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定例茶会
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「姫様、ヨーク卿がいらっしゃいました」
「あら、また約束の時間前にいらっしゃったのね?」
今日はセレスタンとの定例茶会の日。
約束の時間まではまだ半時もある。
そう、彼はいつもこうやって時間よりも早く王宮へとやってくるのだ。
愛しのアンヌマリーと束の間の逢瀬を楽しむために。
「それだけ姫様への愛が深いということです。きっと待ちきれないでしょうね」
揶揄うようにそう告げる専属侍女のローゼに、私は言葉でなく微笑みで返す。
周囲は知らないのだ。セレスタンが婚約者ではなく、浮気相手に会うために予定時刻よりも早く訪問しているということを。
「そうね。なら、たまには早く会って差し上げましょう」
「え? よろしいのですか?」
この国の王侯貴族は理由がどうであれ、約束時間よりも早く来た訪問客に会うことはしない。
それは相手の身分が高かろうと低かろうと同じこと。
だからその慣習を逆手にとってセレスタンは予定時間よりも早く訪問しているのだろう。
私が来ないと確信し、安心してゆっくりアンヌマリーとの逢瀬を楽しむために。
なら、今度は私がそれを逆手にとってやる。
「ええ、準備はもう済んでいるし。たまにはいいでしょう」
逢瀬を邪魔され、二人はどんな顔をするだろう?
後でその顔を拝むのが楽しみで仕方ない。
*
「王家所有の茶園から初摘みが届きましたの。セレスタン様のお口に合えばよいのですけど……」
「ああ、うん……」
いつもよりも早く私が応対したせいで、彼は愛しのアンヌマリーとの逢瀬を中断せざるを得なくなった。
それがよほど腹に据えたのか、仏頂面を隠そうともしない。
(いつもはそれも、ただの照れ隠しとしてとられていたけど……。今日はそうは見られていないようね?)
周囲を見渡すと、侍女達がセレスタンの態度に訝しんでいた。
彼女達の中で彼は『予定時間よりも早く訪問してしまうほど姫を愛している』という認識だ。
そんな愛しの姫が時間よりも早く応対してくれたのなら、普通は喜んで当然なはず。
なのに、喜ぶどころか不機嫌を隠そうともしない。
流石にそれはおかしいと、違和感を覚えて当然だ。
「セレスタン様、何やらご様子がいつもと違いますわね? ご気分でも悪いのでしょうか?」
理由は分かっているが、わざとそう聞いてやる。
すると彼は面白い位反応した。
「いや、それは……君が予定よりも早く来たから……」
「え? 駄目でしたの? いつもお待たせするのも悪いと思ったのですが……」
いつも彼は待ち時間を決まった応接室で過ごす。
その部屋にはある仕掛けが施されており、そのおかげで彼はいつもアンヌマリーと逢瀬を楽しめるのだ。
だが、今日は私が早く応対したせいでそれが台無しになった。
怒るのも無理はない。だが、それを表に出すなど愚かである。
「それは……だが、いつもは予定の時間にならないと来ないのに……」
「ええ、いつもそうですので、悪いと思いましたの。ですが、その言い方ですと、それは余計だったようですわね……」
悲し気な顔で俯くと、侍女達のセレスタンへ向ける視線に非難の色が混じる。
姫がお前に気を遣ってくれたのに、何がそんなに不満なのかと。
「い、いや、余計なことでは……」
「いいえ、余計な気を遣ったようで申し訳ございませんわ」
静かにカップをソーサーに戻し、取手から指を離す。
悲しくてこれ以上お茶も喉を通らない、と示すかのように。
すると益々侍女からの視線が鋭くなり、いたたまれなくなったのかセレスタンは分かりやすく焦り始めた。
「そんなことはない! ただこちらも心の準備というものが……」
「心の準備? それは王宮に着いてからするものなのですか?」
もう少し上手い嘘はつけないものか。
訪問先で心の準備を整える奴がどこにいるというのか。
案の定、侍女達は疑心暗鬼の目で彼を見ている。
「………………気分が優れないので、これで失礼する」
「左様でございますか。それではどうぞ、お大事になさってください」
私が言い終えるよりも早く席を立ち、逃げるように彼はその場を後にした。
王族に対して有り得ない態度に、その場にいた使用人達はざわめき始める。
「不敬な……。王族に対してあの態度は無礼です。姫様、このことを陛下にご報告いたしますか?」
たかだか公爵家の次男が、王家の姫に対してしていい態度ではない。
王家への忠誠心が高い侍女こそ、彼のそんな態度に憤りを隠せないようだ。
「あら、また約束の時間前にいらっしゃったのね?」
今日はセレスタンとの定例茶会の日。
約束の時間まではまだ半時もある。
そう、彼はいつもこうやって時間よりも早く王宮へとやってくるのだ。
愛しのアンヌマリーと束の間の逢瀬を楽しむために。
「それだけ姫様への愛が深いということです。きっと待ちきれないでしょうね」
揶揄うようにそう告げる専属侍女のローゼに、私は言葉でなく微笑みで返す。
周囲は知らないのだ。セレスタンが婚約者ではなく、浮気相手に会うために予定時刻よりも早く訪問しているということを。
「そうね。なら、たまには早く会って差し上げましょう」
「え? よろしいのですか?」
この国の王侯貴族は理由がどうであれ、約束時間よりも早く来た訪問客に会うことはしない。
それは相手の身分が高かろうと低かろうと同じこと。
だからその慣習を逆手にとってセレスタンは予定時間よりも早く訪問しているのだろう。
私が来ないと確信し、安心してゆっくりアンヌマリーとの逢瀬を楽しむために。
なら、今度は私がそれを逆手にとってやる。
「ええ、準備はもう済んでいるし。たまにはいいでしょう」
逢瀬を邪魔され、二人はどんな顔をするだろう?
後でその顔を拝むのが楽しみで仕方ない。
*
「王家所有の茶園から初摘みが届きましたの。セレスタン様のお口に合えばよいのですけど……」
「ああ、うん……」
いつもよりも早く私が応対したせいで、彼は愛しのアンヌマリーとの逢瀬を中断せざるを得なくなった。
それがよほど腹に据えたのか、仏頂面を隠そうともしない。
(いつもはそれも、ただの照れ隠しとしてとられていたけど……。今日はそうは見られていないようね?)
周囲を見渡すと、侍女達がセレスタンの態度に訝しんでいた。
彼女達の中で彼は『予定時間よりも早く訪問してしまうほど姫を愛している』という認識だ。
そんな愛しの姫が時間よりも早く応対してくれたのなら、普通は喜んで当然なはず。
なのに、喜ぶどころか不機嫌を隠そうともしない。
流石にそれはおかしいと、違和感を覚えて当然だ。
「セレスタン様、何やらご様子がいつもと違いますわね? ご気分でも悪いのでしょうか?」
理由は分かっているが、わざとそう聞いてやる。
すると彼は面白い位反応した。
「いや、それは……君が予定よりも早く来たから……」
「え? 駄目でしたの? いつもお待たせするのも悪いと思ったのですが……」
いつも彼は待ち時間を決まった応接室で過ごす。
その部屋にはある仕掛けが施されており、そのおかげで彼はいつもアンヌマリーと逢瀬を楽しめるのだ。
だが、今日は私が早く応対したせいでそれが台無しになった。
怒るのも無理はない。だが、それを表に出すなど愚かである。
「それは……だが、いつもは予定の時間にならないと来ないのに……」
「ええ、いつもそうですので、悪いと思いましたの。ですが、その言い方ですと、それは余計だったようですわね……」
悲し気な顔で俯くと、侍女達のセレスタンへ向ける視線に非難の色が混じる。
姫がお前に気を遣ってくれたのに、何がそんなに不満なのかと。
「い、いや、余計なことでは……」
「いいえ、余計な気を遣ったようで申し訳ございませんわ」
静かにカップをソーサーに戻し、取手から指を離す。
悲しくてこれ以上お茶も喉を通らない、と示すかのように。
すると益々侍女からの視線が鋭くなり、いたたまれなくなったのかセレスタンは分かりやすく焦り始めた。
「そんなことはない! ただこちらも心の準備というものが……」
「心の準備? それは王宮に着いてからするものなのですか?」
もう少し上手い嘘はつけないものか。
訪問先で心の準備を整える奴がどこにいるというのか。
案の定、侍女達は疑心暗鬼の目で彼を見ている。
「………………気分が優れないので、これで失礼する」
「左様でございますか。それではどうぞ、お大事になさってください」
私が言い終えるよりも早く席を立ち、逃げるように彼はその場を後にした。
王族に対して有り得ない態度に、その場にいた使用人達はざわめき始める。
「不敬な……。王族に対してあの態度は無礼です。姫様、このことを陛下にご報告いたしますか?」
たかだか公爵家の次男が、王家の姫に対してしていい態度ではない。
王家への忠誠心が高い侍女こそ、彼のそんな態度に憤りを隠せないようだ。
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