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鶯音を入る
第十二夜
しおりを挟む「アタシは…………『ヒュモス』」
聞いた事のない単語だ。外国語だろうか。
「ひゅ、もす?」
発音してみたら記憶の扉が開くかもと思って繰り返してみたが、やはりそれは未知の単語だった。
「そ。ヒュモス」
たどたどしい私とは対照的に、彼女は流暢な発音で言い直した。ALT――外国語指導助手――の授業を思い出すような。
「初めて聞きました。意味も当然わかりませんけど、何を指す言葉かもわかりません。私が知らないだけでそういう名前の地域があるのかもしれないし、もっと大きな……種族の名前とかかもしれないし」
「…………」
私の言葉を聞いた彼女は、少し考えて――――。
「翠」
私の名前を呼んだ。
「はい」
「『人間』は英語で何て言う?」
「え? ぴーぷる?」
突如始まったクイズに困惑しつつ、解答したが――――。
「合ってる。……けど、他には?」
この場に相応しい答えではなかったようだ。
「あ、『ぴーぷる』って複数か! 単数は…………『ぱーそん』!」
「惜しい。peopleのが近かった」
「え!? ……というか、紅さんすごい発音良いですね!」
「ありがと。一応、歌手だから?」
彼女はそう答えると、気取ったフリで髪を靡かせた。
「ふふ。そうですね」
「……あ。じゃ、『人類』は?」
『こういうお茶目な所も好きだなあ』、『今朝起きて初めての自然な紅さんだ』と感慨深く眺めていると、特大のヒントが与えられた。
「…………ひゅーまん?」
「そ。human」
またしても流暢に言い直されたそれは、その先頭の二文字は――――先程の馴染みのない単語の上半分とも見事に一致していた。
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