わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

疲れ

4

　車がすぐ側で停まってドアが開く。

「サライド様！」

　降りてきたのはリューラの妹であるリティナだった。

「リティナ……様」

　いつものように呼びかけて慌てて“様”をつけたら笑われる。

「そんな畏まらなくてよろしいですよ？」
「いや、だって……王女なわけだし……」

　口ごもると、リティナは微笑んで俺の腕にするりと手を回した。

「お兄様の恋人は私にとっても大事な方です。それに……サライド様はマニエルのお兄様ですもの」

　どちらで考えても俺はリティナの義兄になるらしい。
　そう思うと少し照れくさいのだが。

「今、お時間ありますか？よろしければ少しお茶にお付き合い頂けませんか？」

　見上げられて頷くと、リティナは嬉しそうに顔を綻ばせる。
　だが、その顔には疲れが見えた。

「大丈夫か？」

　聞くと、少し驚いたような顔をしてリティナが頷く。

「……出陣した軍は大丈夫だと信じております。できればどちらの犠牲も最小限で解決し、傷付いた医師団を安全に連れ帰ると……」

　胸の前で握った両手が少し震えていた。
　その軍の中にはマニエルも居て、指揮を執っているのだから心配なんだろう。

「リティナは焼き菓子が好きだろう？」

　村を出る時にジョンからもらった包みを取り出すと、リティナは覗き込んで感嘆の声をあげた。

「おいしいお茶が頂けそうですね」

　笑うその姿はまだ幼さも残っている。
　そんなリティナも王女として今回襲撃で亡くなった医師たちの生家を回っていると聞いていた。
　かなり疲れているだろう。