わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

疲れ

5

　最近は報告や打ち合わせで毎週城に来ていたのに、少し空いただけで凄く久々な気がする。
　城の中はいつものような笑顔はなく物々しい雰囲気だった。
　門の衛兵だっていつもの倍は居て、今が緊張感のある戦の最中だと思い知る。

「……戦の意味って何でしょうね」

　窓の向こうを見ながらリティナが足を止めた。
　そのままそっと目を閉じて祈りを捧げるのを俺はただ見つめている。
　戦に意味なんてない。
　騎士たちの手合わせのような正々堂々とはかけ離れた、卑怯な手さえも使うものだから医師団は襲撃された。
　リューラだって本当は怒りも哀しみも抑えて対話で解決がしたかっただろう。
　だが、相手はそんな言葉が通じる国でもない。
　他の国との兼ね合い的にも連合軍に加わり一気に攻めて鎮圧させるのが一番なのはわかる。
　無駄な犠牲をこれ以上出さないための決断。
　決して望まぬ戦ではあるが、避けられないものでもあるのだろう。

「……リティナ」

　声を掛けると、リティナは目を開けて組んでいた手を下ろした。

「すぐにマニエルたちは帰って来るだろ？そんな疲れた顔してたらあいつ心配すんぞ」

　笑って伸びると、リティナは微笑んで頷く。すると、

「あー！サライド様っ!!い、いらっしゃっ、ていると、聞いて……探しておりました！」

　ボリュームを加減できていない声が聞こえてきてバタバタと走ってきたのはロットル。
　俺たちの目の前でゼェゼェと息を切らす姿は相変わらずだが、上げた顔は隈があって少し心配にもなった。