『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第130話『やっと伝わった……かもしれない?』

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 ──夕暮れの商業施設裏手、ベンチの上。

 ハルカたちは、
 ぐったりと座り込んでいた。

「……サバナ……」

 ハルカは、
 もはや慈悲深い仏のような顔で呼びかけた。

「最後に、もう一回だけ、確認するね……?」

「うんっ!」

 サバナ・ムトワは、
 にこにこ顔で頷く。

 その笑顔は眩しかった。

 ──しかし。

(この子の笑顔は信用ならない……!!)

 ハルカたちは、
 本能でそう悟っていた。

 だからこそ、
 ここが本当の──ラストチャンス。

 ***

「まず!」

「日本では、おしっこする場所は──?」

「トイレー!」

 サバナ、元気よく答える。

「そう、トイレ!!」

「建物の中の、ちゃんとしたトイレだけ!!」

「外でキラキラしてる噴水も! 川も! 草むらも!」

「絶対だめ!!」

 ハルカ、ミキ、ナナ、ユイ、
 全員で力強く念押し。

 サバナは、
 ふむふむと真剣な顔でメモを取りながら聞いている。

「オッケー☆」

「トイレは、室内オンリー!」

「オシャレでも野生でも、ダメ!!」

「わかったぁ!」

 満面の笑み。

「がんばるね!」

「野ション、ナシねっ☆」

「…………」

 一瞬、静寂。

 そして──

「──よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ハルカたちは、
 全員でガッツポーズした。

「やっと伝わったぁぁぁぁぁぁ!!」

 涙目で叫ぶナナ。

 ミキは、感動のあまり鼻をすする。

 ユイは、両手を合わせて空に祈った。

(長かった……)

(本当に……長かった……!!)

 ハルカは、
 感極まってベンチに突っ伏した。

 この数日の苦労が、
 走馬灯のように脳裏を駆け抜けた。

 噴水事件。
 校庭事件。
 間違いだらけのノート特訓。

 そのすべてが、
 ようやく、ようやく実ったのだ。

(ありがとう……私たち……)

(よく頑張ったよ……!)

 自分たちを褒めたい気持ちでいっぱいだった。

 ***

「じゃあ、明日からも日本ルールで生活するね!」

 サバナは、
 天真爛漫な笑顔で言った。

「うん!!」

「サバナなら絶対できるよ!!」

 ミキが、涙目で親指を立てる。

 ナナも、
「うんうん」と強く頷く。

 ユイも、
「応援してる」とぽそっと呟いた。

 ハルカは、
 サバナの頭をポンポンと優しく叩いた。

「……うん。がんばろうね」

 サバナは、
 えへへっと笑った。

(──かわいいなぁ)

 そう思った。

 本当に、いい子なんだ。

 ちょっと野生児だけど。
 ちょっとズレてるけど。

 でも、まっすぐで素直で、
 まるで子犬みたいな無垢さで。

(……私たちがちゃんと守ってあげなきゃな)

 ハルカは、
 そんな使命感すら覚えていた。

 ***

 ただ──

 その場にいた全員が、
 心の奥でうっすらと感じていた。

(……でも)

(本当に、わかってるのかな……?)

(また何かやらかす気配、めっちゃするんだけど……)

 ──そんな、不安の種が。

 静かに、
 でも確実に、心の隅に芽吹いていた。

「──まっ、いっか!」

 サバナは、
 キラキラした笑顔で言った。

「どんなときも、自然体で行こうね☆」

(いや、自然体すぎるのが問題なんだよおおおおお!!)

 全員、心の中で総ツッコミ。

 でも──

 また笑いながら。

 またドタバタしながら。

 こうして、
 サバナと一緒に過ごすにぎやかな日々は、
 始まったばかりだった。

(続く)
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