよ。いくら好いた相手でも、家に何の利益ももたらさない結婚なんて許すはずがありません」
「え……? なら、どういうことだ?」
何の旨味もない、一目惚れですらないと言うなら何の理由があって自分と婚約をしたのか。
「理由は二つあります。まず一つは、わたくしに既婚歴をつけるためですよ。初婚では愛する方に嫁げませんので」
「……はあ? なんだそれは!? どういう意味だ!」
「なんだって……先ほどの会話で分かりませんか? 貴方にとってドリスさんが唯一愛する方だったように、わたくしにとっては大公殿下が唯一の方だったのですよ。わたくしは、わたくしが真に愛する方と……どうしても添い遂げたかったのです」
ディアナの口からはっきりと別の男への愛を告げられ、エーリックは愕然とした。
頭のどこかではまだ彼女が自分に愛情があると信じていたが、今の言葉でその妄想は打ち砕かれる。彼女は初めから、自分以外の男を愛していたのだと。
「それでどうして貴方だったかと言うと、貴方が一番理想的だったからですよ」
「理想的……?」
その言葉は決して好みの異性だとか、そういう意味ではない。
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