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駒繋
第二夜
しおりを挟む(…………売れてないの、本当に気にしてるんだろうな。紅さん。紅さん家に初めてお邪魔した時、いわくつきとか言っちゃったのも良くなかったのかも。紅さん、タワマンのエレベーターから出て来そうな見た目すぎて、言っちゃったけど。……でも、イメージと真逆だったなんて、言い訳にもならないか。思っても、言うべきじゃなかった。…………『どんな家に住んでるか』、か。そんなもので人の価値が測れたら、楽なんだろうし、東京に住んでる人の何割かはそういう物差し持ってても不思議じゃない。良い家住んでない人は、同じ人間にすら見えないのかもしれない。けど…………。私は、そういう風には思わないな。沢山稼いでる人は凄いし、努力した結果なんだろうけど、私が凄いなとか有難いなって思う職業ほど、ろくにお金貰ってなかったりするし。保育士とか介護士とか。……そういう人達が頑張ってない訳ないし、皆頑張ってるし。絶対)
顔を上げ、周囲に視線を走らせた。
一軒家もあれば、紅さん家に負けず劣らず古ぼけたアパートもある。
(あのバーも近いし、紅さんとも出会えたし、バーにもコンビニにも『普段、どんな生活送ってるの?』って人、沢山いるし)
たまに酔っ払いすぎて誰彼構わず絡んで来る人や、大きくて凶暴な犬を連れた人とすれ違う事もあるが、色んな人がいるこの街が、私は嫌いではなかった。
「……本当ですよ。私、捨て猫みたいな可愛いもんじゃないんですからね? 捨て猫だったら、ベッドの半分占領される事はなかった筈です。伸びて伸びて…………せいぜい十分の一とか、その位ですか? それだけじゃないですよ。私がその辺捨てられてた猫なら、紅さんの懐も痛まなかったでしょうけど、私は生憎、人間ですから。一緒に生活したら、光熱費や水道代、食費だって嵩みます。自分以外の人を養うって、大変な事ですよ。頭で計算した出費と、実際に出て行ったお金、絶対同じになんてなりません。実際に出て行くお金の方が、ずっと多いです。……今の日本の夏の気候で、都会に暮らしてて、クーラー壊れてるのは確かに命も危ないかもしれません。でも、紅さんはお人好し過ぎます! 助けてもらってる私が言う事じゃないけど、お人好し過ぎて危ないです!」
「お金が掛かるオンナ、良いと思う。アタシは好き」
「どうしてですか? 大抵の人は嫌がります。……皆、顔も性格も可愛くしてる女が好きで、だけど、そこに投資してる金額を無視して、お金の掛からない女を欲しがります。初デートでファミレスに連れて行かれても喜んで、毎回割り勘当たり前、的な。でも、紅さんは違う? …………なんで? 紅さんが女だから? ……紅さんが普通じゃないから? 紅さんとそこらの男と同列に語るのは、そもそも失礼だなとは思うんですけど、考えてもわからないから、どうしてそういう考え方してるのか知りたいです」
色んな人がいるという事は、全員が善人ではないという事だ。
勿論、色んな人の中には善人もいるだろう。
しかし、悪人は善人を嗅ぎ分ける能力に長けている。
悪人にもグラデーションがあるが、自分達のようなどうしようもない悪人すら見捨てない善人をロックオンした悪人は、善人に集って、曇りなき善意を限界まで搾取しようとする。
自分を悪人側、紅さんを善人側と位置付けている私は、声を荒らげた。
彼女の身を案じて。または、自身の行動を省みて。
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