『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『癒しとは──膀胱との闘いの果てにあるもの』

第166話『ついに車内で暴発寸前!?』

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「……アタシ、もうダメかもぉぉぉ……ッ!!!」

ミキの絶叫が、バスの車内に響き渡った。

その瞬間、空気が“破裂”した。

「ミキィィィ!!頑張れ!耐えろ!」

「今崩れたら、連鎖する!!」

「尿意は、連帯責任だぞッ!!」

「それは違うと思うけど、でも合ってる気がする!!」

誰かが叫び、誰かが祈るように手を組み、そして全員の足が交差した。

空調の微かな風が吹くだけで、膀胱がうずく。
重い空気に包まれた車内には、もう“音”すら不要だった。

「あと……あと何キロ……?」

ハルカがつぶやく。

運転席近くでスマホを操作していたエミリが即答する。

「現在地点から、最寄りのトイレ付き休憩所まで……約10km」

「10……」

「キロ……?」

「10kmって、なに……?数字に絶望って込められるの……?」

「しかも、進んでないからな……車列が……」

ナナが青ざめながら、小刻みに身体を揺らす。

「これ……マジで……だれか……」

ミキがふらふらと立ち上がりかける。

「わたし……今なら飛べそうな気がする……窓から……草むらへ……」

「ダメだぁぁあぁぁあ!!!」

ハルカとナナが同時に飛びついて座らせる。

だが、次の瞬間。

「皆さん──物理的対応法を提案しても、よろしいでしょうか」

静かに手を上げたのは、エミリだった。

「……?」

全員が固まる中、エミリは平然とバッグを漁り、

「はい」

──取り出したのは、紙コップ。

「これを、こうして……保持角度は45度、構えを固定し……排出可能領域を広げつつ……」

「やめてぇぇぇぇぇ!!!!」

車内が、爆笑と絶叫に包まれた。

「ちょっと!!女子の限界に、科学で挑まないで!!!」

「そういうのが許されるのはキャンピングカーか宇宙船だけなの!!」

「うふふ、でもエミリ、いろんなサイズ持ってる……!」

「うふふじゃねぇぇぇ!!」

しかもコップのサイズがS・M・L・XLとそろっていたのが、さらなる恐怖を生む。

「お前、準備良すぎだろ……!」

「用途が想像できすぎてヤバい!!」

一同、顔面蒼白のまま爆笑し、笑った振動がまた膀胱を刺激する。

──限界。

「だめだ、やばい、気を紛らわせなきゃ……!」

ナナが震える手で言った。

「なにか……話題を……!思い出話とか……!」

「そうそう、あの頃みたいに、楽しい話を……!」

「……」

「……」

沈黙。誰かが口を開く。

「じゃあさ……“昔のおもらし話”とか……」

「「「逆効果だよぉぉぉぉ!!!!」」」

盛大なツッコミが車内に轟いた。

「バカ!なぜ地雷を踏みに行くの!?」

「おもらし話はトリガーだってわかってるでしょ!!!」

「いやでもほら、アレだよ……“共感は痛みを和らげる”って言うじゃん……」

「痛みじゃない!水圧だよ今!!」

だがその流れに、ミキがつぶやく。

「……小学3年までは……週一でやらかしてたなぁ……」

「え?」

「ちょっと……懐かしい……トイレに向かう途中で力尽きる、あの……絶望感……」

「やめろ、フラッシュバックする……!」

レイナまでもが口を開く。

「アタシ……トイレ間に合わなくてさ、ズボンにじゅわぁって……親に怒られたっけ……」

「アカン……あの“温かさの記憶”が……!」

「誰か!!別の話題をぉぉぉぉ!!」

しかし、もう誰も止められなかった。

「わたしもある! 体育館裏で……」

「遠足のときに……」

「授業中に……!」

あろうことか、“おもらしカミングアウト大会”が再開されてしまったのだ。

青春の記憶は、美しく、そして膀胱を刺激する。

ハルカは叫ぶ。

「お願い、だれか水道の音を止めてぇぇぇぇ!!!」

……が、ナナがまたイヤホンをつけていた。
再び、波の音。

「ざざーん……」

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

窓の外に、ようやく「SA 5km先」の標識が見えた──
が、バスは進まない。

トイレは……遠い。

けれど、笑いとドタバタだけはすぐそこにある。

物語は、限界ギリギリのまま、なお続く。

(つづく)
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