『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第112話『負けられない戦いが、ここにある!』

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「……わたくし、もう一度挑戦いたします!!」

 和式トイレ前。
 エミリ・セレスタは涙をぬぐい、
 力強く宣言した。

 その姿は──

 まるで敗北を乗り越えて再起する戦士のようだった。

「エミリ……!」

 ハルカたちは、
 思わず息を呑んだ。

 さっきまで、
 スカートがめくれたり、尻もちついたり、散々な目に遭ったのに。

 それでも、
 立ち上がる彼女の背中は、
 やけに大きく、眩しかった。

「エミリぃぃぃぃ!!」

 ミキが、
 なぜか涙目で叫ぶ。

「お前……最高だよぉぉぉぉ!!」

「な、なんで泣いてんの!?」

 ハルカは思わずツッコんだ。

「だってぇぇぇ……青春じゃん!!」

「何に感動してるのかよくわかんないけど……!」

 わちゃわちゃしている間にも──

 エミリは、
 そっと深呼吸をしていた。

「わたくし、負けません……!」

 ぎゅっと拳を握る。

 その決意に、
 周りもじわじわと感化され始めた。

「よし、応援だ!!」

「みんなで応援するぞー!!」

 なぜかトイレ前にいた他のクラスメイトたちまで巻き込み、
 謎の大応援団が結成された。

「え、ちょ、なんでこんな大事になってんの!?」

 ハルカがあたふたしているうちに──

「がんばれエミリー!!」

「負けるなエミリ姫!!」

 男子たちまで加わり、
 拍手と声援の嵐が巻き起こった。

 もはや校内運動会さながら。

(な、なんだこれ……)

(でも……)

 ハルカは、
 胸がじんわり熱くなるのを感じていた。

(なんか、すっごく、いいな)

 異文化? 和式? そんなの関係ない。

 エミリを応援したい。
 ただそれだけの気持ちで、
 みんなが一つになっている。

 それが、
 すごく眩しかった。

 ***

「──では、まいります!」

 エミリが、
 便器の前に立つ。

 全員、息を呑む。

「まず、位置取り……」

 ミキが小声で指示を出す。

「前傾姿勢を忘れるな!」

 ナナも必死にアドバイス。

「重心は、つま先だ!」

 ユイが叫ぶ。

「が、がんばってぇぇぇ!」

 ハルカも、両手をぎゅっと握って祈った。

 エミリ、
 慎重に、慎重に──

 スカートを両手で押さえ、
 そろり、そろりと膝を曲げる。

 プルプル……。

 脚が震える。

 だが、エミリは──

「ふんぬっ……!!」

 と、気合いを込めた!

 ──ガクン!

 一瞬、バランスが崩れかけたが──

「耐えろぉぉぉぉ!!!」

 みんなの声援を背に受けて──

 踏ん張った!

 踏みとどまった!!

「す、すごい……!」

「エミリ、止まった……!」

 一同、歓声。

(いける……!)

(このまま……!!)

 ハルカも全力で祈る。

 エミリ、
 ついに──

 しゃがみ成功!!!

「できましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 エミリが、顔を輝かせて叫んだ!

「うおおおおおおおおおお!!!」

「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「エミリー!! エミリー!!」

 トイレ前、
 歓喜の渦。

 男子女子入り乱れて、
 ハイタッチの嵐。

 もう、校内は軽くカオスだった。

 でも──

 そんな中で。

 ハルカは、
 そっと微笑んだ。

(よかった……本当によかった)

 エミリの満面の笑顔が、
 夕陽に照らされて、
 とても、とても、綺麗だった。

 ***

 その後。

「みなさん……!」

「本当に……ありがとうございます!」

 エミリは、
 深々とお辞儀をした。

「おねしょ同盟に続く、和式トイレ同盟だな!!」

 ミキがバカなことを叫んで、
 みんなが大笑いした。

(バカだなぁ……でも)

(こういうの、やっぱり好きだな)

 ハルカは、
 心からそう思った。

 和式トイレチャレンジ。

 それはただの文化体験じゃない。

 きっと、
 もっと大事な何かを、
 みんなで共有した時間だった。

(続く)
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