16 / 226
逃水
第六夜
しおりを挟む「お風呂、ありがとうございました」
普段の半分ほどの時間で、倍以上入念に全身を清めてから、酔ってもいないくせに千鳥足でベッドルームに入室する。
ドアは全開で、開ける必要はなかった。
「ん」
後ろ手にドアを閉め、室内に漂っているアルコールの臭いに気付く。
「……って、ここでも飲んでるんですか」
ベッドに腰掛けた彼女の左手には、汗を掻いた缶が握られている。
「歯、磨いてきちゃった?」
「まだですけど」
「じゃ、付き合ってよ」
彼女はコーヒーテーブルに置いてあったもう一本の缶を投げた。
魔女のような爪を持つ手に握られているのと同じものだ。
「……いいですけど」
手元に飛んできたそれを受け取った後、私は彼女の隣に座って――――……。
それからの事は、正直よく覚えていない。
覚えているのは、間違えて紅さんのお酒を飲んでしまった事を彼女に指摘され、何をとち狂ったか、自分の方の酒を彼女に勧めた事。
彼女は全く同じその缶の中身を『アタシのより美味しい』と言って笑った気がするが、酔っ払っている時の記憶ほど不確かなものはない。
もうひとつ覚えているのも――――やはり、私自身の演じた失態だった。
「……あ。ピアス、外しちゃったんですね」
彼女の身に着けていた装飾品の中でとりわけ目立っていたのは、その耳を飾る大振りのピアスだった。
「うん。寝る時は外す」
彼女はタンスの上のピアススタンドを顎でしゃくったが、その中のどれがそれなのかはわからなかった。
そのピアスは小粋な横顔にあまりにもよく似合っていた。
だが、あくまで私が魅力的だと感じたのは彼女の方であって、ピアスではないという事なのだろう。
「そうですよね。ファーストピアスとかでもないなら、普通は外しますよね」
彼女の一部が失われてしまったようだと肩を落とす。
自覚出来ていなかっただけで、その時には相当酔いが回っていたらしい。
10
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる