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《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?
第158話『そして、風は語り継ぐ──触れたことを忘れないために』
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──夜が明けるころ、風が吹いた。
砂をまとう遺跡《ザハル=ネファシュ》。
長らく“封じられた記憶”の倉庫と化していたこの地に、
いまや市民が行き交い、香が炊かれ、人の手で新しい詩が綴られている。
癒された人々が、自らの“ふれられた記憶”を記録する──
そんな光景が日常となり、遺跡は「再び生きる風俗文化」として静かに動き出していた。
だがこの日、特別な“最後の石板”が、ある一人のために刻まれようとしていた。
*
白装束をまとった老女が、ゆっくりと指先で石の面を撫でる。
彼女は最初の施術のときから、何度も迷い、何度も涙を流し、
そして「もう少しだけ」と香庵を訪れていた。
だが今、彼女は言った。
「今日が、最後の施術にします」
「今度は、私が書く番だから」
香が揺れ、記録の石板に指が触れる。
そして、ゆっくりと淡い快楽文字が浮かび上がる。
「あの夜、あなたが私の背を撫でてくれたこと。
言葉はなかったけど、私の心は、あのとき許された」
「もう愛されることなんてないと、どこかで決めていたのに。
あなたは私に、“触れられていい存在”なんだって教えてくれた」
「あれから、私は変わった。
誰かの声に耳を傾けて、誰かの笑顔を想って泣けるようになった」
「──だから記すの。
あなたと過ごしたひとときが、私の人生の意味だったと」
沈黙。
誰も言葉を発さなかった。
けれどその石碑は、どんな長編小説よりも、どんな演説よりも――
重く、深く、温かかった。
リリシアは目元をそっと拭い、
老女に深く頭を下げた。
「……記してくださって、ありがとうございます」
「ええ。ありがとうを、ようやく言えた気がしたわ」
*
その夜。
遺跡の中央――大寝台跡の前に、流星は一人で立っていた。
仲間たちは少し離れて、焚かれた香を囲みながら語らっていたが、
彼はただ静かに、香の石に手を当てた。
香が脈を打つ。
そのたびに、誰かの笑顔、涙、震える声が蘇る。
あの施術。
あの指先。
あの「だいじょうぶ」と言ってくれた温度。
それがすべて、この石に──そして、自分の手の中に、今も生きている。
「……また一軒、“残る風俗”ができたな」
その一言に、背後から鋭い声が飛んだ。
「はい、出ましたーーッ! すぐ“ととのった数”で数える男!!」
「おい、そういうとこやぞ! いっつもオチがそれになる!!」
「ちょっとは情緒の余韻ってものをですね!!」
「え、ええっ!? 今の感動、台無し!? マジで!?」
流星が慌てて振り返ると、リリア・アリシア・ミレーユが三人一斉に腕組み&ジト目で睨んでいた。
「……いやいやいや、俺としては最高の称賛だったんだけど!?“残る風俗”って言葉に全肯定の意味を込めてたんだけど!?」
「その“風俗”って単語の使い方、そろそろ怒られますよ!!」
「せめて“癒しの記録文化”とかに言い換えなさいっての!!」
「むしろ“快楽継承遺産”とか新語作ってもいいレベル!!」
「うぅ……でも、でもさ……俺たち、癒したよな……?」
「……ま、認める」
「うん。確かに、あなたが手を差し伸べたから、あの人たちは変われたのよ」
「だからこそ、もっとマシな言い方があるだろーが!!」
「つ、次から気をつけますぅ……」
和やかに、風が吹く。
香炉の火が揺れ、夜の遺跡をやさしく包む。
かつて封じられていた風俗院。
今ではそこに、“触れられた記憶”を綴った無数の詩が刻まれていた。
それらはすべて、誰かが誰かを想った証。
──そして、風は語り継ぐ。
触れたことを、忘れないために。
砂をまとう遺跡《ザハル=ネファシュ》。
長らく“封じられた記憶”の倉庫と化していたこの地に、
いまや市民が行き交い、香が炊かれ、人の手で新しい詩が綴られている。
癒された人々が、自らの“ふれられた記憶”を記録する──
そんな光景が日常となり、遺跡は「再び生きる風俗文化」として静かに動き出していた。
だがこの日、特別な“最後の石板”が、ある一人のために刻まれようとしていた。
*
白装束をまとった老女が、ゆっくりと指先で石の面を撫でる。
彼女は最初の施術のときから、何度も迷い、何度も涙を流し、
そして「もう少しだけ」と香庵を訪れていた。
だが今、彼女は言った。
「今日が、最後の施術にします」
「今度は、私が書く番だから」
香が揺れ、記録の石板に指が触れる。
そして、ゆっくりと淡い快楽文字が浮かび上がる。
「あの夜、あなたが私の背を撫でてくれたこと。
言葉はなかったけど、私の心は、あのとき許された」
「もう愛されることなんてないと、どこかで決めていたのに。
あなたは私に、“触れられていい存在”なんだって教えてくれた」
「あれから、私は変わった。
誰かの声に耳を傾けて、誰かの笑顔を想って泣けるようになった」
「──だから記すの。
あなたと過ごしたひとときが、私の人生の意味だったと」
沈黙。
誰も言葉を発さなかった。
けれどその石碑は、どんな長編小説よりも、どんな演説よりも――
重く、深く、温かかった。
リリシアは目元をそっと拭い、
老女に深く頭を下げた。
「……記してくださって、ありがとうございます」
「ええ。ありがとうを、ようやく言えた気がしたわ」
*
その夜。
遺跡の中央――大寝台跡の前に、流星は一人で立っていた。
仲間たちは少し離れて、焚かれた香を囲みながら語らっていたが、
彼はただ静かに、香の石に手を当てた。
香が脈を打つ。
そのたびに、誰かの笑顔、涙、震える声が蘇る。
あの施術。
あの指先。
あの「だいじょうぶ」と言ってくれた温度。
それがすべて、この石に──そして、自分の手の中に、今も生きている。
「……また一軒、“残る風俗”ができたな」
その一言に、背後から鋭い声が飛んだ。
「はい、出ましたーーッ! すぐ“ととのった数”で数える男!!」
「おい、そういうとこやぞ! いっつもオチがそれになる!!」
「ちょっとは情緒の余韻ってものをですね!!」
「え、ええっ!? 今の感動、台無し!? マジで!?」
流星が慌てて振り返ると、リリア・アリシア・ミレーユが三人一斉に腕組み&ジト目で睨んでいた。
「……いやいやいや、俺としては最高の称賛だったんだけど!?“残る風俗”って言葉に全肯定の意味を込めてたんだけど!?」
「その“風俗”って単語の使い方、そろそろ怒られますよ!!」
「せめて“癒しの記録文化”とかに言い換えなさいっての!!」
「むしろ“快楽継承遺産”とか新語作ってもいいレベル!!」
「うぅ……でも、でもさ……俺たち、癒したよな……?」
「……ま、認める」
「うん。確かに、あなたが手を差し伸べたから、あの人たちは変われたのよ」
「だからこそ、もっとマシな言い方があるだろーが!!」
「つ、次から気をつけますぅ……」
和やかに、風が吹く。
香炉の火が揺れ、夜の遺跡をやさしく包む。
かつて封じられていた風俗院。
今ではそこに、“触れられた記憶”を綴った無数の詩が刻まれていた。
それらはすべて、誰かが誰かを想った証。
──そして、風は語り継ぐ。
触れたことを、忘れないために。
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