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夕顔別当
第二十一夜
しおりを挟む「アタシは今、したいの。……ダメ?」
これまでは少しでも難色を示せば、すんなり引き下がってくれていた彼女だが、こんな時に限ってそう来るとは。
「ダメです」
化粧を落としても十二分に赤い唇を窄めて頼み込んで来る彼女は、自身の魅力――私の弱点かもしれないが――を熟知しているらしい。
「なんで?」
挙げ句、理由まで問い質すとは、一体どういう風の吹き回しなのか。
彼女の事だ。単なる気分なのかもしれないが、どうしてか本当の事を言うのは憚られた。
「……もっと別の所も吸ってほしいんです……」
しかし、本当の事を隠すために選んだのもまた、どういう訳か本音だった。
「…………ガマン、出来なくなっちゃった?」
彼女は私の言葉をそう解釈したようだ。
間違っていない。寧ろ正しいのだが――――性的なコミュニケーションの耐性は、激辛耐性と似たようなものなのではないかという説が急浮上する。
わかりやすく説明すると、『最近、御無沙汰だった所に浴びせられる彼女の色気は許容量オーバー』だという事だ。
そもそもの話、女性相手に性欲を感じた事自体彼女が初めてなので、そちらが原因かもしれないが。
「そうです。『一緒に寝てください』って……私から紅さんの事誘ったら、ダメですか?」
混乱しつつ、部屋着の裾を自分で少し上げて、肌を露出する。
今度はこちらがねだる番だ。
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