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竜舌蘭
第六夜
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「…………。眼精疲労には温めるより冷やす方が良いってのは、本当っぽいな……」
包装に記されていた時間よりも少しだけ長持ちしたアイマスクを外す。
良い香りもするし、リフレッシュされたにはされたが、肝心の疲れはそれほど取れていない。
時刻を確認したら、新着のメッセージが一件。
「……あ、紅さんからだ。何だろ」
急いで開くと、『今日、会える?』という短文に、やたら動きのうるさい犬のスタンプが添えられていた。
「確かに変だけど、古い……」
近くには誰もいないのに笑いを噛み殺しながら『会いたいです』とだけ返す。
すぐに来た返信には、大体の時間が指定されていた。
******
「……なんで毎回! 寝ちゃうかなあ!」
休日の朝。
私は他人の家のベッドの上で悪態をついていた。
「疲れてるんじゃないの」
隣の紅さんは慣れた様子で軽く受け流す。
何故なら、こうして起き抜けに嘆くのは三度目になるからだ。
毎度毎度寝る前の記憶がごっそり抜け落ちているのだから、嘆きたくもなる。
「うーん……。ここに来ない日の方がよっぽど疲れてるような気がするんですけどね……」
言わずもがな、ここ最近の自宅での寝付きは最悪だった。
今年の夏は酷暑と言われるだけあって、連日いわゆる超熱帯夜。
よりにもよって、そんな時にエアコンが故障してしまうとは不運にも程があるだろう。
「じゃ、涼しくて寝付きやすい?」
しかし――――。と、真っ赤な唇を持つ美女を一瞥する。
彼女に出会えた幸運と合わせて考えると、トントンどころか、その程度の不運で済んでいるのが不思議なくらいかもしれない。
「…………かもですね」
最初のうちは冷やしすぎだと思っていた設定温度にも随分慣れたものだ。
アルコールの臭いのするベッドルームにも。
――――目覚めたら、隣に誰かがいる事にも。
「いや、でもなあ……。何かもっと尋常じゃない眠気に襲われる感じで……」
「次は起きてられると良いね」
「本当に。毎回身に覚えのないキスマークだけ残ってるのも悔しいですし」
「アタシも。吸われてる時の翠、見てみたい。絶対可愛い」
首を気にする私を見て、彼女は優美に微笑んだ。
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