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『温泉トラブルと、心のおしっこ我慢合宿!?』
第178話『大人になっても、あの頃のまま』
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「帰るまでが温泉旅行です!」
添乗員さながらにミキが叫んだその瞬間──
全員の顔に、ほんのりと緊張が走った。
旅館の玄関前、バスのエンジンが静かに唸っている。
乗り込む女子たちは、一様に言葉を交わすことなく──
無言でトイレの方向へ歩き出していた。
「……わかってる。今のうちに、だよね……」
「この一滴が、旅の明暗を分ける……!」
「バスの中で“あのとき行っておけば”ってなるの、二度と繰り返さない!!」
旅館のトイレは朝から大盛況。
女子用は列ができ、男子用はというとケントら男子組が「お、トイレ空いてる」とスイスイ通過していた。
「あああああ!! 男女差社会~~~!!」
ミキが叫ぶその横で、ナナがそっと耳打ちしてくる。
「ねぇ……わたしたち、学生時代よりトイレトークに真剣になってない?」
「もうそれが“大人の成長”なんだよ……!」
ハルカは苦笑しながら、先に済ませて戻ってきた。
スッキリした膀胱を抱えながら、あたたかい日差しを受けて座席へと戻る。
バスの中は、ほんのり湯気が残るような空気だった。
誰もが、どこか名残惜しそうに景色を見つめ、窓にうつる自分の顔と目が合う。
「ねえ、あっという間だったね」
「一泊二日でここまで濃くなる?」
「布団も濡れたしね」
「最後まで言うなぁぁぁぁ!!」
笑いが車内を転がる。
それでも、確かにわかっていた。
この旅が、ただの観光じゃなかったことを。
恋バナもした。
秘密も言った。
放尿音に爆笑した。
そして──
「あの頃と、変わってないんだよね」
ぽつりとつぶやいたのはサバナだった。
ハルカは窓の外を見つめながら、心の中で答えていた。
(うん。変わったこともあるけど、変わらないこともある)
(わたしはたぶん、ケントのこと、今でも──)
……その続きは、声にしないまま、
風の音とバスの振動にまぎれていった。
◆ ◆ ◆
サービスエリアで休憩を取り、再び走り出した帰り道。
「さあて、次の旅行の計画立てますか!」
ミキがテンション高く言い出した。
「花見でもいいし、テーマパークでもいいし、登山とか──」
そのときだった。
レイナが、おやつを頬張りながら、ひょいっと顔を上げる。
「じゃあ、次は海外温泉にしよーぜ☆」
沈黙。
一瞬、車内の空気がピシリと凍りついた。
そして──
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
全員が立ち上がって絶叫。
ドライバーが「うおっ!?」とハンドルを軽く揺らすほどの一斉反応だった。
「海外とか、絶対またトイレ文化違うやつじゃん!!」
「水流れないとか、穴しかないとか、紙が無いとかの地獄モードでしょ!!?」
「もう私たちの膀胱には、限界超えても耐えられる体力ないから!!」
「レイナが好きなの、温泉じゃなくて“漏れそうな状況”でしょ!?ねえ!!?」
レイナはきょとんとした顔で、
「え、バレてた?」と笑った。
一同、再び崩れ落ちる。
◆ ◆ ◆
バスの車内、落ち着きを取り戻したあと。
ハルカは、ぽつりと心の中で呟いた。
(こうしてまた、いつか思い出すんだろうな)
(温泉のことも、布団のことも、夜の告白も──あの“シャー音”も)
(でも、たぶんそれを笑って言えるうちは、まだ青春してるってことなんだ)
(たぶん、これが──)
「……これが“大人の青春”ってやつなんだね」
隣でつぶやいたミキと、ハルカの目が合う。
ふっと、ふたりで笑った。
バスの揺れが、心地よかった。
それが、旅の終わりであり、次の物語の始まりだった。
添乗員さながらにミキが叫んだその瞬間──
全員の顔に、ほんのりと緊張が走った。
旅館の玄関前、バスのエンジンが静かに唸っている。
乗り込む女子たちは、一様に言葉を交わすことなく──
無言でトイレの方向へ歩き出していた。
「……わかってる。今のうちに、だよね……」
「この一滴が、旅の明暗を分ける……!」
「バスの中で“あのとき行っておけば”ってなるの、二度と繰り返さない!!」
旅館のトイレは朝から大盛況。
女子用は列ができ、男子用はというとケントら男子組が「お、トイレ空いてる」とスイスイ通過していた。
「あああああ!! 男女差社会~~~!!」
ミキが叫ぶその横で、ナナがそっと耳打ちしてくる。
「ねぇ……わたしたち、学生時代よりトイレトークに真剣になってない?」
「もうそれが“大人の成長”なんだよ……!」
ハルカは苦笑しながら、先に済ませて戻ってきた。
スッキリした膀胱を抱えながら、あたたかい日差しを受けて座席へと戻る。
バスの中は、ほんのり湯気が残るような空気だった。
誰もが、どこか名残惜しそうに景色を見つめ、窓にうつる自分の顔と目が合う。
「ねえ、あっという間だったね」
「一泊二日でここまで濃くなる?」
「布団も濡れたしね」
「最後まで言うなぁぁぁぁ!!」
笑いが車内を転がる。
それでも、確かにわかっていた。
この旅が、ただの観光じゃなかったことを。
恋バナもした。
秘密も言った。
放尿音に爆笑した。
そして──
「あの頃と、変わってないんだよね」
ぽつりとつぶやいたのはサバナだった。
ハルカは窓の外を見つめながら、心の中で答えていた。
(うん。変わったこともあるけど、変わらないこともある)
(わたしはたぶん、ケントのこと、今でも──)
……その続きは、声にしないまま、
風の音とバスの振動にまぎれていった。
◆ ◆ ◆
サービスエリアで休憩を取り、再び走り出した帰り道。
「さあて、次の旅行の計画立てますか!」
ミキがテンション高く言い出した。
「花見でもいいし、テーマパークでもいいし、登山とか──」
そのときだった。
レイナが、おやつを頬張りながら、ひょいっと顔を上げる。
「じゃあ、次は海外温泉にしよーぜ☆」
沈黙。
一瞬、車内の空気がピシリと凍りついた。
そして──
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
全員が立ち上がって絶叫。
ドライバーが「うおっ!?」とハンドルを軽く揺らすほどの一斉反応だった。
「海外とか、絶対またトイレ文化違うやつじゃん!!」
「水流れないとか、穴しかないとか、紙が無いとかの地獄モードでしょ!!?」
「もう私たちの膀胱には、限界超えても耐えられる体力ないから!!」
「レイナが好きなの、温泉じゃなくて“漏れそうな状況”でしょ!?ねえ!!?」
レイナはきょとんとした顔で、
「え、バレてた?」と笑った。
一同、再び崩れ落ちる。
◆ ◆ ◆
バスの車内、落ち着きを取り戻したあと。
ハルカは、ぽつりと心の中で呟いた。
(こうしてまた、いつか思い出すんだろうな)
(温泉のことも、布団のことも、夜の告白も──あの“シャー音”も)
(でも、たぶんそれを笑って言えるうちは、まだ青春してるってことなんだ)
(たぶん、これが──)
「……これが“大人の青春”ってやつなんだね」
隣でつぶやいたミキと、ハルカの目が合う。
ふっと、ふたりで笑った。
バスの揺れが、心地よかった。
それが、旅の終わりであり、次の物語の始まりだった。
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