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鶯音を入る
第七十四夜
しおりを挟む「出来ない事……とか、私が考えてる『恋人はこうであってほしい!』っていう理想と違う事、生まれ持ったもの…………とか……。頑張れば変えられるかもしれないけど、変えたら紅さんらしくなくなる部分とか、そういうのって沢山……沢山ありますよね。だけど、そういうのを理由に謝らなくて良いんです。……まあ、今のは私が謝らせちゃったんですけど。さっき、紅さんが私に言ってくれたじゃないですか。『皆、得意も苦手もある』みたいな事。私達が優劣だと思ってるもの……というか、思い込まされてるものって、ただの違いです。ポテンシャルを発揮出来る場面が違うだけの、ただの性質なんです、きっと。直すための努力とか、変わりたいって気持ちとか…………それはそれで大切なものですけど、そのままだって良い筈ですし、私は今の紅さんが好きです。大好きです」
日傘の状態を確認した後は、話の続きに戻った。
詰め放題の野菜のように、袋を伸ばし隙間を埋めて、伝えたい事を詰め込んだ話は、過去のプレゼンにも類を見ない物凄い熱量になった。
それを抱き着かれながらされる彼女の気持ちは――少し、置き去りにしてしまっていたかもしれない。
日傘の内側は順調に熱を上げている最中だろうが、知った事か。
私の方が暑いし、熱いし、私の頬の方が熱い。
「……信じてください。私は、紅さんにあんな事を言わせたくて、謝らせたくて、ああいう言い方をした訳じゃないんです。…………ああ、でも、困りました…………。私、本当に語彙力なくて……。どう言えば、私の感じてる事が……私の感じたまま、紅さんに……感じたままというか、正しく伝わるのか、考えても……考えても考えても考えてもわかりません。…………好きなのに。今まで出会った誰より……大切にしたくて、失いたくないのに…………!」
「今のが答えじゃない? アタシには伝わった、翠の気持ち。翠の『好き』の中身でしょ、今の。……そんな風に思ってくれてたんだね、翠」
腰と頭に、それぞれ腕が回って、全身に溜まった熱が行き場を失った。
「そうです……好きです、紅さん…………。私、貴女が好き…………」
調節も出来ない自然のスポットライトを浴びて告白をした私は、勘違いも甚だしい端役だろうか。
――――立てばどこでも舞台に変わる主役であれば良いが。
「………………変な翠。アタシには、『変わらなくても良い』って言うくせに、自分は根っこのトコから、変わろうとしてる。翠だって、そのまんまで完璧なのに」
「やっぱり、変ですか……ね?」
「ん、凄く変。……でも、凄く可愛い。こんな可愛いコ、夏の日差しの下にいたらダメだと思う」
緩んだ腕から脱出を図った彼女は、甘い囁きを残し、日傘と鞄を拾いに行った。
ピアスの入った袋だけ、ちゃっかり手首に掛けていた私は、ココナッツの香りを追い掛けた。
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