やりなおしジュリアーナ姫の復讐劇

わらびもち

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監禁

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 それから数週間、外にでることもできずジュリアーナはマーサと共に牢獄のような別邸でただ時をすごしていた。マーサは王家へこの現状を伝えようと手紙をしたためたがそれは辺境伯家の使用人によって握りつぶされ、外部と連絡する手段は一切絶たれてしまった。

「マーサ……わたくし、こんな惨めな状況はもう耐えられないわ。ああ、どうしてこんなことに……」

 幸せな結婚が出来ると信じて疑わなかったのに、どうして今このような状況に置かれているのか。抗う術も見いだせない現状にジュリアーナはただ嘆くしか出来なかった。

「姫様、どうかもうしばらくのご辛抱を。しばらくすれば王家からのご連絡だってあるでしょうし、どなたかが訪ねてくることだってきっとあるはずです。 そのときが来ましたらここから逃げ出して陛下に訴えましょう!」

「ええ、そうね……。ごめんね、マーサ……貴女までこんなことに巻き込んでしまって……」

「何をおっしゃいますか。このマーサはいつまでも姫様のお傍におりますよ。巻き込まれたなどと思うわけがありません。それに悪いのはあの男です!」

 マーサはそう言ってジュリアーナを励ましてくれたが、待てど暮らせど王家からの連絡はなかった。というのもどうやらダニエルが上手い具合にかわしているらしく、手紙が来てもジュリアーナの筆跡を真似て勝手に返信し、茶会や夜会の招待状も欠席の返事を出してしまう。これではいつまで経ってもここから逃げ出せやしないが、何も知らされていない二人がそれに気づくことはない。

 監禁生活に段々と衰弱していく二人に更なる悲劇が待ち受けようとしていた。



「そういやお前、知っているか?」

 ふと、窓の外から話し声が聞こえた。
 その日は蒸し暑かったので窓を開けていたためか外の会話が室内にいてもはっきりと聞き取れる。

 声がする位置から館の外を警備……もとい中にいるジュリアーナが逃げ出さないように見張っているオーガスタ家の門番かと思われる。彼等は室内に会話が聞こえていると知らずに大声で話していた。

「早朝にアニー様がそうだぞ」

「あ~……どうりで本邸がバタバタしていると思った」

 聞き捨てならない発言にジュリアーナはマーサと顔を見合わせた。
 会ったことは無いがその“アニー”とやらは多分ダニエルの愛人なのだろう。
 正式な妻として迎えられないあたりから察するに彼女は貴族ではないと考えられる。

 その愛人が産気づいた、ということはつまりダニエルがジュリアーナに求婚した時点で愛人の腹には彼の子がいたことになる。

 他の女と子を作っておきながら王家の姫に求婚するなど正気とは思えない。
 ジュリアーナをこんな場所に閉じ込めたことといい、もしやダニエルは気が触れているのではないか。

 とんでもない狂人に求婚されてしまったとジュリアーナは顔を青くさせた。

「しかし、いくら愛し合っているとはいえアニー様は平民、旦那様は貴族。貴族と平民との間に生まれた子に爵位の継承権はないよな?」

「無いな。それに旦那様は書類上ジュリアーナ姫様と婚姻関係にある。だからアニー様との子は婚外子だ。婚外子の存在を王家に知られたら旦那様の首が物理的に飛ぶぞ」

「うえ……怖いな。じゃあ旦那様はアニー様との子をどうするつもりなんだろうな?」

「それが……なんでも。それなら継承権だって発生するからな」

「はああ? そんなの無理に決まっているじゃないか! それに赤ん坊が産まれたってんならその顔を見に王家の誰かがここに来るかもしれないだろう。それで姫様に今の状況を訴えられてみろ、下手すりゃこの家の者全員が処刑されかねないぞ?」

「ああ、だから姫様にはそうだ……。子供を産んで儚くなったことにすれば大丈夫だろうって」

 とんでもない発言にジュリアーナとマーサは息を呑んだ。
 死んでもらう? 子供を産んで儚くなったことにする?
 あまりにも狂った内容に脳が理解を拒む。
 
「はあ!? 何だよそれ? どう考えてもおかしいだろうが! だいたい嫁いで日が浅い姫様が子を産むこと自体あり得ない! 旦那様は気が触れちまったのか!?」

「おい、静かにしろ! 旦那様に聞こえちまうだろう!」

「だってどう考えたっておかしいじゃないか!? 旦那様はそんな嘘がまかり通ると本気で思ってんのか? 誰も信じねえよそんなの!」

「そんなの俺だって分かってるよ! でもな、旦那様は少しもおかしいと思わないんだよ……。分かるだろう? 本邸にいる上役の使用人は皆旦那様至上主義の連中ばっかりだ。その下の使用人がいくらまともな事を言おうが聞く耳持ちやしねえ。だから旦那様があんな……自分が世界の中心といわんばかりの自己中人間になっちまったんだ」

「ああ、あいつらか……。いや、だが……それでもこのままでいいのか? これって王家への反逆に問われるんじゃないのか?」

「……それを旦那様に言ってみろ。お前もお前の家族も切り捨てられるぞ? あの方は自分の意見が反対されることをひどく嫌う。今までだって旦那様を諫めた使用人はその場で切り捨てられたじゃないか……」

「う……それは、そうだが……このまま見過ごすってのも……。そうだ! こっそり逃がしてしまえばよくないか? 目を離した隙に逃げましたって言い訳すれば……」

「それをすれば俺達が責任を取らされるぞ……。そうなれば俺もお前も俺達の家族も旦那様に殺される。あの人は使用人の命なんて何とも思っちゃいねえ……。そうなりたくなければ大人しくするしかないんだよ」

「だが……これじゃあまりにも姫様が可哀想じゃないか? 嫁いですぐにこんな場所に閉じ込められた挙句に命まで取られるなんて……」

「そうは言ってもどうしようもないだろう……? 旦那様を止めることも姫様を逃がすことも無理だ。諦めるしかないんだよ……」

 あまりにもおぞましい思惑にジュリアーナは顔面蒼白のまま膝から崩れ落ちる。
 とても現実とは思えない事態に絶望し、ぼろぼろと涙を零した。
 
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