『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第119話『スケスケパンツにロックオン』

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「ハルカさん!」

 エミリ・セレスタが、
 まるで宝物を見つけた子供のような顔で振り向いた。

「──これは、いったい何ですか?」

 そう言って、
 彼女が指差していたのは──

 棚の一角に飾られた、
 透けっ透けの、シースルー素材の下着だった。

(うわあああああああああああ!!)

(ついに来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 ハルカは、
 内心絶叫しながらその場で硬直した。

「お、おい、エミリ……」

「そ、それはな……」

 ミキもナナも、
 口ごもった。

 明らかに説明不能なアイテム。

 ──スケスケパンツ。

 ──ほぼ透明。

 ──もはや「布ですらない」と言われる代物。

「この──透け透け素材は、防御のためではなく──」

 エミリは、
 真剣な顔で尋ねた。

「攻撃用なのですか?」

 しーーーーーーーーーーーん。

 ショッピングモールの空気が、
 またしても凍った。

(攻撃用って何ぃぃぃぃぃぃ!!?)

(どこのRPGだよぉぉぉぉぉ!!)

 ハルカたちは、
 顔面蒸気機関車状態になりながら、口をパクパクさせた。

「こ、攻撃じゃないっ!!」

「たぶん、たぶんだけど……その、魅せるためとか!!」

「そう! 大人のオシャレだよ!!」

 必死に説明を試みるナナ。

「大人……オシャレ……?」

 エミリは、
 まるで新たな宗教に触れた信者のように頷いた。

「日本の成人儀式には、透け素材が必要なのですね……!」

「そんな儀式ねぇよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ハルカが絶叫した。

 ***

「にしてもこれ……」

「隠すって概念どこいったんだろうな……」

 ミキが、スケスケ下着を手に取り、
 しげしげと眺めた。

「いや、もう、布の存在意義ってなんだろうってレベルだよね……」

 ナナも、遠い目で呟いた。

 ハルカは、
 完全に顔を真っ赤にしながら、
 できるだけそれを見ないように目を逸らしていた。

(見たら負け……見たら精神が死ぬ……)

 心の中で自衛を試みるが──

 エミリは、興味津々でしゃがみ込み、
 スケスケパンツを間近で観察していた。

「……素晴らしい……」

「ここまでくると、もはや服飾芸術ですね……!」

(違う!! たぶん違うぅぅぅぅぅぅ!!)

 ハルカは、
 心の中で全力でツッコミを入れた。

 ***

「よし!」

「せっかくだから、ひとつずつ選びましょう!」

 エミリが、にっこり笑って提案した。

「ええええええええ!!!」

 ハルカたち、顔面蒼白。

「ほ、ほらエミリ!」

「こういうのは、見るだけにしとこう!?」

「だって……!」

「選んだところで、着れないから!!」

 必死に説得を試みるハルカだったが──

 エミリは、
 純粋無垢な瞳で返してきた。

「──でも、素敵ですもの!」

「せっかく異国に来たのだから、冒険しなければ!!」

(どこの冒険譚だよぉぉぉぉ!!)

 もはや誰も止められない。

 エミリは、
 堂々とスケスケパンツを手に取り、レジへと向かおうとした。

「だ、だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 ハルカたちは、
 一斉に飛びついた。

「エミリ! それは! 本当に!! 後悔するからぁぁぁぁ!!」

「持って帰ったら絶対大変なことになるからぁぁぁ!!」

「でも、わたくし、挑戦したいのです!」

「挑戦は別のとこでしてぇぇぇぇぇぇ!!」

 必死の説得。

 エミリは、
 すごく残念そうにため息をついた。

「日本文化……奥深いですね……」

「うん、まあ……それは認めるよ……」

 肩で息をしながら、
 ハルカは力なく呟いた。

 ***

 結局。

 スケスケパンツ購入は阻止できた。

 が──

 ハルカたちは、
 羞恥心と疲労感で、完全に燃え尽きていた。

「もうだめだ……」

「精神的に一生分の疲れを味わった気がする……」

「異文化交流、こえぇぇぇ……」

 ミキとナナが、
 床にへたり込んでぐったりしていた。

 その中で、
 エミリだけは元気いっぱいだった。

「みなさん!」

「次は──メンズパンツ売り場ですね!」

「行かねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 全員で全力拒否したのは、言うまでもなかった。

(続く)

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