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鶯音を入る
第十三夜
しおりを挟む「……『ひゅもす』の『ひゅ』は『ひゅーまん』の『ひゅ』って事ですよね」
話の流れからしてそれ以外はありえない。
「ん。正解」
先程とは打って変わって、間を置かずに返答が返って来た。
『そう』ではなく『そ』、『うん』ではなく『ん』といった、彼女ならではの省エネ一文字相槌が復活を遂げている。
彼女はいつもの調子を取り戻してきたらしい。
「じゃあ、『もす』のほうは……?」
私の方はというと、緊張がより一層高まって、声も少し掠れてきた気がする。
まさか某ファーストフードチェーンな訳はない。
……となると、思い付くのは『moth』しかないが、彼女と蛾なんてどうしても結び付かないし、きっとこれも違う。
彼女は寧ろ誘蛾灯の方だろうし、似ているもので考えるなら蝶の方がまだわかる。
「…………mosquito」
――――真剣に考えている最中だった。
煩わしい虫に似つかわしくない洒落た響きと綴りの単語が美しい唇から飛び出してきたのは。
「もすきーと…………。そっか、『蚊』……!」
「そう。蚊……」
彼女は静かに肯定した。
「『ひゅもす』の『もす』は『もすきーと』の『もす』……って事は……!」
今年は記録的な猛暑であったせいか、殆ど被害に遭っていなかった。
そうは言っても、ヴァンパイアなんかよりも先に思い付いて当然だった筈だ。
コウモリやヒル(住んでいる場所によってはその二種も身近かもしれないが)より身近な吸血を行う生物である彼らには、毎年悩まされてきたというのに。
実在、しているというのに。
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