『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【新章・尻尾グッズで大混乱編】

第145話『必死の言い訳&奇跡の回避』

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 ──重たいドアが開き、黒田先生が入ってきたあの瞬間、
 教室の全員の体温が3度は下がった。

(絶っっっ対終わった……!!)

 ハルカは顔面蒼白のまま、震える指先でグッズの袋を机の下に蹴り込む。

(なんで毎回このタイミングで来るの!? 見てた!? 隠しカメラ!?)

 そして──
 意を決して、口を開いた。

「え、えっと、せ、先生ッ!!」

「わ、わたしたち、演劇部なんです!」

「で、で、今日は、演劇の小道具の練習を……その、尻尾の!」

「動きとか! 表現の練習を!! してたんですっ!!!」

 言いながら自分で「無理がある!」と叫びそうになるのを歯を食いしばってこらえる。

(言った──!!)

(もう知らん!!どうにでもなれ!!)

 ──教室内、静寂。

 先生は鋭い目で、順番に全員の顔を見ていく。

 ・頭ボサボサのミキ(さっきまで尻尾刺さってた)
 ・顔真っ赤で額に汗だくだくのサバナ(ズボン脱ぎかけ未遂)
 ・手の中に未開封っぽい袋を握りしめてるレイナ(“もう一本”の尻尾)
 ・棒立ちでフリーズしてるナナとユイ(固まりすぎて逆に怪しい)
 ・そして、死にそうな顔で震えているハルカ

 ──明らかに怪しい。あまりに怪しい。

 だが。

「……演劇か」

 黒田先生は、腕を組みながらぽつりと呟いた。

「最近の演劇は……難しいな」

「えっ」

 ハルカ、変な声が出る。

「ええと、は、はいっ! そうなんです!」

「い、今の演劇って、アニマル要素とか、リアルな動きとかすごく大事で!」

「感情の揺らぎとか! “本能”の表現とかも重視されてて──!」

 後半、何を言ってるのかわからなかった。
 自分でも。

 でも──

 黒田先生は、ふっとため息をついて、

「まぁ、表現の幅が広がるのは、いいことだ」

 と、まさかの納得。

(な、なんで通ったの!?)

(いまの何一つ論理的じゃなかったのに!?)

「で、でも! 校内でそういう……“過激な表現”は控えてくれよ」

「わかったな?」

「は、はいっっっっっ!!!!!」

 全員、超即答。

 黒田先生は最後にもう一度、全員の顔を見渡して、
「……元気があるのはいいことだ」とだけ残して、
 ドアを静かに閉じていった。

 ガチャ。

 ──静寂。

 ……そして、

「……生きたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ハルカ、叫んで床に崩れ落ちた。

「通った!? 今の、通ったよね!?!?!?」

「演劇部設定、通用しちゃったよね!?!?!?」

「しゅごい……」

 ナナが膝を抱えながら目をうるうるさせていた。

「まじで……」

「私、命が縮んだ気がする……」

 ミキは椅子に突っ伏してガクガク震えている。

「ハルカ、よくやった!!」

「女優になれるって!!」

 レイナが、涙ぐみながら拍手している。

「うぅぅ……演劇って、すごいんだなぁ……」

 サバナも、ズボンをしっかり履き直しながら感動していた。

「演劇じゃねぇぇぇぇぇ!!!!」

「ぜんっぜん演劇じゃなかったからね!?!?!?」

 ハルカ、魂のツッコミで絶叫。

「ただ尻尾が飛んで、ズボンが脱げかけてただけだからね!?!?!?」

 でももう──

 何もかもどうでもよくなっていた。

 とりあえず今、
 自分たちは補導されていない。

 それだけでいい。

 それだけで……今は、いい。

「……このクラス、ほんとにヤバい」

 ユイが、ボソリと呟いた。

「次はどんなグッズが来るのか、今から怖い」

「だいじょぶだよ♡」

「アタシ、まだ未開封の“ウサミミぷるるんチェーン”っての持ってるから!」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 ハルカ、机をバンバン叩きながら全力絶叫。

 こうしてまた──
 青春は一歩、終わりの見えない“地獄の宴”へと転がっていくのだった。

(続く)
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