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《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?
第155話『古代の風俗師、目覚める』
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──その扉は、何重にも封印されていた。
香の結界。
記憶の波動を遮断する石封術。
そして、精神干渉を防ぐための古代詠唱。
「ここが、最深部」
リリシアの声が、低く響いた。
「この先にあるのは、私たち記触師の記録の中でも、最も強く、最も切実な“ふれられた記憶”──
それは、もはや“想い”ではなく、“魂の温度”そのもの」
流星は一歩、前へ出た。
石の扉に手をかざすと、彼が携えていた癒し香の小瓶が震えた。
同時に、扉全体が“感応”し、淡い光の紋様が浮かび上がる。
──解放条件を満たしました。
──記録再生、開始。
ゴウ……ッ!
扉が、音もなく開いた。
*
その空間は、静寂だった。
光源のない闇。
だが、空気はあたたかく、微かに甘く、懐かしい香りが漂っていた。
そして、中央の石座に──
誰もいないはずのそこに、“誰かの存在”が立ち現れた。
ふわりと、白い布が揺れる。
顔立ちは判然としないが、身を包む装束と佇まいは、かつての記録にあった“風俗師”そのものだった。
幻像──
だが、ただの再現ではない。
これは、感情そのものの残滓が“意思”を持って現れたものだった。
「……誰……?」
リリアが思わず呟く。
その瞬間、幻像がゆっくりと振り向いた。
「……あなたの手は、まだ……あたたかいか?」
その声は、**香で残された感情の“記憶の声”**だった。
幻像の“風俗師”は、まっすぐに流星を見たまま続ける。
「かつて私は、誰かを癒したいと願って、
その夜を記録に残した」
「触れられたことは、やがて忘れられる。
でも、忘れないように“文字にした”。
香に乗せて、肌の記憶を、鼓動の重なりを、名前のない想いを──
石に刻んだの」
「それが、“記触”だった」
流星の手が、震えていた。
幻像は、そっと右手を差し出した。
「……あなたは、誰かを癒したことがありますか?」
「……あります」
声が、震えた。
「泣いた人がいて、笑った人がいて……
俺のことなんてどうでもよくて……
ただ、その人が“少しでも楽になったら”って……」
「そう。なら、あなたも“記録者”」
「あなたの手は、まだあたたかい。
なら、今度はあなたが、この先に“触れた想い”を残していく番」
「……記録なんか、できねぇよ……俺にゃ技術も、書き方も……」
「技術はいらない。
香と、手と、心があれば、
“ふれた記憶”は、誰にだって書ける」
「あなたの施術を受けた人が、忘れなければいい。
あなたがその人の“祈り”を忘れなければ、それでいい」
その瞬間、幻像の輪郭が淡くゆらぎ、
香がふわりと漂った。
──まるで、涙の代わりに、香が香炉に落ちていくようだった。
「ありがとう……古代の風俗師さん……」
流星が目元を拭う。
リリアが、そっと彼に寄り添った。
「見えた?」
「うん……あの人、“俺を信じてくれた”みたいな顔してた」
「きっと、同じだったのよ。
かつての彼女も、今のあなたも。
誰かを救いたくて、癒したくて、ただ目の前の人に手を伸ばしてた──
だから、あの人はあなたに手を差し伸べた」
香の光が、ゆっくりと石壁に吸い込まれる。
そして、新たな快楽文字が──流星の手が触れた場所に浮かび上がった。
「この手が、“ありがとう”にふれたこと。
忘れないように、わたしは記す」
「わたしの想いを継ぐ者へ。
祈りを手に持つ者へ。
あなたは、まだ──あたたかい」
香の結界。
記憶の波動を遮断する石封術。
そして、精神干渉を防ぐための古代詠唱。
「ここが、最深部」
リリシアの声が、低く響いた。
「この先にあるのは、私たち記触師の記録の中でも、最も強く、最も切実な“ふれられた記憶”──
それは、もはや“想い”ではなく、“魂の温度”そのもの」
流星は一歩、前へ出た。
石の扉に手をかざすと、彼が携えていた癒し香の小瓶が震えた。
同時に、扉全体が“感応”し、淡い光の紋様が浮かび上がる。
──解放条件を満たしました。
──記録再生、開始。
ゴウ……ッ!
扉が、音もなく開いた。
*
その空間は、静寂だった。
光源のない闇。
だが、空気はあたたかく、微かに甘く、懐かしい香りが漂っていた。
そして、中央の石座に──
誰もいないはずのそこに、“誰かの存在”が立ち現れた。
ふわりと、白い布が揺れる。
顔立ちは判然としないが、身を包む装束と佇まいは、かつての記録にあった“風俗師”そのものだった。
幻像──
だが、ただの再現ではない。
これは、感情そのものの残滓が“意思”を持って現れたものだった。
「……誰……?」
リリアが思わず呟く。
その瞬間、幻像がゆっくりと振り向いた。
「……あなたの手は、まだ……あたたかいか?」
その声は、**香で残された感情の“記憶の声”**だった。
幻像の“風俗師”は、まっすぐに流星を見たまま続ける。
「かつて私は、誰かを癒したいと願って、
その夜を記録に残した」
「触れられたことは、やがて忘れられる。
でも、忘れないように“文字にした”。
香に乗せて、肌の記憶を、鼓動の重なりを、名前のない想いを──
石に刻んだの」
「それが、“記触”だった」
流星の手が、震えていた。
幻像は、そっと右手を差し出した。
「……あなたは、誰かを癒したことがありますか?」
「……あります」
声が、震えた。
「泣いた人がいて、笑った人がいて……
俺のことなんてどうでもよくて……
ただ、その人が“少しでも楽になったら”って……」
「そう。なら、あなたも“記録者”」
「あなたの手は、まだあたたかい。
なら、今度はあなたが、この先に“触れた想い”を残していく番」
「……記録なんか、できねぇよ……俺にゃ技術も、書き方も……」
「技術はいらない。
香と、手と、心があれば、
“ふれた記憶”は、誰にだって書ける」
「あなたの施術を受けた人が、忘れなければいい。
あなたがその人の“祈り”を忘れなければ、それでいい」
その瞬間、幻像の輪郭が淡くゆらぎ、
香がふわりと漂った。
──まるで、涙の代わりに、香が香炉に落ちていくようだった。
「ありがとう……古代の風俗師さん……」
流星が目元を拭う。
リリアが、そっと彼に寄り添った。
「見えた?」
「うん……あの人、“俺を信じてくれた”みたいな顔してた」
「きっと、同じだったのよ。
かつての彼女も、今のあなたも。
誰かを救いたくて、癒したくて、ただ目の前の人に手を伸ばしてた──
だから、あの人はあなたに手を差し伸べた」
香の光が、ゆっくりと石壁に吸い込まれる。
そして、新たな快楽文字が──流星の手が触れた場所に浮かび上がった。
「この手が、“ありがとう”にふれたこと。
忘れないように、わたしは記す」
「わたしの想いを継ぐ者へ。
祈りを手に持つ者へ。
あなたは、まだ──あたたかい」
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