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第三話 ディルドはオネエに嫉妬する?
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そして、その夜から、私達は二人で過ごす夜が日常となり、十日ほどが過ぎた。
その間、最初の数日間は初めての時と同じように、口淫から入り、繋がろうと試みるも上手くいかない日が続いていた。
そしてここ数日は、一緒にいることで反応してくれるケイツ様に口で奉仕して共に眠る日が続いている。 繋がれないことにケイツ様が罪悪感を抱いているのが伝わってくるだけに、ケイツ様のメンタル面に負担をかけたくはなかったのだ。
ケイツ様は、未だに性交時に私に自ら触れようとはしない。ケイツ様曰く、それはまるで呪いのような道徳観で植え付けられたような概念だそうだ。
ディルドとは意思のないものである、そうあるべき事が恭順の証なのだという価値観が思った以上にこの国では根強く浸透しているようだ。
――なんておかしな価値観なのだろう
心どころか、性器と本体すらも切り離された快楽を楽しむこの国の人々。そんな話を考えると、ケイツ様が今も義務としての行為をしているなら、やはりどうしても寂しくはある。
そうなのだけど、一方で、あの水色の瞳を柔らかく細めたケイツ様に、事後に少しだけ優しく労られるとそれだけで全身が満たされて、私はなんだか幸せな気持ちになるのだ。
最初は不遜の騎士様に似てる、なんて思っていたのが今では嘘のようで、ケイツ様はただケイツ様で、思慮深く、他の文化にも寛容で、しっかりしていて頼りになるかと思えば、時に可愛らしくて純粋で、心が温かくなる。
だけど、騎士様に可愛い、まして護りたい、なんて面と向かってはとても言えない。
私は徐々に自分の気持ちを持て余し始めていた。
だからこそ、誰にでもなく自分に祈る。
――どうか、これ以上欲張りになりませんように
ここは、私がいた国ではない。
そこに不毛な感情を持って訪れたのはこの私なのだ。だから、ケイツ様の負担には極力なりたくないと思うのだ。
そして数日後、その日は祭りで街が賑わうと聞いた私は、執事さんに街に出てみたいと強請った。
私はまだこの国のことを十分知っているとは言えない。ケイツ様はその時、酷く困った顔をして、結局は護衛も兼ねて私に付き合ってくれることになった。
街に到着した私にはようやくその理由がわかった。
――この街はやはり、異質だ
街の出店のあちこちには、まるで野菜や装飾品の店と同じように、あの男性器型の大人の玩具であるディルドが売っているのだ。
――真っ昼間だよ?
子供だって普通に行き来してるのに、飛び交う会話に他人事ながらハラハラする。
「ねぇ、あんた、これは誰のモデルだい?」
「これは、八十年前の英雄、ピカタのイチモツさ!」
「はっ、八十年前なんて、ほんとだろうね、嘘言ったら役人に突き出してやるんだから」
「ははっ、勘弁してよ、嘘じゃないから!」
「じゃあ、二つ包んでおくれ!」
「毎度、こっちの生産終了品、一個おまけしとくから使ってみてよ!」
「おや、ありがとう、気が利くねぇ、また来るよ」
――ディルド屋、だよね?
私は引き攣ったまま、そんな街の光景を見つめていた。
「ケイツ様、この国って一体……」
ケイツ様は私の言わんとするところを理解した上で、やや気まずそうに教えてくれる。
「性産業が盛んな国だからね、だが、それで潤っている分、税金は安いと言われている。外国人の誘致にも成功しているしね、私にとっては日常茶飯時だが、君には見苦しいだろう、だから連れてきたくはなかったんだけどね……」
「でも、それ以外の店もちゃんとあるし、皆結構幸せそうだし……」
ここには、ここの文化があるのだ。
ただ悪く言うのは他文化への価値観の押し付けになってしまうと、私は敢えて話題を変えた。
「そうだね、皆、思い思いに生活しているから、私達も何か食べようか、ひより」
「そうですね」
私とケイツ様は仮面越しに頷き合った。
今日の装いはマント姿に仮面という、この国の貴人の御忍びスタイルだ。
互いに有名人だから顔見せは避けましょう、との執事さんの判断だ。
そしていくつものディルドの出店の前を通り過ぎた私達は今、再び微妙な空気に包まれていた。
「ケイツ副団長の仕様を探してるんだけどあるかい?どこに行ってもなくてさ」と耳にする度にケイツ様は咽せて辺りをキョロキョロする。
そしてお決まりのようにこう繰り返されている会話に顔を赤らめて頭を抱えているのだ。
「あれは、即売で、聖女様に所有権が移ってからは製造禁止で幻のイチモツになっちまったよ、随分儲けさせて貰ってたんだけどねぇ」
「ないのかい、中古でもいいんだけどねぇ……」
「あー、そりゃ益々希望薄いよ、あれは皆、一度使ってしまったら手放さないからね」
そんな会話を聞きながら、私は疑問を口にした。
「ケイツ様、も、もしかして、あの時、女王様が言ってらした金と銀って……」
王室御用達、豪華ケイツ副騎士団長仕様ディルド(幻の逸品)だったのだろうか。
そう思うと今更ながら下品な興味ではあるが、ソワソワしてしまう。
「――何も聞かないでください」
「あー、うん、ご、ごめんなさい……」
「いえ、こちらこそ……」
幻のディルドの主は居た堪れない様子で耳を赤くして、先を急いでいる、イチモツと性格の不一致をなんだか気の毒に思う。
本来はとても初心で真面目なんだろうに完全に悪い大人に翻弄されているような、それに乗っかっている私も大概なのだけど……
その時、多くの男達が厳重な警備の中で連れだって歩かされている異様な行列に気付いた私は眉を寄せた。
重々しい雰囲気に何故だか胸がバクバクと苦しくなる。
「ケイツ様、……あれはっ?」
そう言った瞬間、ケイツ様があからさまにしまった、という表情をした。どうやら私には見せたくはなかった光景なのだろう。
「行きましょう、ひより」
だけど私は足を止めた。
「待って、あの人達は、どこに連れて行かれるのですか?罪を犯した人達ですか?」
多くの青年達のほとんどが罪を犯した犯人のように手枷をつけられていて痛々しい。
真剣な顔で詰め寄る私に、ケイツ様は諦めたように溜息をついた。
「そうではありません、彼らは何らかの事情で奴隷商人の手に落ちた者たちでしょう」
――奴隷?
その言葉に私は固まった。
「何も悪いことをしていないのに?」
「えぇ、旅に出て資金が底をついたり、盗賊に身ぐるみ剥がされたり、ギャンブルで負けたり」
「そ、そんな事で……」
ケイツ様は再び溜息をついた。
「よくあることです、ここに連れて来られた者達は、比較的若くて、売り物になると見なされた男達です」
その言葉に私は眉を寄せた。
――それってもしかして
「買い手がつけばディルドや男娼館、つかなければ強制労働といったところです」
「そ、そんな……」
その時、列の一部から騒然とした声が聞こえてきた。
美しい緋色の髪をした男が警備を振り切って必死に逃げようとしているようだ。
「いやだ、離せよ、女のディルドになるなんて、俺には無理、まっぴら御免なんだ!せめて、最初から強制労働に回してくれよ」
「ふざけるな、もう出品リストは出来上がってるんだ、今更逃げられねぇよ、諦めな!」
「やめろぉ!離してくれ、頼むから」
「お前さん、男前だし、何たっていいモノ持ってるんだから、運がよけりゃ、俺達よりいい暮らしができるかもしれねえぞ?」
「ははっ、違いねえ!!」
下品な様子で笑い合う男達。
「やめろ、嫌だ、絶対嫌だ、女に使われるなんて死んだ方がマシなんだよ!」
「あの人……」
――――助けなきゃ
そう思った、だって、あの人はきっと……
「ひより?」
「……ケイツ様、私、お金って持ってるんでしょうか?」
「それはもちろん、聖女として生活維持費と娯楽費は不自由なくと毎月、……ひより、まさか」
ケイツ様ははっとして信じられない、とばかりに固まった。
「あの緋色の髪の人を、屋敷に招きたいです、でないと……」
――あの人は死んでしまうかもしれない
「ひ、ひより……」
ケイツ様は私の希望に驚いたのか絶句している。
「お願いします、どうかお願いします、ケイツ様!」
私は真剣にケイツ様に懇願した。
「っ……、わかりました、ひより、それが貴女の希望なら、なんとかしてみよう」
私はその時、ケイツ様の目許に剣呑なものが宿ったことに気づかなかった。
結局身元を隠したままではなかなか話をつけられなかった私達は、緋色の髪の青年をオークションで多額の金銭を積んで競り落とす形になった。
「聞いてもいいですか、どうして彼を?」
「――どうしても、無理を言ってごめんなさい」
「――そう」
ケイツ様はそれ以上追求はしなかった。
私がその青年をどうしても助けたかった理由。
それはひとりの幼馴染にその面影が重なって仕方がなかったからだ。
その幼馴染は、いわゆるゲイで、女性的な目線で男性に恋愛感情を抱くタイプだった。
平たく言えば、カミングアウトしていないオネエだ。
私とその幼馴染の男の子は姉妹のようにとても仲良しだった。
でも大学在学中のある日、彼は突然、行方知れずとなった。
私を含めた数人の友人や家族に「ごめん」とメッセージが入っていたことに後から気づいた私達は懸命に彼を探したが、見つけ出すことは出来なかった。
そして、ひと月が経った頃、彼の持ち物のいくつかは、海岸に打ち上げられていた事がわかった。
恐らくは自殺だろうと、口にはせずとも誰しもがその可能性を感じ取った。
そして、私は今も、彼が本当に死んだのか、もしそうなら、どういう経緯で死を選んだのかわからずにいる、本当に酷い友人だ。
まだ十代の頃、二人で冗談を言い合っていたのを思い出す度に遣り切れない気持ちになる。
『もし、このまま、三十歳になって、お互い世の中に絶望してたら、偽装結婚でもして気楽に暮らそうか』
そんなことを言いながら、笑っていた。
でも、日本で三十歳を迎えるカウントダウンに、彼は付き合ってはくれなかった。
予想通り、私は世の中に絶望だってしていたというのに……
だけど、それはお互い様だ。
私もまた、恐らくは彼の一番寂しい瞬間の相談相手にはなれなかったのだから。
―――きっと寂しかったよね
わたしも、寂しかったよ、ごめんね
そんな約束の罪滅ぼしではないけれど、私はあの状況を放ってはおけなかったのだ。
特にこの世界では…
そうして緋色の髪の青年は数日後、全ての手続きを終えて警護つきの馬車で私が住む館に送られてきた。
「ようこそ、ゼバというのね、私はひよりよ」
私はケイツ様を含め、全ての人払いをして、戸惑う彼と二人きりで向き合った。
「な、なんだよ、お、俺は聖女と言えど、女とは寝ないからな!絶対、ぜーったい、寝ないからな!!」
まるで威嚇するネコのような態度がかつての幼馴染の威勢の良さと重なり私はおかしくなって吹き出した。
「ふふっ、寝ないんじゃなくて、寝れないんでしょ!」
そう軽口を言って笑う私を、ゼバと名乗る青年は毒気を抜かれたようにみつめた。
「――おまえ、俺のこと、まさか、なんでわかった?」
「わかるよ、知り合いによく似たタイプがいるから、それにこの国は同性愛者は宗教的に破門になって、人権を失ってとても生きていけないところだと聞いたから……」
「それじゃ、……それを知ってて、こんな俺なんかを助けてくれたのか?」
「私のお金とは言えないから、私が助けたのかはわからないけどね、取り敢えず湯を浴びて疲れを癒やしてね、あっ、そうだわ、きっと回復魔法が効くと思うから、傷があったら見せにきて、先に部屋に案内するから」
「……こ、ここに、しばらく居てもいいっていうのか?」
「あー、出来たらね、そうしてくれた方がお金使ってしまった言い訳が必要な立場としては有難いかな」
「マジか、聖女さん、あんたいい奴だな……」
「ははっ、ひより、でいいよ、なんかゼバに聖女さま、なんて言われたら知り合いを思い出してこの辺りが痒くなっちゃうから、お友達になろう!」
「なる、なるさ!なぁ、ひより、お前、聖女って事は、アレの主人って本当か?副騎士団長のケイツ様だよ」
「あっ、う、うん、でも、主人って表現は、その、何というか違うと思ってて、第一モノみたいでケイツ様に失礼でしょ?」
「は?女王陛下から賜った最上級ディルドだろ!もしかして使ってねえの?くうぅ、もったいねー、宝の持ち腐れだろ、使わないなら俺に貸してよ」
その言葉に私は目を見開いた。
「だ、ダメ、絶対それだけはダメだから!!」
「そっかぁ、残念だな、幻の生の○○ポ、今、折角一つ屋根の下にいるのになぁ!!使わねーとかマジ勿体ねえ!」
「もう!下品な事ばっかり言わない」
「あははっ!まぁ、いいや聖女のひより、ありがとな、じゃ、これからよろしくって事で……」
そう言って差し出された手を私は握り返した。
こうして我が家にゼバが加わった。
それに伴い、堅苦しかった屋敷の雰囲気も少し変わった、というか下品にはなった。
これはもう、仕方ないよね……
だけど、その影響もあってか、この頃、ケイツ様が妙に静かで私は戸惑っていた。
表情が読みづらくて、無理に笑っているように見えるのだ。
もともと無駄話するタイプではないけど、沈んだ様子が気にかかる。
もしかして、なにか怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
「ケイツ様、今からお仕事ですか?」
「……あぁ、君は、今日は何をして過ごすの?」
「今日は、ゼバの服を見に街に出かけようと思ってて」
そう言った瞬間ケイツ様は険しい顔をした。
「……ダメだ!」
「え?」
「――あっ、街は、その、危ないから」
「大丈夫ですよ、いざとなったらちゃんと戦えますから……」
「っ、それはそうかもしれないが……」
忘れられがちだが、私は戦闘目的で召喚された聖女だと言われている。
「ケイツ様が好きな紅茶のクッキーもお土産に買って帰りますから」
そう言った瞬間、手首を掴まれた。
「いらない、そんなものいらない」
「……ケイツ様?」
「だから、ひより、もっと自分を大事にしなきゃダメだ……」
その瞳がいつにも増して真剣で私は戸惑った。
「ケイツ様、それってどういう?」
「はっ、すまない、もう私は行かなければならないけど、長時間はダメだよ、日中は自室に鍵をかけるか、広間で皆と過ごして……」
「は、はい、ご心配なく……」
「きっとだよ?」
「…………おかしなケイツ様」
私は意味がわからず、ケイツ様を見送った。
すると、階段から飄々とした声がかかる。
「ありゃ、随分苛立ってんね、だから、早く俺に紹介してくれたらいいのに」
そう言ってニヤニヤするゼバを睨みつける。
「やだよ、ゼバ、絶対にケイツ様にセクハラするもん!二人は接触禁止なの!!」
「そりゃ、そんなもん、するけどさ、だって幻の○ンコだぜ?」
「だから、そういうところなんだってば!!ていうか、ケイツ様をそんな下品な呼び方しないで!!」
「ははっ、異世界からきたお嬢さんはお固いねぇ!じゃ、俺は、幻の方は諦めて、現実的にイケメンムキムキ庭師さんにケーキでも持っていってアピッとこうっと!」
そう言ったと思ったらもう視界から消えている。
「え、ちょっと、待って、は?はぁぁぁ??」
「逞しいな、もう……」
そんな姿を見て思う。
――この国の女達(オネエ含む)は性欲に支配されている
私は某テレビ宣伝を思い出し、心のなかでそんなことをカタコトで呟いてみた。
「それにしても、困るよね……」
ゼバのこんなセクハラ発言が、もしかしたらケイツ様の耳に入っているのではと私は気が気でなかった。ケイツ様の最近の様子はやはり気になる。
「嫌な思いをさせていたら、申し訳ないな……」
聞きたいけど、聞きづらいし、聞けずにいた。
ゼバを迎え入れてから、色々と忙しくて、というか好色の滲んだ煩い視線がどうも気になって以前のようにケイツ様と眠っていない。
本当は、許されるなら一緒に眠りたい。
――ケイツ様の香りがする
ベッドに顔を押し当て瞳を閉じる。
あの数日間の閨でのあれこれが思い出されて、身体が熱る。人のことなんて言えやしない。
でも、それくらいにケイツ様は煽情的で魅力を持った人なのだから仕方がない。
――だけど
こうなってくるとタイミングがなかなか難しくもある。
元々ケイツ様は義務として私と添い寝してくれているだけなのだろうし、それに私が過ぎた期待をしてきただけで、もうこれ以上は望みようがないのだ……
――これ以上?
「ダ、ダメだよ、私、今、何考えてた?これじゃ、ゼバのこと言えなくなっちゃう――」
◇◇
「ちょっと、今、なんて……?」
「だから、頼むよ、滅茶苦茶痛ってーんだって!」
「だからって何で私がそんな場所をって、待って!いくらなんでも展開が早過ぎるでしょ!?」
「てへっ♪」
私は驚きと怒りに震えていた、いや、呆れていた。
目の前の無節操男ゼバは、私の前を去ったあれからたったの数時間で、御目当ての庭師を籠絡してどこかでコトに及び、激しい攻防で尻穴を痛めたから、それを今度は私に治療しろ、と迫っているのだ。
――マイペース過ぎでしょ?
「アイツもご無沙汰だったみたいでよう、もう滅茶苦茶するから、俺もつい調子に乗ったら、もう痛いのなんのって、そしたらパッと閃いたんだ、『そういえば俺には聖女いるじゃーんって!無敵じゃん』って、しかも、ひよりは元の世界でもそういう仕事してたっていうし」
――いや、どういう仕事だよ?
「いや、そういう問題じゃ……」
「なぁ、もう小言はいいだろー、辛いんだよぉ、助けてくれよ、聖女さまぁ」
私は、ため息をついた。
「もう、仕方ないなぁ、ちゃんと自分のこと大事にしなきゃダメなんだからね」
「おうっ!任せとけ!!」
――絶対、わかってないよね
「じゃ、浴室でまず身を清めて、それから治療するから……」
私は渋々と立ち上がる。
「サンキュー、ひより、愛してる、心の友よ……」
「もう、調子良すぎ!」
そんなこんなで、ゼバには温水で身を清めてもらい、患部を見て、無茶振りに呆れながら軟膏を塗った。
「痛いよ、ひより……」
「これくらい我慢しなさいよ、もっとすごいことしてきたくせに……」
その後の治癒魔法も終了という段階になって、突然ドタドタという足音と共に浴室の扉が激しく開かれた。
扉から現れたのは、顔色を失ったケイツ様その人だった。ただその腕には物騒な剣が握りしめられて、鎧よりも重々しい怒りのオーラが漂っている。
――な、なに、どうしたの?
「ケ、ケイツ様、一体どうされたのですか?王宮でまた何かが起こったとか?」
私のそんな言葉は無視され、ケイツ様は一点を凝視していた。その先には座ったゼバ、……の勃ち上がりかけたイチモツがあった。
その中途半端なイチモツを瞬時に視殺出来そうなほど、睨みつけたケイツ様は、そのまま何も言わずに私の手首を強く掴んで歩き出した。
その後、睨まれただけで、完勃ちになったそれを見てゼバが、「アイツマジすげぇ!!」と喜んでいたことは誰も知りようがない。
その間、最初の数日間は初めての時と同じように、口淫から入り、繋がろうと試みるも上手くいかない日が続いていた。
そしてここ数日は、一緒にいることで反応してくれるケイツ様に口で奉仕して共に眠る日が続いている。 繋がれないことにケイツ様が罪悪感を抱いているのが伝わってくるだけに、ケイツ様のメンタル面に負担をかけたくはなかったのだ。
ケイツ様は、未だに性交時に私に自ら触れようとはしない。ケイツ様曰く、それはまるで呪いのような道徳観で植え付けられたような概念だそうだ。
ディルドとは意思のないものである、そうあるべき事が恭順の証なのだという価値観が思った以上にこの国では根強く浸透しているようだ。
――なんておかしな価値観なのだろう
心どころか、性器と本体すらも切り離された快楽を楽しむこの国の人々。そんな話を考えると、ケイツ様が今も義務としての行為をしているなら、やはりどうしても寂しくはある。
そうなのだけど、一方で、あの水色の瞳を柔らかく細めたケイツ様に、事後に少しだけ優しく労られるとそれだけで全身が満たされて、私はなんだか幸せな気持ちになるのだ。
最初は不遜の騎士様に似てる、なんて思っていたのが今では嘘のようで、ケイツ様はただケイツ様で、思慮深く、他の文化にも寛容で、しっかりしていて頼りになるかと思えば、時に可愛らしくて純粋で、心が温かくなる。
だけど、騎士様に可愛い、まして護りたい、なんて面と向かってはとても言えない。
私は徐々に自分の気持ちを持て余し始めていた。
だからこそ、誰にでもなく自分に祈る。
――どうか、これ以上欲張りになりませんように
ここは、私がいた国ではない。
そこに不毛な感情を持って訪れたのはこの私なのだ。だから、ケイツ様の負担には極力なりたくないと思うのだ。
そして数日後、その日は祭りで街が賑わうと聞いた私は、執事さんに街に出てみたいと強請った。
私はまだこの国のことを十分知っているとは言えない。ケイツ様はその時、酷く困った顔をして、結局は護衛も兼ねて私に付き合ってくれることになった。
街に到着した私にはようやくその理由がわかった。
――この街はやはり、異質だ
街の出店のあちこちには、まるで野菜や装飾品の店と同じように、あの男性器型の大人の玩具であるディルドが売っているのだ。
――真っ昼間だよ?
子供だって普通に行き来してるのに、飛び交う会話に他人事ながらハラハラする。
「ねぇ、あんた、これは誰のモデルだい?」
「これは、八十年前の英雄、ピカタのイチモツさ!」
「はっ、八十年前なんて、ほんとだろうね、嘘言ったら役人に突き出してやるんだから」
「ははっ、勘弁してよ、嘘じゃないから!」
「じゃあ、二つ包んでおくれ!」
「毎度、こっちの生産終了品、一個おまけしとくから使ってみてよ!」
「おや、ありがとう、気が利くねぇ、また来るよ」
――ディルド屋、だよね?
私は引き攣ったまま、そんな街の光景を見つめていた。
「ケイツ様、この国って一体……」
ケイツ様は私の言わんとするところを理解した上で、やや気まずそうに教えてくれる。
「性産業が盛んな国だからね、だが、それで潤っている分、税金は安いと言われている。外国人の誘致にも成功しているしね、私にとっては日常茶飯時だが、君には見苦しいだろう、だから連れてきたくはなかったんだけどね……」
「でも、それ以外の店もちゃんとあるし、皆結構幸せそうだし……」
ここには、ここの文化があるのだ。
ただ悪く言うのは他文化への価値観の押し付けになってしまうと、私は敢えて話題を変えた。
「そうだね、皆、思い思いに生活しているから、私達も何か食べようか、ひより」
「そうですね」
私とケイツ様は仮面越しに頷き合った。
今日の装いはマント姿に仮面という、この国の貴人の御忍びスタイルだ。
互いに有名人だから顔見せは避けましょう、との執事さんの判断だ。
そしていくつものディルドの出店の前を通り過ぎた私達は今、再び微妙な空気に包まれていた。
「ケイツ副団長の仕様を探してるんだけどあるかい?どこに行ってもなくてさ」と耳にする度にケイツ様は咽せて辺りをキョロキョロする。
そしてお決まりのようにこう繰り返されている会話に顔を赤らめて頭を抱えているのだ。
「あれは、即売で、聖女様に所有権が移ってからは製造禁止で幻のイチモツになっちまったよ、随分儲けさせて貰ってたんだけどねぇ」
「ないのかい、中古でもいいんだけどねぇ……」
「あー、そりゃ益々希望薄いよ、あれは皆、一度使ってしまったら手放さないからね」
そんな会話を聞きながら、私は疑問を口にした。
「ケイツ様、も、もしかして、あの時、女王様が言ってらした金と銀って……」
王室御用達、豪華ケイツ副騎士団長仕様ディルド(幻の逸品)だったのだろうか。
そう思うと今更ながら下品な興味ではあるが、ソワソワしてしまう。
「――何も聞かないでください」
「あー、うん、ご、ごめんなさい……」
「いえ、こちらこそ……」
幻のディルドの主は居た堪れない様子で耳を赤くして、先を急いでいる、イチモツと性格の不一致をなんだか気の毒に思う。
本来はとても初心で真面目なんだろうに完全に悪い大人に翻弄されているような、それに乗っかっている私も大概なのだけど……
その時、多くの男達が厳重な警備の中で連れだって歩かされている異様な行列に気付いた私は眉を寄せた。
重々しい雰囲気に何故だか胸がバクバクと苦しくなる。
「ケイツ様、……あれはっ?」
そう言った瞬間、ケイツ様があからさまにしまった、という表情をした。どうやら私には見せたくはなかった光景なのだろう。
「行きましょう、ひより」
だけど私は足を止めた。
「待って、あの人達は、どこに連れて行かれるのですか?罪を犯した人達ですか?」
多くの青年達のほとんどが罪を犯した犯人のように手枷をつけられていて痛々しい。
真剣な顔で詰め寄る私に、ケイツ様は諦めたように溜息をついた。
「そうではありません、彼らは何らかの事情で奴隷商人の手に落ちた者たちでしょう」
――奴隷?
その言葉に私は固まった。
「何も悪いことをしていないのに?」
「えぇ、旅に出て資金が底をついたり、盗賊に身ぐるみ剥がされたり、ギャンブルで負けたり」
「そ、そんな事で……」
ケイツ様は再び溜息をついた。
「よくあることです、ここに連れて来られた者達は、比較的若くて、売り物になると見なされた男達です」
その言葉に私は眉を寄せた。
――それってもしかして
「買い手がつけばディルドや男娼館、つかなければ強制労働といったところです」
「そ、そんな……」
その時、列の一部から騒然とした声が聞こえてきた。
美しい緋色の髪をした男が警備を振り切って必死に逃げようとしているようだ。
「いやだ、離せよ、女のディルドになるなんて、俺には無理、まっぴら御免なんだ!せめて、最初から強制労働に回してくれよ」
「ふざけるな、もう出品リストは出来上がってるんだ、今更逃げられねぇよ、諦めな!」
「やめろぉ!離してくれ、頼むから」
「お前さん、男前だし、何たっていいモノ持ってるんだから、運がよけりゃ、俺達よりいい暮らしができるかもしれねえぞ?」
「ははっ、違いねえ!!」
下品な様子で笑い合う男達。
「やめろ、嫌だ、絶対嫌だ、女に使われるなんて死んだ方がマシなんだよ!」
「あの人……」
――――助けなきゃ
そう思った、だって、あの人はきっと……
「ひより?」
「……ケイツ様、私、お金って持ってるんでしょうか?」
「それはもちろん、聖女として生活維持費と娯楽費は不自由なくと毎月、……ひより、まさか」
ケイツ様ははっとして信じられない、とばかりに固まった。
「あの緋色の髪の人を、屋敷に招きたいです、でないと……」
――あの人は死んでしまうかもしれない
「ひ、ひより……」
ケイツ様は私の希望に驚いたのか絶句している。
「お願いします、どうかお願いします、ケイツ様!」
私は真剣にケイツ様に懇願した。
「っ……、わかりました、ひより、それが貴女の希望なら、なんとかしてみよう」
私はその時、ケイツ様の目許に剣呑なものが宿ったことに気づかなかった。
結局身元を隠したままではなかなか話をつけられなかった私達は、緋色の髪の青年をオークションで多額の金銭を積んで競り落とす形になった。
「聞いてもいいですか、どうして彼を?」
「――どうしても、無理を言ってごめんなさい」
「――そう」
ケイツ様はそれ以上追求はしなかった。
私がその青年をどうしても助けたかった理由。
それはひとりの幼馴染にその面影が重なって仕方がなかったからだ。
その幼馴染は、いわゆるゲイで、女性的な目線で男性に恋愛感情を抱くタイプだった。
平たく言えば、カミングアウトしていないオネエだ。
私とその幼馴染の男の子は姉妹のようにとても仲良しだった。
でも大学在学中のある日、彼は突然、行方知れずとなった。
私を含めた数人の友人や家族に「ごめん」とメッセージが入っていたことに後から気づいた私達は懸命に彼を探したが、見つけ出すことは出来なかった。
そして、ひと月が経った頃、彼の持ち物のいくつかは、海岸に打ち上げられていた事がわかった。
恐らくは自殺だろうと、口にはせずとも誰しもがその可能性を感じ取った。
そして、私は今も、彼が本当に死んだのか、もしそうなら、どういう経緯で死を選んだのかわからずにいる、本当に酷い友人だ。
まだ十代の頃、二人で冗談を言い合っていたのを思い出す度に遣り切れない気持ちになる。
『もし、このまま、三十歳になって、お互い世の中に絶望してたら、偽装結婚でもして気楽に暮らそうか』
そんなことを言いながら、笑っていた。
でも、日本で三十歳を迎えるカウントダウンに、彼は付き合ってはくれなかった。
予想通り、私は世の中に絶望だってしていたというのに……
だけど、それはお互い様だ。
私もまた、恐らくは彼の一番寂しい瞬間の相談相手にはなれなかったのだから。
―――きっと寂しかったよね
わたしも、寂しかったよ、ごめんね
そんな約束の罪滅ぼしではないけれど、私はあの状況を放ってはおけなかったのだ。
特にこの世界では…
そうして緋色の髪の青年は数日後、全ての手続きを終えて警護つきの馬車で私が住む館に送られてきた。
「ようこそ、ゼバというのね、私はひよりよ」
私はケイツ様を含め、全ての人払いをして、戸惑う彼と二人きりで向き合った。
「な、なんだよ、お、俺は聖女と言えど、女とは寝ないからな!絶対、ぜーったい、寝ないからな!!」
まるで威嚇するネコのような態度がかつての幼馴染の威勢の良さと重なり私はおかしくなって吹き出した。
「ふふっ、寝ないんじゃなくて、寝れないんでしょ!」
そう軽口を言って笑う私を、ゼバと名乗る青年は毒気を抜かれたようにみつめた。
「――おまえ、俺のこと、まさか、なんでわかった?」
「わかるよ、知り合いによく似たタイプがいるから、それにこの国は同性愛者は宗教的に破門になって、人権を失ってとても生きていけないところだと聞いたから……」
「それじゃ、……それを知ってて、こんな俺なんかを助けてくれたのか?」
「私のお金とは言えないから、私が助けたのかはわからないけどね、取り敢えず湯を浴びて疲れを癒やしてね、あっ、そうだわ、きっと回復魔法が効くと思うから、傷があったら見せにきて、先に部屋に案内するから」
「……こ、ここに、しばらく居てもいいっていうのか?」
「あー、出来たらね、そうしてくれた方がお金使ってしまった言い訳が必要な立場としては有難いかな」
「マジか、聖女さん、あんたいい奴だな……」
「ははっ、ひより、でいいよ、なんかゼバに聖女さま、なんて言われたら知り合いを思い出してこの辺りが痒くなっちゃうから、お友達になろう!」
「なる、なるさ!なぁ、ひより、お前、聖女って事は、アレの主人って本当か?副騎士団長のケイツ様だよ」
「あっ、う、うん、でも、主人って表現は、その、何というか違うと思ってて、第一モノみたいでケイツ様に失礼でしょ?」
「は?女王陛下から賜った最上級ディルドだろ!もしかして使ってねえの?くうぅ、もったいねー、宝の持ち腐れだろ、使わないなら俺に貸してよ」
その言葉に私は目を見開いた。
「だ、ダメ、絶対それだけはダメだから!!」
「そっかぁ、残念だな、幻の生の○○ポ、今、折角一つ屋根の下にいるのになぁ!!使わねーとかマジ勿体ねえ!」
「もう!下品な事ばっかり言わない」
「あははっ!まぁ、いいや聖女のひより、ありがとな、じゃ、これからよろしくって事で……」
そう言って差し出された手を私は握り返した。
こうして我が家にゼバが加わった。
それに伴い、堅苦しかった屋敷の雰囲気も少し変わった、というか下品にはなった。
これはもう、仕方ないよね……
だけど、その影響もあってか、この頃、ケイツ様が妙に静かで私は戸惑っていた。
表情が読みづらくて、無理に笑っているように見えるのだ。
もともと無駄話するタイプではないけど、沈んだ様子が気にかかる。
もしかして、なにか怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
「ケイツ様、今からお仕事ですか?」
「……あぁ、君は、今日は何をして過ごすの?」
「今日は、ゼバの服を見に街に出かけようと思ってて」
そう言った瞬間ケイツ様は険しい顔をした。
「……ダメだ!」
「え?」
「――あっ、街は、その、危ないから」
「大丈夫ですよ、いざとなったらちゃんと戦えますから……」
「っ、それはそうかもしれないが……」
忘れられがちだが、私は戦闘目的で召喚された聖女だと言われている。
「ケイツ様が好きな紅茶のクッキーもお土産に買って帰りますから」
そう言った瞬間、手首を掴まれた。
「いらない、そんなものいらない」
「……ケイツ様?」
「だから、ひより、もっと自分を大事にしなきゃダメだ……」
その瞳がいつにも増して真剣で私は戸惑った。
「ケイツ様、それってどういう?」
「はっ、すまない、もう私は行かなければならないけど、長時間はダメだよ、日中は自室に鍵をかけるか、広間で皆と過ごして……」
「は、はい、ご心配なく……」
「きっとだよ?」
「…………おかしなケイツ様」
私は意味がわからず、ケイツ様を見送った。
すると、階段から飄々とした声がかかる。
「ありゃ、随分苛立ってんね、だから、早く俺に紹介してくれたらいいのに」
そう言ってニヤニヤするゼバを睨みつける。
「やだよ、ゼバ、絶対にケイツ様にセクハラするもん!二人は接触禁止なの!!」
「そりゃ、そんなもん、するけどさ、だって幻の○ンコだぜ?」
「だから、そういうところなんだってば!!ていうか、ケイツ様をそんな下品な呼び方しないで!!」
「ははっ、異世界からきたお嬢さんはお固いねぇ!じゃ、俺は、幻の方は諦めて、現実的にイケメンムキムキ庭師さんにケーキでも持っていってアピッとこうっと!」
そう言ったと思ったらもう視界から消えている。
「え、ちょっと、待って、は?はぁぁぁ??」
「逞しいな、もう……」
そんな姿を見て思う。
――この国の女達(オネエ含む)は性欲に支配されている
私は某テレビ宣伝を思い出し、心のなかでそんなことをカタコトで呟いてみた。
「それにしても、困るよね……」
ゼバのこんなセクハラ発言が、もしかしたらケイツ様の耳に入っているのではと私は気が気でなかった。ケイツ様の最近の様子はやはり気になる。
「嫌な思いをさせていたら、申し訳ないな……」
聞きたいけど、聞きづらいし、聞けずにいた。
ゼバを迎え入れてから、色々と忙しくて、というか好色の滲んだ煩い視線がどうも気になって以前のようにケイツ様と眠っていない。
本当は、許されるなら一緒に眠りたい。
――ケイツ様の香りがする
ベッドに顔を押し当て瞳を閉じる。
あの数日間の閨でのあれこれが思い出されて、身体が熱る。人のことなんて言えやしない。
でも、それくらいにケイツ様は煽情的で魅力を持った人なのだから仕方がない。
――だけど
こうなってくるとタイミングがなかなか難しくもある。
元々ケイツ様は義務として私と添い寝してくれているだけなのだろうし、それに私が過ぎた期待をしてきただけで、もうこれ以上は望みようがないのだ……
――これ以上?
「ダ、ダメだよ、私、今、何考えてた?これじゃ、ゼバのこと言えなくなっちゃう――」
◇◇
「ちょっと、今、なんて……?」
「だから、頼むよ、滅茶苦茶痛ってーんだって!」
「だからって何で私がそんな場所をって、待って!いくらなんでも展開が早過ぎるでしょ!?」
「てへっ♪」
私は驚きと怒りに震えていた、いや、呆れていた。
目の前の無節操男ゼバは、私の前を去ったあれからたったの数時間で、御目当ての庭師を籠絡してどこかでコトに及び、激しい攻防で尻穴を痛めたから、それを今度は私に治療しろ、と迫っているのだ。
――マイペース過ぎでしょ?
「アイツもご無沙汰だったみたいでよう、もう滅茶苦茶するから、俺もつい調子に乗ったら、もう痛いのなんのって、そしたらパッと閃いたんだ、『そういえば俺には聖女いるじゃーんって!無敵じゃん』って、しかも、ひよりは元の世界でもそういう仕事してたっていうし」
――いや、どういう仕事だよ?
「いや、そういう問題じゃ……」
「なぁ、もう小言はいいだろー、辛いんだよぉ、助けてくれよ、聖女さまぁ」
私は、ため息をついた。
「もう、仕方ないなぁ、ちゃんと自分のこと大事にしなきゃダメなんだからね」
「おうっ!任せとけ!!」
――絶対、わかってないよね
「じゃ、浴室でまず身を清めて、それから治療するから……」
私は渋々と立ち上がる。
「サンキュー、ひより、愛してる、心の友よ……」
「もう、調子良すぎ!」
そんなこんなで、ゼバには温水で身を清めてもらい、患部を見て、無茶振りに呆れながら軟膏を塗った。
「痛いよ、ひより……」
「これくらい我慢しなさいよ、もっとすごいことしてきたくせに……」
その後の治癒魔法も終了という段階になって、突然ドタドタという足音と共に浴室の扉が激しく開かれた。
扉から現れたのは、顔色を失ったケイツ様その人だった。ただその腕には物騒な剣が握りしめられて、鎧よりも重々しい怒りのオーラが漂っている。
――な、なに、どうしたの?
「ケ、ケイツ様、一体どうされたのですか?王宮でまた何かが起こったとか?」
私のそんな言葉は無視され、ケイツ様は一点を凝視していた。その先には座ったゼバ、……の勃ち上がりかけたイチモツがあった。
その中途半端なイチモツを瞬時に視殺出来そうなほど、睨みつけたケイツ様は、そのまま何も言わずに私の手首を強く掴んで歩き出した。
その後、睨まれただけで、完勃ちになったそれを見てゼバが、「アイツマジすげぇ!!」と喜んでいたことは誰も知りようがない。
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