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短夜
第六夜
しおりを挟む――――本当に余裕がないのは私のほうだというのに。
内心ドキドキしてソワソワして、こんな純情、とっくの昔に捨て去ったと思って……いや、そもそも持ち合わせているとすら思っていなかった。
処女を卒業する時にも緊張はおろか何の感慨も湧かなかった私が、初対面の女性に口説かれただけでここまで冷静さを欠くとは、よほど動揺していると見える。
どうにか保てている真顔も、いつ崩れるかわかったものではない。
「そう、必死。本気なの。抱かれるか抱かれないかの選択肢はあるし、アナタが抱く側でも良い。添い寝だけでも良い。でも、アタシの誘いに乗らないって選択肢だけはない。うちに来るのは決定事項。夜に独りは嫌だから。朝が来るまで、一緒にいて。たった数時間。寝てたらあっという間」
今更後に引けないでいる私の実情など露知らず、彼女は言い募る。
こんなプレゼンなら毎日でも聞けるのに……と聞き惚れていたが、途中から通達あるいは命令になっていると気付いたのは少し経ってからの事だった。
「思った以上に強引だった。女王様なんです……?」
半分素で、もう半分は彼女の思っているであろう『うぶで可愛いオンナ』のふりで会話のキャッチボールを続ける。
「女王様? そういう仕事はしてないけど」
「あ、そうなんですね」
だとしても、適性はありそうだ――――と、ピスタチオの殻剥きに取り掛かる前に彼女と視線を合わせた。
意志の強そうな瞳をしているし、実際にそうなのだろう。直前の話を聞く限り。
ただ、『女王様』というのは率直な感想であり、現時点での彼女のイメージだ。別に職業を詮索するつもりで尋ねた訳ではない。
ずれた返しに親近感をおぼえ、にやけた表情でピスタチオを嚙み砕きながら、はっと気付く。
私には彼女の誘いを受ける立派な建前があるではないか。
今日ここに来ていたそもそもの理由は、涼を取るためだったはずだ。
それを正直に伝えれば、彼女についていく口実になる。
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