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鶯音を入る
第五十七夜
しおりを挟む「…………うわ、眩しい。子供の頃より日差しが凶悪化してるの、絶対気のせいじゃないでしょ……。日焼け止め、もっと厚塗りしてくれば良かったですかね?」
近くに停車中の軽自動車が反射する光をもろに受け、うぅっと呻く。
「この日傘、差してたら大体どうにかなるから、心配いらないと思う。アタシ、日焼け止め塗り忘れ、三日に一回位するけど、焼けてないよ」
咄嗟に両目を覆った私を見て、彼女は視界の半分程を遮る要領で傘を持ち替えた。
「焼け…………てないんですかね? 私、自分の焼け具合もわからないからなあ……。トーストも片面真っ黒焦げ以上で初めて『ああ、焼きすぎた』って思うタイプなんで。……まあ、紅さん本人が焼けてないって言うなら、焼けてないんだと思います。多分、恐らく……きっと」
視界に入った腕は確かに白――――いや、彼女の肌は元から私より健康的な色をしていたので、正直な所判断に困った。
「信用してなさそう」
やや上を向いて笑う横顔は、顎がシャープで、しゃくれまではいかないまでもストンとしてはおらずアクセントがあって、もし生まれて来る前に選べるなら、迷わずそうしただろうと思う位には私好みのバランスをしていた。
「絶対焼けない時がある芸能人オススメなら、信頼出来ますけど…………相合傘だしなあ……」
靴を履く時に一度離した手を繋ぎ直す勇気は、私にはなかった。
「ゴメンね。アタシも、翠みたいにスリムなら良かったんだけど、横幅取るからはみ出ちゃう。……もっとこっち、来て良いよ」
――――と言った彼女は、そうでなくとも私の方に傾いていた日傘を、私の脚以外全てが守られるように傾けた。
「いえ、そういうつもりで言った訳じゃないんですよ。貸してもらってる分際で、そんな偉そうな事言えませんし。……でも、有り難く寄らせてもらいます。そうしたら、キツい日差しからも逃げられて、紅さんにも近付けますもんね」
だが、私だって、このキツい日差しから彼女を守りたい。
彼女が持っている柄の部分より上を持ち、彼女側に傾けつつ、身を寄せた。
「二人で一つの傘に入るの、なんて言うんだっけ。名前、あったよね?」
なんと、彼女の耳には先程の呟きの最も重要な部分が届いていなかったようだ。
「相合傘、ですね」
一音一音正確に、きっちり区切って発音した。
「あ、そうだ。ありがと、翠。…………アタシ、初めてかも。相合傘」
「え、そうなんですか? 実は私も――――」
「日傘で」
「…………話、続いてたんですね?」
間が悪いうえに短気な自分を呪うべきか、良い加減、彼女が倒置法でややこしい事態を招く事に慣れるべきなのか。
燃える陽炎をぼんやり眺めつつ、ため息を一つ吐いた。
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