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鶯音を入る
第三十七夜
しおりを挟む「私も訊いて良いですか?」
なるべく自然に聞こえるようにしたかったのに、声が震えた。
「ん。良いよ」
「…………私、紅さんにとってのピアスみたいな存在になれてますか?」
勇気を振り絞って尋ねたが、実のところ、私はそれで満足出来る程、慎ましやかな女ではなかった。
何故なら、ピアスというアクセサリーをこよなく愛する彼女は、いくつもお気に入りを持っていて、その一点一点を大切に扱っているから。
もし私が彼女の手持ちのピアスのひとつなら、私は押しも押されもせぬ唯一無二になりたいし、頂点に君臨し続けるだけでは不満だ。
というか、他のピアスが存在しているだけでも目障りなことこのうえないのではないかと思う。私ほどではないにせよ、どれも彼女が気に入った物なのだから当然だ。
ひとつ残らず処分して、そこから先は私だけを愛してほしい。
――――これが何人もスペアを持っていた女の願望なのだから、片腹痛い。
「……翠には、どう見える? アタシにとって、ピアスがどんなアイテムだと思って、そう聞いてる?」
「『欠かせないもの』…………ですかね。ないと生きていけないわけじゃないけど、ないと落ち着かないし、気分も上がらない……みたいな」
「ううん」
続く回答を固唾を呑んで待っていたが――――。
「ピアスとなんて比べられない。比べられる筈ない。比べた事もない。翠のがずっと大事。だから、翠の事、ピアスだと思うのは難しい。ごめん」
「ええと……。別にそれは良いんですけど…………というか、私こそ変な事訊いてすみません?」
返ってきたのは予想外の返答だった。
「アタシはずっと、伝えてきたつもりだった。言葉はそんなに得意じゃない。伝えるの上手くないの知ってるから、行動とか、態度とかで」
「いいえ。伝わってないなんて事ないです……。私……こんなに……『素直になれない、恥ずかしい』みたいなくだらない理由で、全然……何も返せてないのに、紅さんだけに全部頼って…………」
情けなくて流れ出した涙を拭ったのは、長い爪を握り込んだ優しい指だった。
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