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決意
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侍女と侍医が退出し、一人になった部屋の中でジュリアーナは声を押し殺して泣き続けた。涙がとめどなく溢れ、身に着けているドレスの両袖が濡らす。ひとしきり泣くと些か頭がスーッと冷え、落ち着いて状況を整理することが出来た。
あの出来事が白昼夢ではないのだとしたら、信じられないが自分は本当に過去へと戻って来たことになる。おかしな顔をされたが侍女に現在の年度と日付を確認したところ、あの出来事よりも半年前まで遡ったようだ。
本当ならばまだこの時点でマーサは生きていたはずなのに何故か流行り病で死んだことになっている。どうしてそうなっているのかは分からないが、考えられるのはそうしないとつじつまが合わないからだろうか。
「過去に戻るなんてことが本当に出来るなんて……凄いわ、マーサ……」
止まったはずの涙がまたポロポロと溢れ出した。
しかし、泣いている場合ではないとジュリアーナは乱暴に涙を拭って深く息を吐いた。
「本当に過去へ戻ってやり直しているのだとしたら、このままいけば半年後にあの男に求婚されるのでしょうね……」
悲しいという感情が涙でひとしきり流された後、心に残ったのはあの男への強い憎しみ。
騙された自分が悪い事は百も承知だがあの男がいなければこんな形でマーサを失うこともなかった。
「あの男さえいなければマーサは死ぬこともなかったの……。騙されたわたくし自身が悪いのは分かっているけど……それでもあいつだけは絶対に許せない!!」
あの男……ダニエル・オーガスタが憎い。憎くてたまらない。
あの男にも自分が味わった屈辱と苦しみを与えてやらなきゃ気が済まない。
ジュリアーナは侍女が持ってきた手鏡に自分の姿を映し、顔を歪ませた。
清らかで妖精のようだと謳われた無垢な姫が、警戒心の無い愚かで純粋な姫が映っている。
「ははっ……馬鹿で弱いオヒメサマが映っているわ……」
弱いくせに警戒心の薄い自分に吐き気がする。
ジュリアーナは目を吊り上げ鬼の形相で手鏡を床へと叩きつけた。
パリン、と音がして粉々に砕けた鏡の破片を靴で憎々し気に踏みつけ荒い息を漏らす。
妖精姫というより鬼女といった方が正しいような姿で何度も足を上げては床に降ろし鏡の破片を踏み砕いた。
「このっ……愚かで、頭にお花畑が咲いているような能天気な女のせいで……マーサが……! こいつの、こいつのせいで……」
あの男も憎いが、それと同時に愚かなほどに無垢だった自分が憎い。
少しでも警戒心があればあの男の口車に乗らなかった。
あの男の言動を怪しいと思えた。そうすればあんな目に遭わなかったし、マーサが死ぬこともなかった……。
愚かで騙されやすい自分など消えてしまえ。
まるでそれまでの自分を壊すかのように怒りのままに鏡を砕いた。
ひとしきり怒りを発散したジュリアーナは虚空に向かって恨みの籠った声で呟く。
「どんなにこの手を汚しても構わない。何としてもあの男を地獄に叩き落してやる……」
この日ジュリアーナは決意した。
自分を虐げマーサを死に追いやった原因であるダニエル・オーガスタを絶望の淵に落とすと。その為にはどんな汚いことだってやってやると。
「もう守られるだけのお姫様は終わりよ。マーサをわたくしから奪い、王族の誇りに泥を塗った憎き男……ダニエル・オーガスタを絶対に許すものか……」
怨嗟の込められたおどろおどろしい声が静寂に満ちた部屋に響く。
それはいつもの鈴を鳴らすような可憐なジュリアーナの声とは思えない程凄絶なものであった。
もし、本当に過去をやり直しているのであれば今より半年後にダニエルはまたジュリアーナに求婚をしてくるだろう。マーサは今わの際にダニエルの求婚を受けてはならないと言ったが、復讐をする為には求婚を受けた方がやりやすい。
こちらはあの男の行動を予め知っている。
ならば求婚を利用して罠に嵌めることも可能だ。
「そうと決まればすぐにでも準備に取り掛からなくては……。あと半年しかないのだから……」
これより半年後、憎きあの男を必ず地獄へと叩き落す。
固く決意したジュリアーナは実行に移す為の準備を始めるのだった。
あの出来事が白昼夢ではないのだとしたら、信じられないが自分は本当に過去へと戻って来たことになる。おかしな顔をされたが侍女に現在の年度と日付を確認したところ、あの出来事よりも半年前まで遡ったようだ。
本当ならばまだこの時点でマーサは生きていたはずなのに何故か流行り病で死んだことになっている。どうしてそうなっているのかは分からないが、考えられるのはそうしないとつじつまが合わないからだろうか。
「過去に戻るなんてことが本当に出来るなんて……凄いわ、マーサ……」
止まったはずの涙がまたポロポロと溢れ出した。
しかし、泣いている場合ではないとジュリアーナは乱暴に涙を拭って深く息を吐いた。
「本当に過去へ戻ってやり直しているのだとしたら、このままいけば半年後にあの男に求婚されるのでしょうね……」
悲しいという感情が涙でひとしきり流された後、心に残ったのはあの男への強い憎しみ。
騙された自分が悪い事は百も承知だがあの男がいなければこんな形でマーサを失うこともなかった。
「あの男さえいなければマーサは死ぬこともなかったの……。騙されたわたくし自身が悪いのは分かっているけど……それでもあいつだけは絶対に許せない!!」
あの男……ダニエル・オーガスタが憎い。憎くてたまらない。
あの男にも自分が味わった屈辱と苦しみを与えてやらなきゃ気が済まない。
ジュリアーナは侍女が持ってきた手鏡に自分の姿を映し、顔を歪ませた。
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「ははっ……馬鹿で弱いオヒメサマが映っているわ……」
弱いくせに警戒心の薄い自分に吐き気がする。
ジュリアーナは目を吊り上げ鬼の形相で手鏡を床へと叩きつけた。
パリン、と音がして粉々に砕けた鏡の破片を靴で憎々し気に踏みつけ荒い息を漏らす。
妖精姫というより鬼女といった方が正しいような姿で何度も足を上げては床に降ろし鏡の破片を踏み砕いた。
「このっ……愚かで、頭にお花畑が咲いているような能天気な女のせいで……マーサが……! こいつの、こいつのせいで……」
あの男も憎いが、それと同時に愚かなほどに無垢だった自分が憎い。
少しでも警戒心があればあの男の口車に乗らなかった。
あの男の言動を怪しいと思えた。そうすればあんな目に遭わなかったし、マーサが死ぬこともなかった……。
愚かで騙されやすい自分など消えてしまえ。
まるでそれまでの自分を壊すかのように怒りのままに鏡を砕いた。
ひとしきり怒りを発散したジュリアーナは虚空に向かって恨みの籠った声で呟く。
「どんなにこの手を汚しても構わない。何としてもあの男を地獄に叩き落してやる……」
この日ジュリアーナは決意した。
自分を虐げマーサを死に追いやった原因であるダニエル・オーガスタを絶望の淵に落とすと。その為にはどんな汚いことだってやってやると。
「もう守られるだけのお姫様は終わりよ。マーサをわたくしから奪い、王族の誇りに泥を塗った憎き男……ダニエル・オーガスタを絶対に許すものか……」
怨嗟の込められたおどろおどろしい声が静寂に満ちた部屋に響く。
それはいつもの鈴を鳴らすような可憐なジュリアーナの声とは思えない程凄絶なものであった。
もし、本当に過去をやり直しているのであれば今より半年後にダニエルはまたジュリアーナに求婚をしてくるだろう。マーサは今わの際にダニエルの求婚を受けてはならないと言ったが、復讐をする為には求婚を受けた方がやりやすい。
こちらはあの男の行動を予め知っている。
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「そうと決まればすぐにでも準備に取り掛からなくては……。あと半年しかないのだから……」
これより半年後、憎きあの男を必ず地獄へと叩き落す。
固く決意したジュリアーナは実行に移す為の準備を始めるのだった。
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