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《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?
第156話『肌で綴る言葉、未来へ』
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──一ヶ月後。
南方都市圏《サラ=ノーファ》。
かつては交易中継地として栄え、現在は観光と香医療の街として再開発が進むこの都市に、
ひとつの“新しい風”が吹き始めていた。
それは――
「触れられたこと」を記録する施術。
快楽文字《エクスタ文》と、古代の“接触文化”をもとに再構築されたこの施術形式は、
現在、体験型癒し施設《記香庵(きこうあん)》にて、正式に導入されていた。
「……緊張しますね」
そう言ったのは、施術を初めて受けるという青年。
リリシアは穏やかに微笑んで、案内する。
「大丈夫です。ここでは“話す必要”はありません。
触れられたとき、何を感じたかも、何も言わなくていいんです」
「施術が終わったあと、あなたが触れられて残った“温度”だけを、
香とともに、この石板に記録しますから」
「……わかりました」
青年が静かに横たわる。
香が灯り、肌の表面に漂いはじめる。
リリシアはそっと手を添え、彼の指先から肩へ、背へと――
あくまでやわらかく、あたたかく、言葉のかわりに伝えていく。
施術の間、青年は一言も話さなかった。
だが、終わったあと。
石板には、淡い“快楽文字”が浮かんでいた。
「この温度、知らなかった。
怖いって思ってたけど、あたたかかった。
恥ずかしかったけど、泣きたかった。
わたしも、誰かをこうして抱きしめてみたい」
「……書いてません、何も……」
青年が言う。
リリシアは、微笑んで答えた。
「ええ。でも、“記録された”んです。
あなたが、触れられたことを忘れなかったから」
*
市民たちは、少しずつ《記香庵》を訪れるようになった。
・言葉にできなかった気持ちを、香で記す老女。
・好きな人に触れてもらえなかったことを、代わりに肌で癒す青年。
・親から褒められたことのない少女が、
施術中に流した涙を“触れられた記憶”として残すために来た。
そして、皆が口を揃えて言う。
「“ありがとう”が言えないかわりに、残したかったんです」
「“好きです”がこわくて、ずっと黙ってた。
でも、あの施術のときに触れてくれた手が、“伝わってるよ”って言ってる気がした」
「香って、こんなに泣けるものなんだ……」
言葉じゃなく、肌で綴られた言葉が、香とともに人の心に残っていく。
*
施術石板の一角には、こんな文字もあった。
「“好き”は、恥ずかしい言葉だと思ってた。
でも、あの手のぬくもりが、私の“好き”を肯定してくれた」
「言えなくても、記せるなら、それでいいんだと思えた」
快楽文字は、新たな文化として芽吹いていた。
言えなかった愛。
伝えられなかった感謝。
残したくても、残せなかったぬくもり。
それらがすべて、“香と記録”という形で綴られていくようになった。
*
その様子を見届けながら、流星はリリシアと並んで香庵の屋上にいた。
「……すごいもんだな。
あの石碑から始まったもんが、こんな風になるとは」
「あなたが最初に触れたときから、
この都市の“記録”はもう始まっていたのよ」
リリシアは、風に香袋を揺らしながら言った。
「肌で綴るって、怖いことだけど……
でも、それ以上に“ちゃんと届く”。
言葉じゃ伝わらない感情が、
香と、触れた時間にこそ、残っていくの」
流星が空を仰ぐ。
夕焼けの中、白く浮かび上がる施術文字たちが、街の屋根に連なっていた。
「なぁ、リリシア。
……“好き”って、書き残せるもんなのか?」
「ええ。ちゃんと、肌を通して、伝わるわ」
「じゃあ……俺がいつか誰かを本気で“好きだ”って思ったときも、
こうやって……石に記せるのか?」
リリシアは、少しだけ顔を赤らめて、それでもきっぱりと頷いた。
「もちろん。あなたの“好き”が、誰かを癒したいって願ったなら──
それはもう、立派な快楽文字よ」
「……そっか。
だったら俺、今日からまた一人ずつ、ととのえていくよ。
俺なりの“好き”を、ちゃんと残せるように」
香が流れる。
都市に根づいた新たな文化。
香と記録で残す“触れられた想い”。
それは、未来へと繋がる“肌のことば”だった。
南方都市圏《サラ=ノーファ》。
かつては交易中継地として栄え、現在は観光と香医療の街として再開発が進むこの都市に、
ひとつの“新しい風”が吹き始めていた。
それは――
「触れられたこと」を記録する施術。
快楽文字《エクスタ文》と、古代の“接触文化”をもとに再構築されたこの施術形式は、
現在、体験型癒し施設《記香庵(きこうあん)》にて、正式に導入されていた。
「……緊張しますね」
そう言ったのは、施術を初めて受けるという青年。
リリシアは穏やかに微笑んで、案内する。
「大丈夫です。ここでは“話す必要”はありません。
触れられたとき、何を感じたかも、何も言わなくていいんです」
「施術が終わったあと、あなたが触れられて残った“温度”だけを、
香とともに、この石板に記録しますから」
「……わかりました」
青年が静かに横たわる。
香が灯り、肌の表面に漂いはじめる。
リリシアはそっと手を添え、彼の指先から肩へ、背へと――
あくまでやわらかく、あたたかく、言葉のかわりに伝えていく。
施術の間、青年は一言も話さなかった。
だが、終わったあと。
石板には、淡い“快楽文字”が浮かんでいた。
「この温度、知らなかった。
怖いって思ってたけど、あたたかかった。
恥ずかしかったけど、泣きたかった。
わたしも、誰かをこうして抱きしめてみたい」
「……書いてません、何も……」
青年が言う。
リリシアは、微笑んで答えた。
「ええ。でも、“記録された”んです。
あなたが、触れられたことを忘れなかったから」
*
市民たちは、少しずつ《記香庵》を訪れるようになった。
・言葉にできなかった気持ちを、香で記す老女。
・好きな人に触れてもらえなかったことを、代わりに肌で癒す青年。
・親から褒められたことのない少女が、
施術中に流した涙を“触れられた記憶”として残すために来た。
そして、皆が口を揃えて言う。
「“ありがとう”が言えないかわりに、残したかったんです」
「“好きです”がこわくて、ずっと黙ってた。
でも、あの施術のときに触れてくれた手が、“伝わってるよ”って言ってる気がした」
「香って、こんなに泣けるものなんだ……」
言葉じゃなく、肌で綴られた言葉が、香とともに人の心に残っていく。
*
施術石板の一角には、こんな文字もあった。
「“好き”は、恥ずかしい言葉だと思ってた。
でも、あの手のぬくもりが、私の“好き”を肯定してくれた」
「言えなくても、記せるなら、それでいいんだと思えた」
快楽文字は、新たな文化として芽吹いていた。
言えなかった愛。
伝えられなかった感謝。
残したくても、残せなかったぬくもり。
それらがすべて、“香と記録”という形で綴られていくようになった。
*
その様子を見届けながら、流星はリリシアと並んで香庵の屋上にいた。
「……すごいもんだな。
あの石碑から始まったもんが、こんな風になるとは」
「あなたが最初に触れたときから、
この都市の“記録”はもう始まっていたのよ」
リリシアは、風に香袋を揺らしながら言った。
「肌で綴るって、怖いことだけど……
でも、それ以上に“ちゃんと届く”。
言葉じゃ伝わらない感情が、
香と、触れた時間にこそ、残っていくの」
流星が空を仰ぐ。
夕焼けの中、白く浮かび上がる施術文字たちが、街の屋根に連なっていた。
「なぁ、リリシア。
……“好き”って、書き残せるもんなのか?」
「ええ。ちゃんと、肌を通して、伝わるわ」
「じゃあ……俺がいつか誰かを本気で“好きだ”って思ったときも、
こうやって……石に記せるのか?」
リリシアは、少しだけ顔を赤らめて、それでもきっぱりと頷いた。
「もちろん。あなたの“好き”が、誰かを癒したいって願ったなら──
それはもう、立派な快楽文字よ」
「……そっか。
だったら俺、今日からまた一人ずつ、ととのえていくよ。
俺なりの“好き”を、ちゃんと残せるように」
香が流れる。
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それは、未来へと繋がる“肌のことば”だった。
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