『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第122話『みんなで恥ずかしい買い物袋』

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「……買いました」

「買っちゃった……」

「俺たち……一体何してんだ……」

 ショッピングモールの出口付近。

 ハルカたちは、
 全員が小さな紙袋を手にして、
 ずらりと並んで立ち尽くしていた。

 その袋の中身は──

 エミリがセレクトした、
 とんでもないチョイスの下着たちだった。

「なんで……なんでこんなことになったのぉぉぉぉ!!」

 ハルカが、顔を真っ赤にして叫ぶ。

「エミリの笑顔に……逆らえなかった……」

 ミキが、頭を抱えて蹲った。

「買わないと……文化を否定することになるって言われたら……」

 ナナも、壁にもたれて力尽きていた。

「文化圧力……こわい……」

 リクとタカシも、
 膝から崩れ落ちていた。

 ケントだけは、
 無言で紙袋を握りしめ、虚空を見つめていた。

(うん……現実逃避中だね……)

 ハルカは、
 心の中でそっと呟いた。

 ***

 事の発端は。

 エミリが、
「皆さまに、日本文化を体験していただきたいのです!」
 と純粋無垢な笑顔で言い放ったことだった。

「この機会を逃したら、きっと後悔します!」

「今この瞬間を、大切に!」

 そんなことをキラキラした目で言われたら──

 断れるわけ、なかった。

 たとえそれが──

 超過激な下着だったとしても。

 たとえそれが──

 男子たちにも強制的に買わされたとしても。

(……いや、絶対間違ってるけど!!)

 ハルカは、涙目で紙袋を見下ろした。

 中に入っているのは、
 透けっ透けの、守備力ゼロなシースルーショーツだった。

(ど、どうすんのこれ……!)

(一生、タンスの奥で封印だよぉぉぉ!!)

 ハルカは、
 叫びたい衝動を必死で押し殺した。

 ***

 そして。

 帰路。

 恥ずかしい買い物袋を手に、
 みんなでゾロゾロと歩く。

 普段なら楽しい帰り道のはずなのに──

 今日は、全員無言だった。

 ものすごい気まずい空気。

 紙袋だけが、
 かさかさと情けない音を立てる。

(誰か……! 誰かこの空気をどうにかしてぇぇぇ!!)

 ハルカは、
 必死で心の中で叫んだ。

 だが。

 誰も口を開かないまま、
 出口ゲートが見えてきた──そのとき。

「──にしても」

 ぽつりと、ケントが呟いた。

「この袋持って、電車乗るのか、俺たち……」

 その一言で、全員が顔面蒼白になった。

「うわあああああああああああ!!!」

 ミキ、絶叫。

「やだやだやだ!! 絶対誰にも見られたくないぃぃぃ!!」

 ナナ、頭を抱えてその場に崩れ落ちる。

「死にたい……」

 リク、目を閉じて念仏を唱え始める。

 タカシは、
 もはや幽霊のように宙をさまよっていた。

(私も死にたい……!!)

 ハルカは、
 全力で走り出したい衝動に駆られた。

 でも、そんな中で。

 エミリだけは、
 まるで遠足帰りの子供のように、
 にこにこと楽しそうだった。

「みなさん!」

「この体験、きっと一生の思い出になりますね!!」

「間違いなくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 全員で、全力ツッコミ。

(忘れたくても、絶対に忘れられないよぉぉぉ!!)

 ハルカは、
 頭を抱えながら、
 それでも笑い出しそうになる自分を止められなかった。

 恥ずかしくて、バカみたいで、
 でも、たまらなく楽しい。

(ほんと、ドタバタな毎日だ……)

(でも──悪くないな)

 ふとそんなことを思いながら、
 真っ赤な顔で、
 ハルカは買い物袋を抱きしめた。

 ***

「──でさぁ」

「次、何買う?」

 ミキが、
 にやにやしながら言った。

「二度と下着屋には行かない!!」

 全員、声を揃えた。

 そして、その声は、
 夕暮れの空へと響き渡った。

(続く)
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