異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?

第154話『リリシアの解読──触れられた記憶の詩』

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「“触れたい”という感情を、
 詩として刻んだ民族だったのよ」

 リリシアのその言葉が、遺跡の石室に反響した。

 灯された香燈の光が壁面の記録文字を照らすたび、
 誰かの温度、誰かの鼓動、そして――誰かを愛おしく思った手の記録が、
 まるで歌うように浮かび上がってくる。

 *

 遺跡の中央、快楽碑文を囲む円形テーブル。

 流星たちは、リリシアによって運ばれた一枚の石板を見つめていた。

 表面には、円弧を描くように走る細い線。
 それはただの意匠ではなく、“時間と触れた箇所”を記録した詩文だった。

 リリシアが指先でなぞりながら言う。

「快楽文字は、いわば“触れた順番と、感情の深度”を紡いだ詩なの」

「詩……」

 ミレーユが目を細める。

「言葉じゃないんだ?」

「ええ。厳密には、“身体と言葉のあいだ”に生まれたリズムよ」

 リリシアは、静かに読み上げ始めた。

「そっと触れた指先が、風に揺れて──
 肩に落ちたとき、わたしの心がふるえた」

「香が満ちる。
 その間、十三拍。
 あなたの脈と、私の脈が、交わったのは二度」

「あなたの指が、髪をすくって、耳に触れたとき──
 わたしは“生きている”と思った」

「……これが、“記録”なんだな」

 流星の声が低くなる。

「抱きしめた時間とか……心拍まで……?」

「そう。快楽文字には“行為”の描写だけじゃないの。
 “どんなリズムで触れたか”“どれだけ迷ってから手を伸ばしたか”
 そして、“どれくらい本気だったか”が、全部、文字になる」

 リリアが眉を寄せた。

「そんなの……読む側の想像に任せるもんじゃないの?」

「違うの」

 リリシアは穏やかに首を振る。

「この民族は、“触れた想い”を、“伝える責任”として記録してたの。
 一度ふれたぬくもりは、“そのままにしてはいけない”って考えてた」

「誰かの手が、誰かの記憶に触れたなら──
 その“証”を、残しておかなくちゃいけない」

 アリシアが呟く。

「ふれたことは、忘れちゃいけない……」

「そう。だから“詩”になった。
 詩は、意味よりも“感じるリズム”だから。
 読むたびに、誰かの心臓がもう一度動くように、
 ふれられたことが再生されるように」

 流星は石板に手を添える。

 その瞬間──

 彼の脈が、微かに反応した。

 石板から、呼応するように香の波が立ち昇る。

「だいじょうぶ、って言われた夜。
 風がふいた。
 私の左手の小指が、あなたにふれた」

「五拍、沈黙。
 そのあとで、あなたが言った。
 “ありがとう”って、震える声で」

 流星の目が、じんわりと潤んだ。

「これ……俺、言われたことある。
 “ありがとう”って、泣きながら言われたとき……
 “何か”が、自分の中で変わったって、はっきり思った」

「それが、“快楽の詩”よ」

 リリシアの目は揺るぎなかった。

「この民族にとって、快楽とは“ただの快い感触”じゃなかった。
 それは、“記憶の残し方”だった。
 誰かとふれた事実を、消さないための術だったの」

「だから、私はこの文字たちを残したい。
 “癒されたことを記録する”って文化が、
 かつてあったってことを、未来に継がせたいの」

 リリアが、ふっと息を吐く。

「わかってきた。あんたがこの遺跡に“心”を残してる理由」

 アストレアが口を開く。

「でも……なぜこの文化が、滅んだの?」

 リリシアは少しだけ目を伏せて、答える。

「それは、次の部屋で話すわ。
 “この詩を燃やした者たち”の話を」

 空気が、変わった。

 流星は深く頷き、立ち上がった。

「わかった。
 “触れた想いを残す”って覚悟をした者たちがいるなら──
 その声、ちゃんと拾いに行こうぜ」
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