『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第103話『ハルカ、ついに爆発する』

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「さあ、ハルカ……君の番だ」

 ミキが、まるで死刑執行人のようにニヤリと笑った。

「……いや、違う、まだ、まだじゃないか、私の番は……!」

 ハルカは必死に抗議した。
 だが、周囲から返ってくるのは、無情な声だけだった。

「もう全員終わったぞー!」

「いけー! ハルカいけー!」

「真実を語れぇぇぇぇぇ!!」

 ぐるりと囲まれた体育座りの輪。
 全員の視線が、いま、この瞬間──
 ハルカただ一人に集中していた。

(あああああ……!)

 ハルカの脳内に、
 赤い警告ランプが鳴り響いていた。

【危険!】
【このままでは社会的に死ぬ!】
【羞恥度限界突破まであと3秒!】

 汗がだらだら流れる。

 顔面はもう、
 ゆでダコを通り越して、
 もはや蒸気機関車だった。

(無理……絶対無理……!!)

 机にすがりつくハルカ。

 だが──

 ミキの追い打ちが炸裂した。

「ほらハルカ! みんな言ったんだぞー!?」

「ハルカだけズルは許されませーん!」

「だ、だってぇぇぇ……!!」

「がんばれー!」

「負けるなー!」

「青春だー!!」

 どこかズレた応援コールが教室に響く。

(青春って……!! こんな屈辱的な青春あるかぁぁぁぁ!!)

 ハルカは叫びたかった。

 ──が。

 運命の時は、やってきた。

「わ、わかりましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 がばっ!!
 机から飛び起きるハルカ。

 顔真っ赤。
 耳まで真っ赤。
 頭から湯気。

 そして──

 教室中に響き渡る、魂の絶叫。

「こ、小学五年生までしてましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ──その瞬間。

 教室内が、
 一瞬だけ、静寂に包まれた。

 しん……と、音が消える。

 みんなの目が、丸くなる。

 ミキも、ナナも、ユイも、エミも、
 ケントですら──

 全員が一瞬、固まった。

(……あれ?)

 ハルカは、
 胸をドキドキさせながら、
 静寂の中に立ち尽くしていた。

(もしかして……引かれた……?)

(やばい……やっぱり、言わなきゃよかった……!)

 絶望が、胸いっぱいに広がった、そのとき。

「──ぶっ」

 ミキの口から、
 小さな吹き出し音が漏れた。

「ぷっ……くくっ……」

 隣のナナも、ユイも、エミも──

 堰を切ったように、
 腹を抱えて笑い始めた。

「ぎゃはははははははは!!」

「ハルカ、マジかぁぁぁぁぁぁ!!」

「小五ぉぉぉぉぉ!!」

「さすがに長いってぇぇぇぇ!!」

 全員、爆笑。

 爆笑。
 爆笑。
 爆笑。

 ハルカ、崩れ落ちる。

「ううううううう……」

 膝から崩れ、机に頭を打ち付けた。

 ゴンッ。

(……社会的に……死んだ……)

 ハルカの心の声が、
 冬の夕陽に溶けていった。

 ***

 その後。

「ハルカ、実はレジェンドだった説!」

「伝説のおねしょマスター!!」

「いや、そこまでいくともう、尊敬するわ!」

 からかいの嵐が、容赦なく吹き荒れた。

 ハルカは、顔を真っ赤にしながら、
 机に突っ伏して微動だにしなかった。

(もう、消えたい……)

(このまま風になりたい……)

 ふらふらになりながら、
 ハルカは心の中で念じ続けた。

(続く)

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