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『癒しとは──膀胱との闘いの果てにあるもの』
第167話『SA(サービスエリア)争奪戦』
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「見えたぁぁぁぁぁ!!」
ミキの絶叫が響いた。
窓の向こう、ようやく姿を現した「●●サービスエリア」の看板と建物。
それはオアシス、いや、“命の砦”といっても過言ではなかった。
「やっと着いた……っ!」
「神様、ありがとう……!」
「水を捨てに行くんだ……自分の中の……!」
車内のテンションは、異様なほどに高まっていた。
というより、限界を越えた興奮と切迫感がブレンドされた、**“尿意ハイ”**状態だった。
だが──現実は、非情だった。
「うそ……駐車場、満車……?」
ナナが呆然とつぶやく。
バスは、サービスエリア入口でストップ。
敷地内には観光バスと乗用車がぎっしりと詰まり、動く気配すらない。
「この期に及んで……!?」
「なんで今日に限って!? なんで渋滞が連続なの!?」
運転手が言った。
「ちょっと待っててね、今誘導の人と確認するから」
「無理です! 尿意に“ちょっと”はありません!!」
「“待って”は一番言っちゃいけない単語です!!」
後部座席のレイナがすでに窓のロックを解除しようとしている。
「開けるなぁぁぁぁ!! 飛び出すなぁぁぁ!!」
車内がカオスになる中、ようやくバスがゆっくりと駐車場の隅に滑り込む。
──その瞬間。
「いけええええええ!!!!」
誰ともなく叫び、女子たちが一斉に立ち上がった。
「トイレぇぇぇ!!!」
「死にたくないぃぃぃぃ!!」
「おしっこが命より重い日がある!!!」
まさに“非常脱出”。
乗降ドアが開くや否や、社会人女子たちが前のめりに突進していく。
バスの横をすり抜けるスーツ女子軍団。
彼女たちは、今──戦士だった。
「道をあけろぉぉぉぉ!!」
「社会人の意地見せてやるぅぅ!!」
仁義なき女子トイレ争奪戦が、開幕した。
トイレ棟の前には、すでに数名の女性客が列を成していた。
「うそでしょ!?ここでも待ち!?」
「列短く見えるけど……中が空いてないパターンだコレ!!」
「あたし先!!死にそうなの!!」
「こっちだって切実なんだよぉぉ!!」
激しく口論になる……わけではなく、
全員、ギリギリすぎて逆に無言。
表情が引きつり、涙目で、足をクロスしながら待機する。
「これは戦いだ……誰とも目を合わせるな……!」
列の最前に立つのは──ハルカ。
だが、そのすぐ後ろにいたレイナがつぶやいた。
「ハルカ……ずるい……アタシだって一番になりたかった……」
「黙れ!!早い者勝ちだ!!」
「青春を一緒に戦った仲じゃん……!」
「友情より膀胱が先なんだよ!!!!!」
そのとき、扉が一つ──カチャ、と開く。
「誰よりも早く!!!」
ハルカが一歩踏み出しかけた、その瞬間──
「わたし……もう、ダメかも……」
その声に、全員が動きを止めた。
列の一番後ろ、膝を抱えてしゃがみ込む女性が一人。
エミリだった。
完璧主義で、理論的で、いつも冷静なエミリが──
今、肩を震わせて、静かに涙をこぼしていた。
「こんな……はずじゃなかったのに……」
「体の限界って……こういうの……?」
その姿に、列の誰もが言葉を失う。
ミキが、小さく口を開いた。
「……譲ろうよ、先に」
ナナも頷く。
「うん……あたしも、ちょっと限界だけど……エミリが一番やばい」
レイナもサバナも、ゆっくりと一歩後退する。
「おまえら……!」
ハルカが振り向き、全員の顔を見回す。
全員が泣きそうな顔だった。
それでも誰もが、譲ると決めていた。
ハルカは一度だけ、目を閉じた。
「行け、エミリ……おまえが、先陣だ」
「え……でも、わたし……」
「漏れてからじゃ、遅いからな!」
エミリは立ち上がる。
ふらふらしながら、トイレの扉へと歩いていく。
(私たちは、大人になった……)
(でも、こういうときこそ──)
「友情ってやつ、見せてやろうぜ」
扉が閉まる音が、静かに響いた。
残された彼女たちの膀胱は、まだギリギリだった。
でも、心はちょっと温かくなった。
――この物語は、尿意と共にある。
(つづく)
ミキの絶叫が響いた。
窓の向こう、ようやく姿を現した「●●サービスエリア」の看板と建物。
それはオアシス、いや、“命の砦”といっても過言ではなかった。
「やっと着いた……っ!」
「神様、ありがとう……!」
「水を捨てに行くんだ……自分の中の……!」
車内のテンションは、異様なほどに高まっていた。
というより、限界を越えた興奮と切迫感がブレンドされた、**“尿意ハイ”**状態だった。
だが──現実は、非情だった。
「うそ……駐車場、満車……?」
ナナが呆然とつぶやく。
バスは、サービスエリア入口でストップ。
敷地内には観光バスと乗用車がぎっしりと詰まり、動く気配すらない。
「この期に及んで……!?」
「なんで今日に限って!? なんで渋滞が連続なの!?」
運転手が言った。
「ちょっと待っててね、今誘導の人と確認するから」
「無理です! 尿意に“ちょっと”はありません!!」
「“待って”は一番言っちゃいけない単語です!!」
後部座席のレイナがすでに窓のロックを解除しようとしている。
「開けるなぁぁぁぁ!! 飛び出すなぁぁぁ!!」
車内がカオスになる中、ようやくバスがゆっくりと駐車場の隅に滑り込む。
──その瞬間。
「いけええええええ!!!!」
誰ともなく叫び、女子たちが一斉に立ち上がった。
「トイレぇぇぇ!!!」
「死にたくないぃぃぃぃ!!」
「おしっこが命より重い日がある!!!」
まさに“非常脱出”。
乗降ドアが開くや否や、社会人女子たちが前のめりに突進していく。
バスの横をすり抜けるスーツ女子軍団。
彼女たちは、今──戦士だった。
「道をあけろぉぉぉぉ!!」
「社会人の意地見せてやるぅぅ!!」
仁義なき女子トイレ争奪戦が、開幕した。
トイレ棟の前には、すでに数名の女性客が列を成していた。
「うそでしょ!?ここでも待ち!?」
「列短く見えるけど……中が空いてないパターンだコレ!!」
「あたし先!!死にそうなの!!」
「こっちだって切実なんだよぉぉ!!」
激しく口論になる……わけではなく、
全員、ギリギリすぎて逆に無言。
表情が引きつり、涙目で、足をクロスしながら待機する。
「これは戦いだ……誰とも目を合わせるな……!」
列の最前に立つのは──ハルカ。
だが、そのすぐ後ろにいたレイナがつぶやいた。
「ハルカ……ずるい……アタシだって一番になりたかった……」
「黙れ!!早い者勝ちだ!!」
「青春を一緒に戦った仲じゃん……!」
「友情より膀胱が先なんだよ!!!!!」
そのとき、扉が一つ──カチャ、と開く。
「誰よりも早く!!!」
ハルカが一歩踏み出しかけた、その瞬間──
「わたし……もう、ダメかも……」
その声に、全員が動きを止めた。
列の一番後ろ、膝を抱えてしゃがみ込む女性が一人。
エミリだった。
完璧主義で、理論的で、いつも冷静なエミリが──
今、肩を震わせて、静かに涙をこぼしていた。
「こんな……はずじゃなかったのに……」
「体の限界って……こういうの……?」
その姿に、列の誰もが言葉を失う。
ミキが、小さく口を開いた。
「……譲ろうよ、先に」
ナナも頷く。
「うん……あたしも、ちょっと限界だけど……エミリが一番やばい」
レイナもサバナも、ゆっくりと一歩後退する。
「おまえら……!」
ハルカが振り向き、全員の顔を見回す。
全員が泣きそうな顔だった。
それでも誰もが、譲ると決めていた。
ハルカは一度だけ、目を閉じた。
「行け、エミリ……おまえが、先陣だ」
「え……でも、わたし……」
「漏れてからじゃ、遅いからな!」
エミリは立ち上がる。
ふらふらしながら、トイレの扉へと歩いていく。
(私たちは、大人になった……)
(でも、こういうときこそ──)
「友情ってやつ、見せてやろうぜ」
扉が閉まる音が、静かに響いた。
残された彼女たちの膀胱は、まだギリギリだった。
でも、心はちょっと温かくなった。
――この物語は、尿意と共にある。
(つづく)
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