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金糸梅
第八夜
しおりを挟む「…………なんて。驚きました?」
極上の女体に触れた事で、却って正気を取り戻せたらしい。
急いては事を仕損じると思った訳ではないし、『押してダメなら引いてみる』なんていう古典的でみみっちい駆け引きをするためでもない。
衝動的かつ大胆過ぎる行動を取ってしまった事に対する後悔と不安が遅れてやってきて、心拍数が嫌な上がり方をしたのを悟らせないように、ぱっと笑顔を作った。
「全く、こっちが焦っちゃいましたよ。紅さん、ちっとも言い返してこないし」
唇を離した時に彼女の豊満な胸と私の貧相な胸も元の形を取り戻していたが、バクバクと慎みのないその音が可憐な耳にも届いてしまうのを恐れて彼女の膝から下り、右隣に腰掛けた。
初めて言葉を交わした日から変わる事のない並びになった事でいくらか気分も落ち着いてきて、いつものように右を上にして脚を組む。
「翠。今の……全部、嘘?」
私の行動を逐一目で追う紅さんは、白か黒かの答えを欲しがっている。
深く考えずに移動した関係で、私達の間には恋人らしからぬ隙間が出来ていた。
「全部、本当ですよ。今だから言えるんですけど、私、初めてここに来た時から、紅さんとそういう関係になりたいと思ってました。最初は本当に『女同士ってどんな風にするんだろう? 挿入無しで満足出来るのかな』とか、『一回くらいは付き合っても良いかな』くらいの気持ちしかなかったんですけど……」
彼女の視線を感じながら、言葉を手繰り寄せる。
「いつからとかはわかりません。……でも、結構早い段階だったと思います。気付いたらもう、紅さんの事、恋愛対象として見てて。『言葉じゃわかり合えない所まで、この人の事知りたいな』って思うようになってたんです。だから、『性的な意味で見てる』って言い方は、もしかしたら強すぎたかもしれません。シたいのは本当でも、肉体的な欲求と精神的な欲求のどっちが先に来るかで、大分ニュアンスが変わってくるでしょう?」
「うん。アタシも、最初は翠のカラダに興味持ってた。けど、今は中身にも同じくらい興味ある。同じ『寝たい』でも、全然違うって、自分でも思う」
二人の間の小さな隙間を埋めると、黙って話を聞いていた彼女が話し出した。
「……前から思ってたんですけど、紅さんって正直すぎません!? だから、信用出来るし、好きになったんですけど」
「ありがと。『裏表なさすぎて怖い』ってよく言われるから、ホントに嬉しい」
先程の衝撃発言のせいか、こちらに向けられた弾けるような笑顔のせいか、一旦は落ち着いた筈の心臓がまたドキドキとうるさく鳴り出した。
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