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金糸梅
第九夜
しおりを挟む「……まあ、私の言い方が正しかったかどうかはさておき……。これまで全然そんな感じ見せてなかったのに、急に言い出すのはずるかったですよね。すみませんでした。紅さんが照れてる顔、絶対可愛いだろうなって思ったら、歯止めがかからなくなっちゃって。流石にやりすぎだったかも」
小賢しい言い訳とセットであるといえど、私にしては素直に謝れた方だと思っていた。
「翠、思い切り良いよね。カッコイイと思う」
が、すぐにそんなものとは比にならない真っ直ぐな褒め言葉のカウンターを食らうとは。
「カッコイイ……ですか? 私」
「けど、やっぱアタシには可愛く見えるし、素直に可愛がられといてほしい」
前々からそうなんだろうなあと思ってはいたが、紅さんは攻められるより攻める方がお好みだそうで。
SはサービスのSと言い出したのが誰かは知らないが、もし彼女の能力をレーダーチャート化するとしたら、一箇所が大きく突出したものになりそうだなんて想像して、小さく笑った。
「私も紅さんに可愛がってもらえるのは好きです。昔から『可愛げがない』って言われ続けてきたし、自分でもそう思うしで、変わった感性だなあとは思ってますけど、一回言われる毎に本当に少しずつ可愛くなってる気がするくらい、幸せな気持ちでいっぱいになるんです。多分、美容成分入れすぎてどの成分の効果が出てるのかいまいちわからない化粧水より効果ありますよ」
「……翠、お花みたい。でも、アタシも前より今の翠のが可愛いと思う。これからも『可愛い』って言い続けて、翠の事、もっと可愛くしたげる」
彼女は長い爪を持つ指でそっと私の口元に触れた。
気付かない間に唇に挟まっていた髪を取ってくれたらしい。
「ありがとうございます。でも、それならこっちの考えだって理解出来る筈ですよね」
語彙にも想像力にも乏しい私には、陳腐で使い古しの表現が限界だ。
「翠の考え?」
しかし、隣で私の顔を見つめてくる彼女の方こそ花の精のように美しいと思わずにはいられない。
太陽と大地の恵みを存分に受けて育ったとおぼしき健康的な美の持ち主である彼女には、簡単には折れないしなやかさを感じているが、恐らくこの人は、少しの風にも靡いてしまうような永遠の少女性を併せ持っている。
「……私だって紅さんの事、可愛い人だと思ってるんです! さっきは加減が下手くそで驚かせちゃいましたけど、あれだって偉大な教えに従っただけだったんですよ」
女王様相手に下剋上を企てる果敢と無謀を履き違えた愚か者は、お目こぼしを狙って言い訳を捻り出した。
素直に謝っておけば良いものを。
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