侯爵令嬢アリスティアの愛する人

わらびもち

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番外編

オニキスの反論

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「ちょっとアンタ達、何して……「お前、これ以上騒ぐなら損害賠償請求するぞ」 はあ!?」

 僕が引き入れていたとはいえ、この女には我が家の調度品を沢山壊された。
 平民が貴族の家の物を壊すだなんて、本来なら首を斬られてもおかしくないんだぞ?

「いくら僕の恋人だったとはいえ、平民のお前が伯爵家の調度品を壊していいわけがない。お前が壊した分を全額弁償できるのか? 今去れば見逃してやる。とっととこの場から去れ、二度と来るな」

「あ、あれはその……だって……」

 しどろもどろになりながら目を彷徨わせたジェシー。
 だが急にニチャアッと汚らしい笑みを浮かべ始めた。

「ラ、ラウロ~、そんなこと言わないで? アタシたち愛し合った仲じゃないの……? そうよ、アタシは貴方に処女を捧げたのよ? 責任とってよね!?」

「………………これは言いたくなかったけど、お前、処女じゃなかっただろう?」

「え……何で知って……? あ、いや、違うわ!」

 これは父上からジェシーの調査書を見せられたときに分かったことだが、彼女は複数の男に貢がせ体の関係を持っていた。

 ジェシーが僕を選んだのは関係を持った男の中で、僕だけが貴族だったから。

 ジェシーが僕と共にいてくれたのは裕福な生活が出来るから、ただそれだけ。

 薄々気づいてはいた。
 けど、それでも一緒にいると楽だったから、可愛いと思ったから見て見ないふりをしていた。
 
「僕以外にも貢がせていた男がいたんだろう? ならそっちを頼れ。……もう僕はお前に何の魅力も感じないし、触れようとすら思わない。追い出すような形をとったのは悪かったと思っている、だが手切れ金代わりに宝飾品を持っていっただろう? なら僕にはお前に対して何らかの責任をとる義務はない。帰れ、二度と来るな」

 今のジェシーでは寄り付く男もいやしないだろうな。
 
 どうせ今まで手玉にとっていた男にも振られて最後に僕を頼ってきたんだ。

 つくづく僕を馬鹿にしてる……。

「な……なによ! アンタなんかアタシが寝た男の中で一番セックスが下手だったくせに!! いっつも感じている演技大変だったのよ? アンタは馬鹿みたいに気持ちよさそうだったけど、アタシは気持ち良かったことなんか一度もないわ! その女も可哀想~! 下手くそなアンタじゃ、女を満足させることなんて出来やしないわよ!!」

 キャハハハと耳障りな甲高い声で笑うジェシー。
 目を爛々とさせ、歯をむき出しにした顔は醜悪だ。
 
 僕が昔愛した女はこんなに醜かったんだな……。

「ラウロは下手なんかじゃないワ! すごーく上手で、何度も何度も愛してくれるのヨ? ワタシは何度も何度も昇天しているの! ラウロ以外で満足なんてできっこないワ!!」

 オニキス!? 人前でそんなこと言われたら恥ずかしいだろ!?
 
 でも嬉しい……。誰よりも愛している君がそう言ってくれて。

「は……はああああ!!? そんなわけないでしょう!! ラウロなんて性欲うっすいから、たまにしか抱いてくれないじゃない!? アタシはいっつも欲求不満だったから別の男で満たしてたのよ! そ、そうよ! アタシが別の男と寝たのはラウロのせいよ!!!」

 僕と恋人関係になってからも他の男と寝てたのか?
 複数の男と関係してたのは過去の話だと思ってたがそうじゃなかったのか……。

「ラウロの性欲は薄くなんかないわヨ! だってワタシ達は毎日のように愛し合っているもの!! 多い日は一日中ベットから出ないで愛し合っているのヨ!?」

「嘘よっ!! 嘘嘘嘘嘘嘘嘘!! へなちょこラウロがそんな絶倫なわけないわ!!」 

「嘘じゃないワ! さっきまで2回は愛し合っていたし、アナタが来なければもう1回スるはずだったのヨ!? ねえ、ラウロ?」

 むにゅうっと胸を僕の腕に押し付けて、上目遣いになるオニキスが可愛くてエロい。
 確かにジェシー相手だとそんなに欲情はしなかったが、オニキス相手ならいくらでもする。
 何なら今からでも抱きたい。

「ああ、もちろんだよオニキス。君相手なら僕はいくらでも勃つ」

 もうジェシーを視界にも入れたくない。
 僕が目配せをするとディランは心得たとばかりに門番に指示を出した。
 指示を受けた門番はジェシーに猿轡を噛ませこの場を離れる。

「騒がせて申し訳ございません坊ちゃま。後はわたくしどもに任せてゆっくりお寛ぎください」

「すまないなディラン。僕の後始末をさせてしまって……」

 僕がジェシーを恋人としてこの家に招き入れ、別れ話もしないで追い出してしまったことが原因だ。
 そんな後始末まで任せてしまって情けない。

「これはこれは……坊ちゃまが素直に礼を言ってくだるとは……。変わられましたな、これはオニキス様のおかげでしょうね」

 
 ああ、そうだ。オニキスが一途に僕を愛してくれるから、僕は無意味な劣等感をもつのは止めようと思えた。
 今までの僕は劣等感で周りに噛みついてばかりの駄目な人間だ。
 今も駄目な男であることに変わりはないが……せめて謝罪と感謝は素直に伝えたい。

 僕がこうやってオニキスと幸せに暮らせるのは、世話をしてくれるディランや父上達のおかげなのだから。
 
「行こうかオニキス」

 今は僕の過去の恋人に会って不安になったであろう彼女を安心させたい。
 震える彼女の肩を抱いて屋敷の中へと戻った。
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