モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌

文字の大きさ
15 / 226
逃水

第五夜

しおりを挟む

「……それでだったの。翠からがしてたのは」

 突き放すような鋭利な返事は、その心を掠りもしなかったのだろうか。
 
 彼女は意味深に呟いた。
 
「良い匂い、ですか? 汗臭いならわかりますけど。いや、臭くないように軽くシャワー浴びて着替えて出てきましたけど、そんなに臭いますかね……。なんかすみません」

「汗でも体臭でも何でもいい。アタシにとってはの匂い」

 先ほどにも増して意味深な発言だ。

 確かに、いつまでも嗅いでいたいと思う体臭を持つ男に出会った事はある。
 
 彼女はそういう事を言っているのか。

「御馳走…………?」

 だとしても、その表現は些か不自然に思えた。

「……ううん、何でもない。気になるなら、お風呂も貸す。このご時世、外出た身体でベッド入るの嫌って人も多いみたいだし」

 怪訝な顔で復唱したが、のらりくらりと躱されて、それ以上何も聞けなくなった。

 詮索されるのは嫌いだと言っていた彼女に、私はまだ嫌われたくないから。

「あー……。そう、そうですよね! 私もそういう感じで。有難くいただいちゃおうかな、お風呂」

「うん、どうぞ。場所、わかるよね」

 彼女は私が洗面所の奥のバスルームに消える前にベッドルームを指し、『そこで待ってる』と伝言を残した。

 外した腕時計を小さいカバンにしまってから、オトナになる直前の少女のように胸を高鳴らせて振り向くと、テーブルの上をだらだら片付けている彼女が手を振っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...