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駒繋
第八夜
しおりを挟む「アタシ達の、オソロ?」
脳内の無限に泳ぐイワシの群れを退治したのは、砂浜のよく似合う彼女。
――――大きくて重いピアスをぶら下げた彼女。
彼女に向かって話し掛けているのは、元から開いている穴以外の穴が見当たらない私。
私達の耳は、形や聴こえ方が違うのは勿論の事、穴の数さえも異なっている。
しかし――――。
「そうです。私達、ピアスとかドレスとか、身に着ける物の話ばっかりしてましたけど、もしかしたらそういう事じゃないのかも……って思ったんです。勿論、傍目に分かるお揃いも良いものですし、ドレスは絶対作りたいですけど。…………躍起になって見つけたり、作ったりしなくても、多分ですけど見つかります。……もう、持ってます。多分。……後は、知って行くだけ。気付くだけ」
「もう、持ってる?」
「はい、きっと。……紅さんに話し掛けられたのって、いつでしたっけ? 多分、私が思ってるよりずっと最近で……私達って、まだ全然、お互いの事を知りません。生活時間とか、休みもそうですけど、合ったり合わなかったりして、まだ十分に話をしたとは言えないと思うんです。だから、きっと、お互いの事を知って行くうちに、まだまだ沢山見つかると思うんですよ。共通の好きなもの。――――私達の、お揃いが」
「美味しいお酒……と、美味しいおつまみ。……と、美味しいご飯……も? 食べ物にちゃんとお金掛けてるトコ……も、オソロじゃない? …………このお素麺、買ってる人、アタシ以外に初めて会った。これ、結構良いのでしょ」
私が口を噤んだ直後、彼女は私へは返事をせず、唐突に私達の共通点と好きな物を挙げ始めた。
「ああ、その事なんですけど……。私、紅さんに一つ、謝らなくちゃいけないかもしれません。……実は、このお素麺なんですけど…………自分で買ったやつじゃないんですよね」
「そうなんだ」
「ええ。勿論、このお素麺が好きなのは本当ですよ。でも、これは自分のお金で買った物じゃありません。頂き物です。このお素麺を好きになったのも、一昨年位に人に貰ったのがきっかけで、一度も自分で買って食べた事ないんです。好きなくせに。……買わない……というよりは、自分のためにそのお素麺を買える程の心の余裕はない……みたいな感じですね。食費は削らないようにしてますけど、お酒とおつまみに多めに回したいし、回しちゃいますし。ご飯も、なるべく美味しい物食べたいと思ってるのは確かですけど、お酒やおつまみと比べちゃうと、優先順は下がっちゃいます。どうしても」
冷蔵庫から救出した食材をダイニングテーブルの上に置き、元からそこにあった箱を開けた。
玄関扉を開けた時には劣るが、素麺の箱を開けた途端に部屋の空気が変わった気がして、これを貰った時の記憶が鮮やかによみがえった。
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