異世界風俗❤『異世界転生したら風俗店こそが癒しの最前線だった件~俺は冒険して稼ぎ、全力で愛され、そして搾られる~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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《砂漠の秘宝と、快楽を記す遺跡へ》 ――触れ合いを石に刻んだ民の、失われた祈りとは?

第173話『流星、夢の中で愛される』

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 ──これは、幸福という名の、深い夢だった。

 目を閉じた瞬間から、すべての感覚がまるで水の中に溶けていくようだった。
 重力も、温度も、時間の流れさえも消え、
 そこにあったのは、ただただ、やわらかく甘い“安心感”だった。

 そして。

「ようこそ、わたしの夢へ」

 ソティアの声が、風のように耳元に届いた。

 *

 《夢層領域:第六深層/接触施術空間》

 流星が目を開けると、そこには“星の見える室内”があった。
 天井がない。
 ベッドが、浮いている。
 空は夜で、灯りは香で、壁は香泡でできていた。

 ソティアが、隣にいた。
 静かに、微笑んでいた。
 そして、何も言わずに流星の手を握った。

「あなたのこと、忘れていたわ」
「でもね──好きだった」

 流星の身体が、ぞくりと震える。

「……どういう意味だ?」

「わたしの施術は、“感情を刻んで、記憶を消す”の。
 だから……施術の最中に、あなたのことが大好きになっても、
 終わる頃には、その気持ちは全部消えている」

「でも、いま……夢の中で、あなたにふれた瞬間──
 その“消えたはずの気持ち”が、また浮かび上がってきたの」

「……わたしはあなたを、忘れて、でも好きだった」

 流星は返す言葉を見つけられなかった。

 彼女の瞳は透き通っていて、まるで“夜空そのもの”だった。

 *

 施術が始まる。

 流星の意識は、香の波に溶けていく。

 ソティアの手が、首筋にふれる。

 指先は冷たく、次の瞬間には熱を帯び、
 まるで感情がそのまま“触覚”に乗って伝わってくるようだった。

(ふれられてる──)

(なのに、もう……思い出せない)

 ソティアが背中に手を滑らせ、胸元に額を預ける。

「名前はいらない。記録も、いらない。
 でも……この心の温度だけは、あなたの奥に刻む」

 流星の身体は、浮遊し始める。
 重力も、境界も消え、
 快楽と幸福感だけが、深層へ深層へと沈み込んでいく。

 言葉がいらない。
 記憶すら、必要がない。
 ただ、ふれられている。

「あなたを、愛してる」

(……だれが?)

(……今、俺の手を握ってるのは……)

(……俺、いまどこに……)

(俺……って、誰だっけ……)

 *

 ──現実。

 香庁モニター室。
 アリシアの顔が蒼白になる。

「……ダメ。これ、深層に沈みすぎてる。
 現実認識値が急速に低下してるわ」

 ミレーユが椅子から立ち上がる。

「流星の脳波、“夢側との同調率98%”。
 このままじゃ、“現実での自己認識”が戻らなくなる」

「……でも、彼は言ってた。
 “彼女の名前を残す”って」

「でもそれって、“戻ってこられたら”の話でしょ!?」

 リリアが叫ぶ。

「今の流星は──“ソティアに愛された存在”として、
 夢の中で“完成しようとしてる”のよ!」

 *

 ──夢の最深部。

 ソティアが、そっと唇を寄せてきた。

「もう、帰らなくていいよ。
 あなたは、ここで愛されたの。
 それで、ぜんぶ終わっていい」

 その一言が、まるで鎮魂歌のようだった。

 でも。

 流星の指が、ふるえた。

 彼は、声にならない声でつぶやいた。

「……ソティア……」

「……え?」

「俺は……帰るよ」

「……っ」

「帰って──“お前がいたこと”を、現実に刻む」

「俺は、お前に愛された夢を、
 “夢のままで終わらせない”」

「だから……ごめん。
 お前を、ちゃんと……名前で呼ばせてくれ」

 ソティアの瞳が、大きく揺れる。

 そして、ぽろりと涙をこぼした。

「……ありがとう」

「そんなふうに……わたしを愛してくれる人が、
 現実にいるなんて、思わなかった」

 その言葉と同時に、夢の世界が崩れ始めた。

 ソティアが、手を差し出す。

「また……来てくれる?」

 流星は頷いた。

「次は“現実”で、会いに行くよ」
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