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二度目の求婚
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ジュリアーナが復讐の鬼となると決意した日から半年が経過し、運命の日がやってきた。マーサを失うこととなった元凶であるダニエル・オーガスタが王宮の謁見の間にてジュリアーナに求婚する日が。
(ダニエル・オーガスタ、やっと会えたわね……。この半年、お前のことを忘れた日は一度たりとも無かったわ……)
憎い男の姿が視界に入った途端ジュリアーナの全身に怒りの炎が燃え上がる。
憎い、憎い、憎い……。呪詛のような感情が胸に渦巻き、表情を変えないようにするのがやっとだ。
不意にダニエルと目が合い、彼が作り物の笑みを向けてきた途端吐き気がした。
(よくもまあ……そんな顔が出来たものだわ。気色悪い……)
ジュリアーナは知っている。あの美しい笑みの下にどれだけ醜悪で自己中心的な欲望が隠されているかを。他者を踏みつけても何とも思わない卑劣な性根を。
叫びだしてしまいそうな感情を必死に抑え、ふいと顔を背けた。
ジュリアーナの素っ気ない反応にダニエルは分かりやすく困惑している。
(何その反応? まさか自分が微笑めば全ての女性は色めき立つとでも思っているのかしら……)
その自己評価の高さには恐れ入った。どうやらこの男は自分の容姿にかなり自信があるようだ。何も知らなかった頃のジュリアーナも確かに彼のお綺麗な顔に魅了されたが、その下にある醜悪な本性を知った後では惹かれるはずもなかった。
ジュリアーナの反応に出鼻をくじかれたダニエルだが、気を取り直して意気揚々と国王に向かい宣言する。
「此度の戦の褒美としてジュリアーナ王女殿下を賜りたく存じます」
前回と全く同じ台詞を聞いた瞬間、反射的に持っていた扇子を彼の顔めがけて投げつけてしまいそうになった。前回はこの台詞に陶酔したものだが今は嫌悪感しかない。
それに冷静になった今なら分かるが戦の褒美に姫を賜るなど時代錯誤もいいところだ。
お綺麗な顔と耳障りのいい言葉で飾っているが、ようは自分が仕える主君の娘を物扱いしているも同然のこと。捉える人によっては嫌悪感を抱いてもおかしくないと気づいた。
ちら、と横目で父を見ると些か渋い顔をしているのが分かる。
前回は浮かれて気づかなかったが父はダニエルの発言を快く思っていなかったのだ。
(それはそうよね。家臣に自分の娘を“褒美の品”として扱われたらいい気はしないもの。前回のわたくしはそんな父の気持ちにすら気づいていなかったんだわ……)
褒美に姫を、などというのはそれこそ祖父の世代でしかお目にかかれないほど古い慣習だ。それをよくもまあ恥ずかしげもなく言えたものだなとジュリアーナはますますダニエルに対して嫌悪感が募った。
若く美しい騎士が姫君に求婚する、という乙女には垂涎もののシチュエーションに目が眩みそんな簡単なことに気づけなかった自分が恥ずかしい。よくよく周りを見渡せば女性と男性で反応が違うことが分かる。
母以外の女性は皆うっとりとした瞳で見ている。以前の自分と同じように。
対して男性は白けた目か嫌悪感を滲ませた表情をしている。ちなみに母は怒りを抑えたような表情でダニエルを見ていた。
「ふむ……そうか。ジュリアーナ、オーガスタ伯はこう申しておるが……お前はどう思う?」
国王はダニエルには返事をせず、ジュリアーナに向かって問いかけた。
時代錯誤の申し出とはいえ戦の英雄、しかも辺境伯家の当主だ。姫が降嫁するには申し分ない条件であるからこそ判断は娘の手に委ねようと思ってくれたのかもしれない。
ここで断ることは可能だ。絶対に願いを叶えてやらねばならないという強制力は存在しない。物言わぬ人形というわけではないのだからジュリアーナにも断るという選択肢はある。断ったとしたても金や土地を代わりに与えればいいだけの話だ。
だが、ジュリアーナには断るという選択肢はない。
この日の為に準備を重ねてきた。やっと、やっとだ。やっとこの男にこの手で復讐することが出来ると身を震わせた。
仄暗い喜びが心を満たし、ジュリアーナは自然と花が綻ぶような可憐な笑みで答えた。
「光栄ですこと、是非お受けしたく存じます」
周囲が見惚れるような笑みで求婚を受けたジュリアーナ。
可憐で清楚な笑みはよからぬことを企むダニエルすらも魅了し、彼は一瞬呆けたようにジュリアーナを見つめていた。
(ダニエル・オーガスタ、やっと会えたわね……。この半年、お前のことを忘れた日は一度たりとも無かったわ……)
憎い男の姿が視界に入った途端ジュリアーナの全身に怒りの炎が燃え上がる。
憎い、憎い、憎い……。呪詛のような感情が胸に渦巻き、表情を変えないようにするのがやっとだ。
不意にダニエルと目が合い、彼が作り物の笑みを向けてきた途端吐き気がした。
(よくもまあ……そんな顔が出来たものだわ。気色悪い……)
ジュリアーナは知っている。あの美しい笑みの下にどれだけ醜悪で自己中心的な欲望が隠されているかを。他者を踏みつけても何とも思わない卑劣な性根を。
叫びだしてしまいそうな感情を必死に抑え、ふいと顔を背けた。
ジュリアーナの素っ気ない反応にダニエルは分かりやすく困惑している。
(何その反応? まさか自分が微笑めば全ての女性は色めき立つとでも思っているのかしら……)
その自己評価の高さには恐れ入った。どうやらこの男は自分の容姿にかなり自信があるようだ。何も知らなかった頃のジュリアーナも確かに彼のお綺麗な顔に魅了されたが、その下にある醜悪な本性を知った後では惹かれるはずもなかった。
ジュリアーナの反応に出鼻をくじかれたダニエルだが、気を取り直して意気揚々と国王に向かい宣言する。
「此度の戦の褒美としてジュリアーナ王女殿下を賜りたく存じます」
前回と全く同じ台詞を聞いた瞬間、反射的に持っていた扇子を彼の顔めがけて投げつけてしまいそうになった。前回はこの台詞に陶酔したものだが今は嫌悪感しかない。
それに冷静になった今なら分かるが戦の褒美に姫を賜るなど時代錯誤もいいところだ。
お綺麗な顔と耳障りのいい言葉で飾っているが、ようは自分が仕える主君の娘を物扱いしているも同然のこと。捉える人によっては嫌悪感を抱いてもおかしくないと気づいた。
ちら、と横目で父を見ると些か渋い顔をしているのが分かる。
前回は浮かれて気づかなかったが父はダニエルの発言を快く思っていなかったのだ。
(それはそうよね。家臣に自分の娘を“褒美の品”として扱われたらいい気はしないもの。前回のわたくしはそんな父の気持ちにすら気づいていなかったんだわ……)
褒美に姫を、などというのはそれこそ祖父の世代でしかお目にかかれないほど古い慣習だ。それをよくもまあ恥ずかしげもなく言えたものだなとジュリアーナはますますダニエルに対して嫌悪感が募った。
若く美しい騎士が姫君に求婚する、という乙女には垂涎もののシチュエーションに目が眩みそんな簡単なことに気づけなかった自分が恥ずかしい。よくよく周りを見渡せば女性と男性で反応が違うことが分かる。
母以外の女性は皆うっとりとした瞳で見ている。以前の自分と同じように。
対して男性は白けた目か嫌悪感を滲ませた表情をしている。ちなみに母は怒りを抑えたような表情でダニエルを見ていた。
「ふむ……そうか。ジュリアーナ、オーガスタ伯はこう申しておるが……お前はどう思う?」
国王はダニエルには返事をせず、ジュリアーナに向かって問いかけた。
時代錯誤の申し出とはいえ戦の英雄、しかも辺境伯家の当主だ。姫が降嫁するには申し分ない条件であるからこそ判断は娘の手に委ねようと思ってくれたのかもしれない。
ここで断ることは可能だ。絶対に願いを叶えてやらねばならないという強制力は存在しない。物言わぬ人形というわけではないのだからジュリアーナにも断るという選択肢はある。断ったとしたても金や土地を代わりに与えればいいだけの話だ。
だが、ジュリアーナには断るという選択肢はない。
この日の為に準備を重ねてきた。やっと、やっとだ。やっとこの男にこの手で復讐することが出来ると身を震わせた。
仄暗い喜びが心を満たし、ジュリアーナは自然と花が綻ぶような可憐な笑みで答えた。
「光栄ですこと、是非お受けしたく存じます」
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