『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第128話『“日本ではダメ”を教えろ作戦』

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「──よし、今日こそ叩き込む!!」

 昼休み。
 人気のない教室の隅に、ハルカたちは集結していた。

 もちろん、
 中心に座らされているのは──

 サバナ・ムトワ、その人である。

「へへっ、なんか楽しそうだね!」

 サバナは、
 キラキラした目で嬉しそうにしていた。

(いや、違うから!!)

(これ、命がけの特訓だからぁぁぁ!!)

 ハルカは、
 ぐっと拳を握りしめた。

 ミキ、ナナ、ユイも、
 真剣そのものの顔つきだ。

「サバナ……聞いて」

「わたしたちは、君を……」

「日本の常識人に育てる!!!」

「ええっ、常識人ってなに!?」

 サバナは、ぽかんと口を開けた。

(……道のりは、遠い)

 ハルカたちは、
 心の中で同時にため息をついた。

 ***

「まず!」

「日本では、トイレは──」

 ハルカが、
 ホワイトボードに大きく書く。

『トイレは建物の中のみ!!!』

 サバナは、
「へぇ~」と感心しながらメモを取った。

(……うん、意外と素直だ)

(これなら、いけるかも……?)

 そう思った矢先。

 サバナが、手を挙げた。

「質問!」

「はい、サバナさん」

「じゃあさ!」

「めっちゃオシャレな外トイレだったら、いいんでしょ?」

「──は?」

 一同、絶句。

「例えば~、」

「噴水とか!」

「イルミネーションで光ってる水場とか!」

「キラキラしてるし、超きれいだし!」

「オシャレだし!」

「そこで、シャーッとしたら、いいんでしょ☆」

 ──しーーーーーん。

 教室に、
 凍りついた空気が満ちた。

「違う!!!!!!!!!!」

 ハルカ、ミキ、ナナ、ユイ、
 四人そろって総ツッコミ。

「どんなにオシャレでもダメ!!」

「噴水もダメ!!」

「光っててもダメ!!」

「水場=トイレじゃないからぁぁぁ!!」

 サバナは、
 びっくりした顔で目を丸くした。

「えぇぇぇぇ!? もったいなくない!?」

「だって水流れてるんだよ!? しかもピカピカ!!」

「もったいなくないぃぃぃぃ!!!」

「違う! 違うの!!」

 ハルカは、
 頭を抱えた。

(どこからこの発想くるんだよぉぉぉ!!)

 ***

「じゃ、じゃあ、次のルール!!」

 ミキが、必死に話題を変えた。

「おしっこは、トイレでする!」

「うんうん、オッケー☆」

 サバナ、ニコニコ。

(いいぞ、いいぞ……)

(素直だし……もしかして、これ、イケる……?)

 ちょっとだけ、
 ハルカたちは希望を持った。

 ──が。

「でもさ!」

 サバナは、屈託ない笑顔で続けた。

「間に合わなかったら、そのへんでもオッケーなんでしょ?」

「違うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 またしても総ツッコミ。

「間に合わなかったら──」

「──我慢するの!!」

「──駆け込むの!!」

「──泣いてでもトイレに行くの!!」

 サバナは、
「えぇ~」とブーブー文句を言った。

「めっちゃ大変じゃん、日本!!」

(大変じゃないから!!!)

(それが普通だから!!!!!)

 ハルカは、
 頭を抱えて地面に突っ伏した。

 ***

「でも、でも……!」

 サバナは、
 一生懸命ノートにルールを書き込みながら言った。

「日本は、水洗トイレあるから!」

「わたし、がんばって使う!」

「うん……それでこそ……!」

 ミキが、
 感極まった顔で頷く。

 ナナも、
 手を握りしめながら目を潤ませた。

(サバナ……)

(私たちは君を信じてる……!)

 そんな、
 青春ドラマ的な空気が漂ったそのとき。

「──でも、」

「学校の裏庭とか、草むらなら……オッケーだよね?」

「ダメだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 総崩れ。

 ハルカたちは、
 机に突っ伏して、
 魂を抜かれた。

(前途多難すぎる……)

(この子、ポンコツ天使だ……!!)

 でも。

 こんなドタバタも、
 悪くないかも──

 ちょっとだけ、
 そんなふうに思ったハルカだった。

(続く)

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