異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話〜君の想いが届くまで〜

一優璃 /Ninomae Yuuri

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二章

王国の歴史 

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屋敷の入り口の手前で召喚された。

ふと、以前フルゥが「王城に入ると気分が悪くなる」と言っていたことを思い出す。
この屋敷も国の管理下にある以上、同じようにフルゥに害があるかもしれない。

僕は足を止め、フルゥに向き直った。

「フルゥは誰か来ないか、外で見張ってて欲しい」

一瞬だけフルゥは目を見開いたが、すぐにいつもの調子に戻り自信満々に答えた。

「任せて!誰がきても追い払うから!」

その頼もしさに、思わず笑顔になる。

僕はレミーユとオルフェンを促し、そのまま屋敷へと駆け込んだ。

廊下を走り抜け、階段を一気に駆け上がる。
自室の扉を押し開け、荒らされた形跡がないか部屋中に視線を走らせる。

――何も触られていない。

ちょっとだけ安心した。

「あった、これだ!」

「よかった!まだ誰にも見つかっていなかったのね」

机の中央に、探していた本が静かに置かれていた。
その姿を目にした瞬間、張り詰めていた緊張がほろりと解ける。

この屋敷は国が管理している以上、関係者なら誰でも立ち入ることができる。
もし誰かが部屋に入っていたらこの本はもう手元にはなかったかもしれない。

そう考えるだけで、背筋がひやりとした。

僕はページをめくりながら、少しでも手がかりがないか必死に探す。
めくるたびに埃がふわりと舞い、小さな文字に目を凝らした。
レミーユとオルフェンも背後に回り込み、肩越しに本を覗き込む。

「ないな。どこにも書かれてない」

焦りが胸の奥をじわりと満たし始めた頃、オルフェンが小さく唸るように言った。

「待って。そこ、今のページ裏を見て」

「裏?」

指示された通りに紙をそっとめくると、茶色く変色したページの裏に、薄く擦れたようなインクの跡が残っていた。

「何これ、文字?」

「違うわ、これは魔法陣の一部よ」

レミーユが僕の肩越しに覗き込み、息を呑む。

ただの汚れにしか見えない薄さなのに、よく目を凝らすと、幾何学的な線がかすかに浮かび上がっている。

「真白、光魔法で浮かび上がらせられる?」

「やってみる」

僕が手をかざし、小さく詠唱すると、ページの表面が淡い光に照らされた。
すると、薄い線がじわじわと濃くなり、途切れていた部分が繋がっていく。

「……っ!」

完成した魔法陣がまばゆい光を放つと、光の粒が空中に集まり、文字が浮かび上がった。
日記のように書かれたその文字の羅列が示していたのは思わず息を呑むほど衝撃的な内容だった。


















◯月×日

起きてはならないことが動き出している。せめて、後の誰かが真実を知るため此処に記す。

古の時代、王家の始祖は女神と婚姻を結び、女神の加護を受けその身に多大なる力を宿したと伝わる。
その血脈は代々、常人をはるかに凌駕する魔力を持ち、王国を統治する権威であり続けた。
 しかし、時の流れとともに加護は薄れ、現代に至る頃には、王家の魔力は一般の民と大差ないほどに衰えてしまった。

ここから王は狂い始めた。

 祖先のように人々を従える“圧倒的な力”を求め、禁断の研究に手を伸ばした。
 彼が目をつけたのは古代魔導書に記された

「異界の来訪者は世界を救う力を持ち、その魂は万象を凌ぐ力を秘める」

という一文だった。

 王は異界より力のある者を呼び出す召喚法を確立し、多数の異世界人を招いた。
 彼らの魂を集め、自らの力に変換する魔法陣を完成させるためであった。
召喚された異世界人は、力を理解する間もなく魂を抽出された。
残された肉体は“器”と呼ばれ、無情にも処分された。
 この非道に異を唱えた臣下も少なくなかったが彼らを同じく王によって「処分」された。

 魔法陣はもうじき完成してしまう。
王が魂の力を得て常人を超える力を手にしたら次は魔族圏へ侵攻を始めるだろう。

王は人の領域を越えた支配、すなわち魔族をも従えることを夢見ているのだ。

この国は、いやこの世界そのものが、破滅の淵にある。

 

△月◻︎日
ついに魔法陣は完成してしまった。

王はその力を掲げ、魔族領へ侵攻を開始した。
圧倒的な魔力の前に多くの魔族が倒れ、辺境は炎に包まれた。
これに対し、魔族側は王の暴走を止めるため、“魔王”という象徴を再び掲げた。
魔王は民の怨嗟と願いを背負い、王国との全面戦争が始まった。

戦況は膠着し、王は焦燥を募らせている。
そこで彼は再び異世界召喚に手を染めた。
「魔王討伐」の名目で召喚された者たちは、力を理解する間もなく前線へ送り出され、
敗れた魂はただちに王の魔法陣に吸収されていった。

陛下の力は、陛下自身のものではない。
外部から奪われた魂の魔力を無理やり押し込めているだけ。
その強大さに器が耐えられていないのは明らかだった。

すべての問題は“魂を束ね、王の体に固定している核”  そのものにある。
















ページに浮かんだ最後の一文を読み終えた瞬間、
僕たちの間に重い沈黙が落ちた。

信じたくない、でも目の前の記録が否応なく真実を突きつけてくる。




「こんな、こと。異世界の人を、こんなふうに利用していたなんて」

「これが陛下の正体か。魂を使ってまで力を得ようなどと、正気の沙汰ではない」

「じゃあ、今まで召喚された人たちは、全員……」

僕の声が震える。

レミーユとオルフェンが静かに頷いた。
その瞳は強い怒りと深い哀しみで揺れていた。

「ええ。そして真白も、同じ運命を辿るかもしれなかったのね」

言葉が喉につかえ、息が詰まる。
魔王がノクトさんじゃなかったら、僕も魂だけを取られた器として消えていた。

ならば、生きている僕にできることは一つしかない。

オルフェンが静かにページに指を置いた。

「あいつを倒さない限り、この悲劇は止まらない。このままじゃ王国も魔族も滅ぶ」

部屋の空気が張り詰め、
誰もすぐには次の言葉を紡げなかった。















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