『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第111話『試練の初トライ!』

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「では……行ってまいります!」

 トイレの前で、エミリ・セレスタは神妙な顔をして宣言した。

 まるで戦場に向かう兵士のような表情だった。

「エミリ……お前……」

「かっこよすぎるだろ……」

 なぜかナナとユイが感動して泣きそうになっていた。

「エミリ、落ち着いてな!」

「最初は誰でも難しいからな!」

 ミキが妙に熱血コーチ風にエールを送る。

「わかりました!」

 エミリは、胸に手を当て、
 そっと深呼吸をした。

(エミリ、がんばれ!)

 ハルカも心の中で全力応援していた。

 ──いざ、和式トイレチャレンジ。

 ***

「……まずは、位置取りを……」

 エミリは、和式便器を前に立った。

(よし、あの位置、あの距離感──完璧……!)

 本人は本気でそう思っていた。

 だが、
 周りから見たら明らかに後ろ過ぎた。

「エミリ、もうちょい前!」

「前前!」

「トイレ、リングじゃないからな!」

 総ツッコミが飛ぶ。

「あっ、すみません!」

 赤くなりながら、
 エミリは小さく前進した。

(が、がんばれ……がんばれ私……!)

 ぎこちなくスカートを手で押さえながら、
 しゃがもうと──

「──ふわっ!」

 スカートの裾が、ふわりと浮き上がった。

「きゃあっ!」

 エミリ、慌ててスカートを押さえる!

「お、おおっとぉ!!」

「がんばれエミリー!!」

 またしても周囲から声援が飛ぶ。

(やばい……応援が完全に体育祭みたいになってる……)

 ハルカは頭を抱えた。

 ***

「ぐ、ぐぐぐ……」

 次のハプニング。

 エミリ、しゃがみ始めたものの──

 足がプルプルプルプル震え始めた。

「おぉぉぉ……!?」

「耐えろぉぉぉエミリィィィ!!」

 ミキたちが拳を振り上げて応援する。

「が、がんばれぇぇぇぇ!」

 ナナも半泣きで手を合わせて祈る。

(がんばれ……!がんばれエミリ……!)

 ハルカも拳を握りしめた。

 エミリ、必死にバランスを取りながら、
 しゃがみポーズ完成まであと一歩──!

 だが──!

 その瞬間だった。

「──あっ」

 ぐらっ。

 バランスを崩したエミリ。

 そのまま、ドテッ!!

「わぁぁぁぁ!!」

 ハルカたち全員、叫んだ。

 エミリ、尻もちをつき──
 スカートが、ふわっと舞い上がった。

 青春ギリギリライン突破未遂!!

「ぎゃああああああ!!!」

 ハルカ、ナナ、ユイ、ミキ、全員がダッシュで飛び込む!

「隠せぇぇぇぇ!!」

「バリアー!!!」

「青春防衛隊発動ぉぉぉ!!」

 わけのわからない叫びとともに、
 女子たちがエミリを取り囲み、
 必死にスカートを押さえた。

「ご、ごめんなさいいいぃぃぃ……!!」

 涙目で叫ぶエミリ。

「気にするなぁぁぁぁ!! これは青春の通過儀礼だぁぁぁぁ!!」

「そ、そうなのぉぉ!?」

 なぜか謎の一体感が生まれるその場。

 男子たちは、
 遠巻きに手を合わせて南無阿弥陀仏ポーズをとっていた。

(……いや、違う)

(青春って、たぶん、こんなんじゃない)

 ハルカは、思った。

 でも、
 みんなが必死で笑って、
 必死で隠して、
 必死で守ろうとしているのが、

 なんだかすごく、
 愛おしかった。

 ***

「うぅ……みなさん……本当に、ありがとうございます……」

 エミリは、涙目でお辞儀した。

 スカートを整えながら、
 顔を真っ赤にして、それでもにこっと笑った。

(……かわいいなぁ)

 ハルカは、
 改めて思った。

(異文化とか、トイレとか、そんなの関係ないんだな)

(こうやって、一緒にバカやって、笑い合えるのが──)

(本当に、友達なんだ)

 エミリの頬には、
 ちょっと涙の跡が光っていた。

 でも、
 その笑顔は、
 何よりもキラキラしていた。

(続く)
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