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第39話 1535年 5歳 よし、甘粕景持に会いに行くぞ
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桝形城へ向かう。
メンバーは前回と同じだ。
城門の前で、甘粕景持が待っていた。
甘粕景持
「若様、よくぞいらっしゃいました。歓迎いたします」
そう言われ、城内へ通される。
俺
「募兵で五千の部隊を組織する。
侍に限らず、武芸大会で精鋭を集めたい。
力を貸してほしい」
甘粕景持
「承知いたしました。
……一つ、お願いがございます」
俺
「なんだ?」
甘粕景持
「若様の西洋帆船に、乗せていただけませんか」
俺
「甘粕殿、船が好きなのか?」
甘粕景持
「山育ちなもので、海に憧れがありまして。
西洋帆船をお持ちと聞き、どうにも気になりましてな」
――船が好きな人間に、悪い奴はいない。
龍馬も、きっとそう言う。
俺
「よし。今から乗りに行こう。ついてこい」
俺たちは越後海軍操練所へ向かった。
西洋帆船を体系的に学ぶための学校だ。
卒業後は高給で雇われるとあって、越後中から志願者が集まっている。
生徒は二百六十三人。
すでに卒業生も出ており、乗組員に困ることはない。
他国からも希望者は来るが、
秘密保持のため断っている。
俺
「こちらは甘粕景持だ。よく見知りおけ。
練習船は空いているか?」
教官
「空いております。若様も?」
俺
「そうだ。この甘粕殿と一緒にな」
途端に、
「俺も!」「私も!」
と同乗希望者が殺到する。
それを見て、守役の安田が誇らしげだ。
安田
「うちの若様は人気者だろう!」
俺
「安田、お前は船酔いするから留守番だ」
安田
「私は若様に、どこまでも――」
……しょうがない。
俺
「水斗、安田の介抱用の水を持ち込んでおけ」
出航。
風を掴み、舟は滑るように進む。
舟は風を掴み、静かに沖へ出た。
帆が張り、船体がきしむ。
甘粕景持は、しばらく無言で海を眺めていたが、
やがてぽつりと口を開いた。
甘粕景持
「若様……」
俺
「どうした?」
甘粕景持
「西洋帆船は、和船より沈まぬと、皆が申しております。
ですが……船というものは、結局は海次第。
なぜ、そこまで差が出るのでしょうか」
いい質問だ。
甘粕は、噂ではなく“理由”を聞きにきている。
俺
「まず前提だがな」
俺
「和船が劣っているわけじゃない。
昔からの徒弟で育った船乗りが多く、
船の癖も、海の怖さも知っている」
俺
「だから、和船でも――
十のうち七は、ちゃんと戻ってくる」
甘粕景持
「……七割」
俺
「十分立派だ。
だがな」
俺は帆を見上げ、続ける。
俺
「西洋帆船は、船そのものの性能が違う。
波に強く、風を選ばず、船体も頑丈だ」
甘粕景持
「やはり、船の差ですか」
俺
「それ“だけ”じゃない」
甘粕がこちらを見る。
俺
「越後海軍操練所では、
操船と一緒に応急修理まで叩き込んでいる」
甘粕景持
「応急修理……?」
俺
「帆が裂けたらどうする。
索が切れたらどう繋ぐ。
船底から水が入ったら、どう止める」
俺
「壊れない船を作るんじゃない。
壊れても、戻れる船にする」
甘粕景持は、はっとしたように息を呑んだ。
俺
「だからだ」
俺
「西洋帆船は――
十に九以上は、戻る」
俺
「甘粕聞いてくれ、俺は舟で天下を取りたい。
明から仕入れているのは、今は絹や陶磁器だが……
いずれは越後で作り、西洋に売る」
俺
「そうなれば、西洋の連中が頭を下げに来る。
富も、兵も、兵糧も集まる。
天下は――取れる」
俺
「甘粕景持。俺について来い。
舟で天下を語ろうぞ」
甘粕景持
「……承知いたしました。
ずっと若様にお仕えしたいと思っておりました」
――感動の瞬間。
だが。
「オエェ……」
「安田様、大丈夫ですか!」
……台無しだ。
帰港すると、港で声をかけられた。
風馬
「若様。こちらへ」
数人の船主たちだ。
船主
「若様、西洋帆船を増やされるとか。
我々の仕事を奪うおつもりで?」
甘粕景持が身構える。
俺
「敵対したいのか。
それとも、俺と仕事がしたいのか。どっちだ」
船主
「仕事を回していただけるなら……。
敵対など考えておりません!」
俺
「なら話は簡単だ。
この港と佐渡は、これから人も荷も増える。
材料の買い出しもある。
お前たちの舟が要る」
船主
「……ありがてぇ!」
酒を振る舞い、機嫌よく帰した。
対応は風馬に任せる。
こういう場は、あいつが一番だ。
俺
「甘粕景持。
越後海軍操練所、西洋帆船、帆船工場――
これらをまとめて海援隊と呼ぶ」
俺
「その面倒を見てくれ。
細かいことは親方たちがやる。
俺は留守も多い。助けてほしい」
甘粕景持
「……至らぬ身ですが、承知いたしました」
信頼は、十分だ。
帰り道。
安田
「若様……申し訳ございませんでした」
俺
「気にするな」
安田
「次は、眠くなる術をかけていただければ……」
俺
「最初から船に乗らなければ、もっと酔わん」
一同、笑う。
こうして、
甘粕景持は――
俺の海援隊の一員となった。
メンバーは前回と同じだ。
城門の前で、甘粕景持が待っていた。
甘粕景持
「若様、よくぞいらっしゃいました。歓迎いたします」
そう言われ、城内へ通される。
俺
「募兵で五千の部隊を組織する。
侍に限らず、武芸大会で精鋭を集めたい。
力を貸してほしい」
甘粕景持
「承知いたしました。
……一つ、お願いがございます」
俺
「なんだ?」
甘粕景持
「若様の西洋帆船に、乗せていただけませんか」
俺
「甘粕殿、船が好きなのか?」
甘粕景持
「山育ちなもので、海に憧れがありまして。
西洋帆船をお持ちと聞き、どうにも気になりましてな」
――船が好きな人間に、悪い奴はいない。
龍馬も、きっとそう言う。
俺
「よし。今から乗りに行こう。ついてこい」
俺たちは越後海軍操練所へ向かった。
西洋帆船を体系的に学ぶための学校だ。
卒業後は高給で雇われるとあって、越後中から志願者が集まっている。
生徒は二百六十三人。
すでに卒業生も出ており、乗組員に困ることはない。
他国からも希望者は来るが、
秘密保持のため断っている。
俺
「こちらは甘粕景持だ。よく見知りおけ。
練習船は空いているか?」
教官
「空いております。若様も?」
俺
「そうだ。この甘粕殿と一緒にな」
途端に、
「俺も!」「私も!」
と同乗希望者が殺到する。
それを見て、守役の安田が誇らしげだ。
安田
「うちの若様は人気者だろう!」
俺
「安田、お前は船酔いするから留守番だ」
安田
「私は若様に、どこまでも――」
……しょうがない。
俺
「水斗、安田の介抱用の水を持ち込んでおけ」
出航。
風を掴み、舟は滑るように進む。
舟は風を掴み、静かに沖へ出た。
帆が張り、船体がきしむ。
甘粕景持は、しばらく無言で海を眺めていたが、
やがてぽつりと口を開いた。
甘粕景持
「若様……」
俺
「どうした?」
甘粕景持
「西洋帆船は、和船より沈まぬと、皆が申しております。
ですが……船というものは、結局は海次第。
なぜ、そこまで差が出るのでしょうか」
いい質問だ。
甘粕は、噂ではなく“理由”を聞きにきている。
俺
「まず前提だがな」
俺
「和船が劣っているわけじゃない。
昔からの徒弟で育った船乗りが多く、
船の癖も、海の怖さも知っている」
俺
「だから、和船でも――
十のうち七は、ちゃんと戻ってくる」
甘粕景持
「……七割」
俺
「十分立派だ。
だがな」
俺は帆を見上げ、続ける。
俺
「西洋帆船は、船そのものの性能が違う。
波に強く、風を選ばず、船体も頑丈だ」
甘粕景持
「やはり、船の差ですか」
俺
「それ“だけ”じゃない」
甘粕がこちらを見る。
俺
「越後海軍操練所では、
操船と一緒に応急修理まで叩き込んでいる」
甘粕景持
「応急修理……?」
俺
「帆が裂けたらどうする。
索が切れたらどう繋ぐ。
船底から水が入ったら、どう止める」
俺
「壊れない船を作るんじゃない。
壊れても、戻れる船にする」
甘粕景持は、はっとしたように息を呑んだ。
俺
「だからだ」
俺
「西洋帆船は――
十に九以上は、戻る」
俺
「甘粕聞いてくれ、俺は舟で天下を取りたい。
明から仕入れているのは、今は絹や陶磁器だが……
いずれは越後で作り、西洋に売る」
俺
「そうなれば、西洋の連中が頭を下げに来る。
富も、兵も、兵糧も集まる。
天下は――取れる」
俺
「甘粕景持。俺について来い。
舟で天下を語ろうぞ」
甘粕景持
「……承知いたしました。
ずっと若様にお仕えしたいと思っておりました」
――感動の瞬間。
だが。
「オエェ……」
「安田様、大丈夫ですか!」
……台無しだ。
帰港すると、港で声をかけられた。
風馬
「若様。こちらへ」
数人の船主たちだ。
船主
「若様、西洋帆船を増やされるとか。
我々の仕事を奪うおつもりで?」
甘粕景持が身構える。
俺
「敵対したいのか。
それとも、俺と仕事がしたいのか。どっちだ」
船主
「仕事を回していただけるなら……。
敵対など考えておりません!」
俺
「なら話は簡単だ。
この港と佐渡は、これから人も荷も増える。
材料の買い出しもある。
お前たちの舟が要る」
船主
「……ありがてぇ!」
酒を振る舞い、機嫌よく帰した。
対応は風馬に任せる。
こういう場は、あいつが一番だ。
俺
「甘粕景持。
越後海軍操練所、西洋帆船、帆船工場――
これらをまとめて海援隊と呼ぶ」
俺
「その面倒を見てくれ。
細かいことは親方たちがやる。
俺は留守も多い。助けてほしい」
甘粕景持
「……至らぬ身ですが、承知いたしました」
信頼は、十分だ。
帰り道。
安田
「若様……申し訳ございませんでした」
俺
「気にするな」
安田
「次は、眠くなる術をかけていただければ……」
俺
「最初から船に乗らなければ、もっと酔わん」
一同、笑う。
こうして、
甘粕景持は――
俺の海援隊の一員となった。
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